ファン・デ・ノヴァの王都へ救いの道を
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フードの男を倒した俺達は、吹き飛んで意識をなくしている騎士2人に回復魔法をかけていた
まず意識を取り戻したのは、全身鎧の騎士だった
「う、う~ん」
声を聞く感じ、どうも女性のようだ
「大丈夫ですか?一応回復魔法をかけてはいますがどこか痛いところはありませんか?」
「え?ええ、体は、ええ、大丈夫です」
目の前にいる男性に見覚えがないので戸惑ってはいるものの、自分の体を確認し大丈夫と判断しているようだ。
「それはよかった。今の状況は・・・わかりませんよね?」
俺は、確認することを間違ったかなとは思ったが、そのまま話をつづけた
「あそこに落ちている、頭の男に操られていたんですよ、いろいろな事情があってあいつを倒したんですが、掛けられていた魔法が解除されたようで、あなた達を介抱していました。あ、申し遅れました、俺は冒険者のリュウっていいます。」
全身鎧の騎士は、右に寝ている男性を確認しました
「!、サルスーン殿大丈夫ですか?ああ、この方は、この国の騎士団長で、公爵様でもございます。現国王の弟君でございます。それで私は、騎士副団長のシルビアと申します。女性で騎士副団長?とお思いでしょうが、この国は能力次第で、登用されておりましたので、能力の高さで抜擢されたとサルスーン殿よりお伺いいたしております。それで、サルスーン殿は大丈夫なのでしょうか?」
シルビアさんは、兜を外しながら確認してきた。
シルビアさんは、褐色の肌に尖った耳、種族はたぶんダークエルフでしょう。
「ええ、シルビアさん大丈夫ですよ。回復魔法をかけていますし、あくまで1発殴り飛ばされただけですので、命に別状はないでしょう」
「そろそろ何か刺激でも与えれば、目を覚ますでしょう」
この男性は、その言葉を聞き汗を流し始めた。
そう、すでに意識は戻っているようなのだが、目を開けるタイミングを逃してしまったのだろう、先ほどから瞼がピクピクと動いていたのである
「この剣で股間をたたいてみましょうか?」
俺が面白がってそう言ってみると
「ああ、わかった、大丈夫だ、だ、だからそれはやめてくれ」
両手を前に突き出して、止めてきた
「すぐに目を開けたらよかったんですよ。シルビアさんが兜を外しだしたころから意識が戻っていたのでしょう?」
「ああ、そうだ、ちょうど兜を外す音で目が覚めたのだ。よくわかったな?」
「まあ、体が一瞬でしたが反応しましたからね。それで、ゆっくりと話していたいのはやまやまなんですが、長いこと操れていた王様は、今大丈夫でしょうか?」
俺の言葉ではっとしたのか、いきなりサルスーンさんは走り出した
「あ、兄上~」
俺達は、すぐにサルスーンさんの後に続きて走り出した
謁見の間にたどり着いたのだが、そこにいる王様は、よだれを垂れ流し、どこを見ているかもわからない、サルスーンさんの声にも反応しない、すでに精神が崩壊しているようだった
「あに、あに、兄上、サルスーンです、わ、私が、わ、わかりませんか?ねえ、兄上、う、うわ~っ」
サルスーンさんはその場に膝から崩れ落ちてしまいました。
「だ、誰か、誰かおらぬか?」
シルビアさんが周りに声をかけているのだが、王都すべてのものが操られていたので、ほとんどのものがまだ意識を取り戻してはいないだろう。
俺は、このはやにいるものすべてに回復魔法をかけた
「エリアヒール」
光魔法の3重かけで使用した
壁際に倒れていた、メイドや執事、衛兵が起き上がった
「リュウ殿、かたじけない、衛兵!国王様を寝室にお連れしろ。サルスーン殿を椅子に座らせるのだ。あと、この方々にも貴賓室へご案内差し上げるんだ。」
「「「「はっ」」」」
数人の衛兵と、使用人たちはすぐに行動を開始した。
俺達は、すぐに貴賓室に案内され、メイドによって紅茶が準備されたのだが、謁見の間以外にいた人には、回復魔法をかけていないので、回復に時間がかかると思われるし、門の前に倒れている人達は、そのままだと魔物に襲われてしまう可能性があるため、早く行動した方がいいと思われるので、
「そこのメイドさん、すいませんが王都を見渡せる場所に連れていってくれませんか?」
と尋ねてみた。
「あっ、すいません、ここでじっとされていても、暇でしょう。ご案内させていただきます。」
