訪問3ヵ国目
デーメーテールに戻った俺達は、やはりデニスが状況を認識出来ず呆然としていた。
「デニス、いい加減になれてくれよ。さっきから使ってる魔道具は、転移の魔方陣だ。設置式の。で、今いるのが、デーメーテールの王都だ。」
「は、はい、え?いや、でも、さっきコモンズ、いや、ボンボンにいたのに。国境、え?」
しばらくは、転移に慣れないかもしれないなと思いながらも、城の中をデニスに案内し、翌日にアイセルモンデへ向け出発するために準備行った。
翌日、スモールモニコーフ達城の使用人一同に見送られ、アイセルモンデに出発した。
元々ファン・デ・ノヴァとアイセルモンデは、国境に壁を設けていたわけではないので、国境の町はあるものの、人の行き来は従来より自由だった。
今回は、コマンドル、その国境の町のワールト、アイセルモンデの港町のセーシエルを経由してアイセルモンデの王都ソタヴェントに向かう経路だ。
通常の馬車であれば、片道1ヶ月は少なくともかかってしまう距離なのだが、俺の馬車はそんな時間はかからない、大体2週間もかからずに到着出来るのだ。
それで、初めて俺の馬車にデニスが乗ったときには、あまりの速さに驚くかと思いきや、スピードに喜んでいた。
車に乗せたらどんな顔するかなと、少し考えると吹き出してしまった。
みんなは何事かと俺の顔を見ていたが、まあそこはスルーしておいた。
ワールトとコマンドル共に、まだ新しい領主は決まっていないのだが、現在はフンドにいた俺の眷族化を受けている人を、ビューティーに言って派遣してもらっている。
まあ、誰が派遣されているかは聞いていないのだけれども。
ワールトもコマンドルも、直接立ち寄りはせずに、セーシエルを目指した。
今、デーメーテールには山賊も盗賊もいないのだ、基本潰して回ったのだけど、根っからの山賊、盗賊じゃない人は俺が国王になったことを知って、出頭してきたのだ。
そうではない人は、他国に逃げ出したようだ。
え?出頭してきた人はどうしたか?
それは、一応犯罪奴隷にはなってはいるが、そういう人に限って、盗みはしたが他人を傷つけたことはない人達だったので、一定期間の労働で解放されるようにしておいたのだ、希望すれば仕事の斡旋を王都で受けることが出来るようにも配慮しておいた。
で、国境を越えたとたんに山賊が現れたのだ。
「いやっほ~、ずいぶん立派な馬車だ。野郎共今夜は遊べるぞ~。」
「や~は~」
「今日は女も買えるか?」
数十人規模の山賊みたいだ、もしかするとデーメーテールから逃げ出した山賊達が集まって出来た集団かもしれないが。
「リュウ様、ど、どうしましょう?」
デニスが、慌てて聞いてきたが、周りにいるみんなは落ち着いてはいないが、楽しそうである。
「まあ、見ていたらわかるぞ、今日は誰にしようかな?」
と、みんなを見回していると、キャサリンはどうしても希望したいらしいのだが、大きく手を上げると俺が避けると思っているのか、小さく手を上げていた。
「わかったよ、じゃあキャサリンとレイで殲滅してくれ」
「「はい」」
2人は、すぐにマシンガンを準備して、周りにいる山賊を射殺し始めた。
((ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ))
「グワ」
「うっ」
((ドサッドサッ))
そこには、何体も重なりあうように絶命した山賊の死体が街道沿いに並んでいった。
ある程度倒したのだが、後ろの方にいた山賊達は目の前の状況を見て、やはり恐ろしくなったのだろう、逃げていった。
ただ不振なことを言って。
「親分が言った通り、手を出したらいけないやつだった、何でこんなになることをわかったんだ~」
「に、逃げないと、でも、手を出したら帰って来るなって、どうすれば~」
今回の山賊は、したっぱが単独先行した結果らしいが、山賊のボスは俺達がここを通って、それを襲ったら返り討ちに会うことはわかってたということか?
もしかすると山賊のボスは、予知の力をもっているか、俺のことを知っていて、偵察にかなりの力をいれているかのどちらかと思われる。
しかも、通常山賊に出会したら壊滅させるために、逃げていった山賊を追いかけてアジトも殲滅するのだが、部下に戻ることも許さないとか、俺のことを調べているとしか思えない。
今回については、追撃はあきらめた。
俺達はセーシエルの町に到着し、一応領主に挨拶して、宿に1泊して、すぐにソタヴェントの向かった。
ソタヴェントに到着すると、どういうわけかすでにセーシエルの領主から連絡が届いており、門番がすぐに案内してきた。
「デーメーテールのリュウ国王様ですね、ソタヴェントへようこそおいでくださいました。すぐに城へご案内させていただきます。騎馬兵が先導いたしますので、続いてお進みください。」
騎馬兵に先導されて城に案内された。
城にて謁見の間に案内されて、そこには左目に大きな傷があるがっしりとした体つきで、王様らしい服装をした男の人が、たっていた。
見た目だけでいえば、孫にも衣装というか、服に着られているというか、顔と服が一致しない。
俺がそのまま真っ直ぐに歩いていくと、
「よくきてくれた、嬉しいぜ。おう、俺様が国王のレシフだ。でこっちが俺様の嫁さんのマリアンヌだ。」
レシフさんの横に立っている綺麗な女性、しかもエルフだ。
「ようこそおいでくださいました。王妃のマリアンヌと申します。一応お聞きされてるとは思いますが、国王は冒険者出身ですし、私も冒険者をしておりました。元々姫ではありましたが、城でじっとしているのがいやだったので、一時期城から抜け出て冒険者しておりましたの。そのときにこの人を捕まえまして、今に至るというわけです。」
俺が聞きたかったことを先に話してしまわれたマリアンヌさんが、自分で説明したくせに、レシフさんをチラチラ見ながら、顔を赤くしていた。
「ま、立ち話もなんだ、今日も持ってきてくれたんだろ、早速呑もうじゃねえか。」
すぐに飲むつもりだったことが、わかるように食堂に案内された。そこにはすでに食事が準備してあった。
「まあ、準備してますけどね。」
と、城の入り口でかなりの量のお酒をすでに渡しておいたので、次々に運び込まれていった。
その日は、そのまま酒盛りで過ぎていくのだった。