訪問5ヵ国目
会談も行い、晩餐会も楽しませてもらい、王宮で宿泊させてもらった。
翌日にケルゲインに向けて出発した。
フラーレスからは、ユートレス、ケルゲインに入ってからは、ダンバーンを経由してから王都スーカイに向かう経路だ。
フラーレスからユートレスと、ダンバーンまでの距離は、ほぼ同じくらいなのだが、そこからスーカイまでがその倍と少し離れているのだ。
しかも、途中水場がないらしいのだが、まあ、俺達の場合には、魔法で水を準備すれば足りるので、そうそう問題ではないのだが。
ケルゲインは、川が少なく、湖もないのだ。
それでも、デーメーテールから続く山脈がケルゲインまで延びているので、水脈はあるらしく井戸で汲み上げる必要があるのだとか。
ケルゲインは、以前は水の関係で、南側にあるテルスヘリングと戦争していたそうだ。
ケルゲインとフレヴォラントとスネアーズは内陸の国で、フレヴォラントはアイセルモンデと、ケルゲインはテルスヘリングと、スネアーズはアンティボデスと戦争をしていたらしいのだ、まあ、かれこれ30年以上昔の話らしいのだが、その関係で、スネアーズとフレヴォラントとケルゲインには、国境に壁があるそうだ。
まあ、これは内陸の国が海のある国へ攻め込んでいたってことらしいのだが。
なので、ケルゲインとテルスヘリングについては、いまだに仲が悪いらしく、国境付近では小競り合いが続いているとのことだ。
ケルゲインとテルスヘリングが唯一国境に門があるのが、ケルゲインがドイドという町で、テルスヘリングがラールルという町ということだ。
ただ、この門にはどちらの国も門番はおいていないらしい、これは、以前はいたのだが、それぞれの門番が争いになり、結局殺し合いにまで発展したためということだ。
そこですぐそばに町が出来て、そこにそれぞれの兵隊が常駐しているという話だ。
ケルゲインの南側のことの説明はこのくらいにして、今俺達が走っている街道沿いに、幾つか農地が見えるのだが、水が少ないらしく、農民が井戸から汲み上げ、手で水撒きしているのが現状のようだ。
昔からの戦争から、今まで続いている小競り合いの影響なのだろうか、働いている農民の殆どが、老人から女性か子供位なのだ。
「ご主人様、この辺は若い男の人はいないのでしょうか?」
レイが心配そうに聞いてきた。
レイは、元々農民出身だった為、今周りで見えている状況は何か考えさせられるものがあるのだろう。
「そうだな、たぶん徴兵されて、働き手になる男がいないのだろう。戦争自体は終息しているのに、小競り合いが続いているせいだろうな。」
今のケルゲインでは、若い男がいないこともあり、山賊や盗賊は少ないようだ。
それでも、全くいないわけではないとは思われるが、近くに現れることはなかった。
レイ達は、進んでいく途中、見えて魔法が届く範囲だけだが、畑に水の魔法で水やりしたり、今何も植えられていない畑に土魔法で土改良をしたりしていた。
みんな、一時的なことであるのはわかっているのだが、気持ち程度でも、何かしてあげたいという気持ちを押さえることが出来なかったのだろう。
それから20日ぐらいでスーカイへと到着した。
やはり、王都でさえ住民の表情が明るくない。
商店らしき建物も、扉が閉まっているものも少なくない。
今通っている大通りさえ人通りがちらほらって感じなのだが、このまま行けば、この国の未来は明るくない。
城に到達したのだが、門番がいないのだ。
とりあえず、門を叩いてみた。
((ドン、ドン、ドン))
俺達が訪問することは、以前から伝えていたのだが、
((ドン、ドン、ドン))
王宮に誰もいないって有り得なくないか?っと思いながら、そのまま待っていると。
((ギィ~ィ))
やっと門が開いたのだが、そこから顔を出したのは1人の老けた執事だった。
「申し訳ありません、お待たせいたしました。デーメーテールの国王リュウ様で宜しかったでしょうか?」
「ええ、間違いありません。リュウです。よろしくお願いします。」
「では、こちらにお越し下さい。」
俺達は、この執事に案内され謁見の間に通された。
「遠いところようこそおいでくださいました。私がこの国の王のネモです。すいませんな、おもてなししようにも、この国の財政は火の車であって、何もできない状態ですので。」
「いえ、そんな状況とは知らずそんな時期に訪問させていただき、こちらこそ申し訳ないです。しかし、1つ聞いていいでしょうか?」
「リュウ殿、なんでしょうか?」
「今のこの国の状況、小競り合いがやはり原因ですか?」
「まあ、そう聞いています。」
「聞いています?」
「ああ、我が国は今は宰相が取り仕切っていまして、私は必要なときに印だけ、押しているだけなのですから。」
「そうなんですか、わかりました。今日は挨拶に来ただけですから、また来ますよ。ちなみに、町の建物を1つ購入していってもいいでしょうか?」
「購入ですか?まあ、それはけっこうですが。遠いところ来ていただいたのに、何もおもてなし出来なくて申し訳なく、また機会があればお越し下さい。」
「ええ、またきます。」
俺達は、城を後にして、町のギルドに向かった。
ギルドで、大通りの1番城に近い空いている建物を購入した。
価格は、金貨5000枚かかった。
殆どの店が開いていないにも関わらず、建物の金額が上がっていることに違和感を覚えたのだけれども、中に転移の魔方陣を設置し、建物には、魔法で防犯対策を行い、スーカイを旅立った。
帰りは、ケルゲインのカーラス、スネアーズのビョートルを経由して、一旦クローゼの建物へと向かったのだ。