まあ、少し勘違いしている模様だが、特に問題がないので訂正はしなかった。
俺達は、そのまま城の1番高い所に案内してもらった
「メイドさん、ありがとうございます。それじゃあ、マリサ、ミミ練習していた魔法をやるぞ。ただマリサは、二重で使用してくれ。」
「二重ですね、わかりました。」
「はいだ、いつも通りでいいだな?」
「ああ、ミミはいつも通りでいい。ただ2人とも魔力全開で頼む。」
2人は俺の肩に片手をのせ、もう片手を肩と反対側の背中につけた。マリサは、背中につけている手に、ドラゴンスタッフを持っている
まずマリサが、
「優しき光が」
次にミミが、
「愛しき光が」
更に2人で、
「全ての者のその心までも、癒しの光が届くように」
続けて俺が、
「この力を纏め、人々の幸が続くために」
3人の体が光に包まれていった
3人の声が1つに
「「「神々しき癒しの光」」」
俺達から発せられた凄まじい光が、天を目指すかのように上がっていった。その光が、1度止まって王都を、いやこの国そのものを包み込むかのように拡がっていった
その光景を見ているメイドは、開いた口が塞がらないように、口を開けたままその光景を眺めていた
どこくらい時間が経過しただろうか、1時間くらいはたったのだろうか、自分達に時間の経過もわからない状況ではあったのだが、光が俺達の頭上からしだいに消えていった
その直後、王都の中に声が聞こえだした。
魔法が効果を示し、住民が意識を取り戻し始めた。
俺の足元には、魔力が完全に枯渇し意識を失っているマリサとミミがレイや、キャサリンにマジックポーションを飲まされていた。
俺もほぼ枯渇状態なので、自分でマジックポーションを飲んでいた。魔力の自動回復でもさすがに追いつかないからだ。
シルビアさんが、俺達のいるところに駆け上がってきた。
「い、今の光は、リ、リュウ殿でありましたか。おかげで城の中の者もしだいに目を覚ましております。」
シルビアさんは、城の外の光景を見ながら目を点にした
「も、もしかして、王都の中も同じ状態だったのでしょうか?」
「まあ、そうですね。王都の門の前にも倒れていたはずなのでこれで問題ないでしょう」
俺がそう伝えると
「重ね重ねリュウ殿には、申し訳ない。ただ国王は、変わらないようだ」
「さすがに人の性格や精神まで治すことは出来ませんから。すでに、精神が病んでしまっている王様を戻すことは出来ませんね。」
「そうですね、ここまでしていただいているので、そこまで無理は言いません。しかし、ここに王女さまがいらっしゃられれば、アシュ王女様が・・・」
俺達は、その言葉を聞いてハッとした。
「シルビアさん、もう一度王女様の名前を教えてください。」
「へ?え、え~と、アシュ様ですが?」
俺の質問の意図を図りきれないでいるためか、気の抜けた返事になってしまったが、
後ろで、すでに俺の意図を理解しているレイが、転移の魔方陣を準備して、その中に消えていった。
そしてすぐにまたあらわれたのだが、今度は2人で
その、姿を見たシルビアさんは慌てて、
「ア、アシュ様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
大きな声を上げていた
「シ、シルビア?こ、ここは?え?な、なんで王城に?」
アシュは、何も説明を受けずにここに連れて来られたのだろう。その顔には戸惑いしか感じられない。
「アシュ、俺がファン・デ・ノヴァ軍に反撃していったことはわかっていたよな?」
「ええ、それは、リュウ様の私有地であるフンドを攻撃されまくったからですね」
「ああ、反撃出来たのはここだけなんだ。それで黒幕であった男を倒したんだが、国王が精神を病んでしまっていて、国が危ないらしいんだ。それで、アシュの名前が出たから呼びに行かせたんだ。」
「それであれば、アシュじゃなくても、おじさまがいまくりでしょ?」
「ああ、サルスーンさんだろ。国王の状態を見てまともに動ける状態じゃないんだ。すぐにでも、この国を動かせる人が必要なんだ。ってことでアシュを呼んだんだ。だから、頼んだぞ。」
俺が、アシュの肩を軽く叩いて伝えた。
「もう、ずるい。そんなに言われまくったら、断れない。」
アシュは、顔を赤くして階段を降りて行った。
その後を、シルビアさんが追いかけて行ったのだった