訪問2ヵ国目
「リュウ様~、これからよろしくお願いします。」
それはそれは満面の笑みで、俺の手を握ってきたデニス。
「ああ、こちらこそよろしくお願いします。デニス様」
「リュウ様、このデニスに様は要りません。呼び捨てでお願いします。」
デニスが真剣な目で言ってきた。
「いや、そういうわけにはいかないでしょう。」
「いえ、自分自身呼び捨てにしてほしいのです。今まで市中では、馬鹿王子と呼ばれてきたこともわかっています。無理を通しても父上の権力があって、何でも通ってきたからです。しかし、リュウ様は違いました。はっきりとこのまま我が儘が通らないことをわからせてくれました。」
まあ、あのレストランでの出来事は、折角入ったばかりの店で、あんな騒ぎを起こされたから、怒ってやったことだったのだが。
「権力があろうと、なかろうと気心が知れた人以外に我が儘をして言い訳がないからな、あれは、我が儘じゃなく横暴っていうんだ。特に将来上にたたないといけないのだから、国民が何が必要なのか考えていかないとな、デニス」
「はい」
元気に嬉しそうに返事した。
俺達は、すぐに王都フェリシテを出発した。
そのままコモンズの屋敷を目指した。
コモンズの屋敷では、デニスが妖弧族を見てビックリしていたが、俺とチリンとの会話を聞いて、他の亜人達と変わらないということを認識していた。
ただそこで、デニスは1人の妖弧族に目が止まっていた。
2組組長のカルにだ、
「ごしゅじんちゃま、ほじょんこにょにゃかがかにゃりいっぴゃいににゃってきたでひゅ」
「そうか、なら新しい無限カバンを渡すからある程度詰めておいてくれ。持っていくから頼んだぞ。」
「ひゃい」
俺とカルの会話を眺めながら、その目はうっとりしていた。
カルが離れていった後に、マリサが声をかけてきた。
「あのデニス王子、カルに恋してますわよ。」
「うわ、まじで、何処がストライクゾーンだったのか、わからないな。でも、カルを連れていくわけにいかないからな、国に帰ったら、カルを城に呼ぼうかな。一応コモンズとの連絡係としてな。」
「それは、いい考えですわ。では、そのようにスモールモニコーフに伝えておきますわ。」
「ああ、頼んだ」
マリサは、すぐに魔方陣に載ってスモールモニコーフに伝えにいった。
マリサが戻ってきたら、すぐに次のアンティボデスの王都ボンボンに転移した。
「これはリュウ様、ようこそおいでくださいました。」
ここは、ゴビット商会ボンボン支店、今目の前にいるのは、ゴビットさんからこの支店を任されている、弟のサービットさんだ。
まあ、しゃべり方はゴビットさんそっくりなのだが、顔の見た目は、吹き出物を潰し続けて顔がぼこぼこになった状態なのだ。
見た目汚いのだ、本人もそれを気にしていて、一時期家からも出なかったそうなのだ、ただ、ゴビットさん同様、人を見る目は長けていて、人当たりも悪くないのだ、計算も得意、脅しなどにも屈しない、でも決して驕ることもない、と顔以外悪いところが見当たらない人なのだ。
まあ、何でそんな人がこんなところで支店を任されているかというのは、ゴビットさんが口説きおとしたからなのだが、三顧の礼なんて生易しいものじゃない、話を聞くと半年毎日お願いしに行ったらしいのだ、そんなゴビットさんに根負けしたサービットさんが話を聞いて、その上で判断をしたらしい。
優秀なだけあって、部下の育成にも余念がない人だ。
この支店だけでも、従業員が50人はすでに雇っていて、一人前と認められて、ゴビット商会の行商人をしている人もすでに、何人かいるらしい。
デーメーテールのゴビット商会にも、すでにサービットさんが育てた部下が、30人ほど勤務していて、大変賑わっているのだ。
まあなんだ、俺とサービットさんが話している後ろで、デニスが周りをキョロキョロしながら驚いているのだが、声にならないらしく、口をパカパカしていた。
「ああ、デニスここはアンティボデスの王都だ。今からアンティボデス王に挨拶に行くぞ。」
デニスは、理解出来ないまま、ミミに引きずられて来るのだった。
城の門に行くと、どこで情報を仕入れたのかソニア姫がすでに待っていた。
「リュウ様おまちしておりましたわ」
「俺が来るってよくわかったな」
流石にどうしてなのかがわからず聞いてみた
「リュウ様は必ずあの商会を経由して来られますので、あの店の前の建物を買いましたの、リュウ様があそこから出てきましたらすぐに合図をすることに決まってますの」
俺1人のためにどれだけ金使っとんねんって、突っ込みたくなったが、ここは堪えておいた。
「ソニア姫、紹介が遅れたが、一応俺の横にいるのが、スネアーズのデニス王子だ」
「紹介いただきましたデニスでごさいます。ソニア姫。」
流石に生まれついての王子である。普通に挨拶出来てるし。
「これはこれは、遠いところようこそおいでくださいました。アンティボデス国第4王女ソニア・イグニス・ローリニアでごさいます。いつまでも、こんなところで話しているのも何ですので、ご案内させていただきます。」
俺達は、ソニア姫に案内され謁見の間で、アンティボデスのフランク国王に紹介され、少し会談したのち、アンティボデスを後にした。
ソニア姫の引き留めがしつこく、城の人に協力してもらい、姫を撒いて城から出ていったのである。
商会の地下から転移の魔方陣で移動したので、そこから先は流石にソニア姫でも追うことが出来ないのであった。