絡まり合った事件
外の茹だるような暑さとは違い、涼しい事務所はまさに天国のようだった。
タマさんは座敷わらしと私を応接間に通すとクッキーと飲み物を持って来ますと言って部屋を出てしまった。
「お姉ちゃん、人間なのに猫さんの妖怪と一緒にいるんだね」
「いまお仕事を手伝ってるの」
そうなんだと座敷わらしが納得すると人間について色々と質問をしてきたので答えているとタマさんがクッキーとオレンジジュースを持って戻ってきた。
「待たせしました、さぁどうぞ」
座敷わらしはクッキーを両手の手に持ち、片方を食べると甘いと幸せそうに言い、もう片方のクッキーも食べ美味しいと目を輝かせた。
「慌てなくても沢山ありますよ」
タマさんは微笑ましい後景にくすくすと笑った。
座敷わらしは照れたように笑いオレンジジュースを飲み始めた。
「座敷わらしはなんで六丁目のお屋敷から出て行ってしまったんですか?」
タマさんが質問すると座敷わらしは悲しげに眉を下げボソリと言った。
「鬼婆が私がお屋敷に帰れなくしちゃったの」
「鬼婆とは山姥のことですよね?なんで帰れなくしちゃったんですか?」
「鬼婆が怒っちゃったの。お屋敷の人に返せ、返せって」
「何を返せってるのですか?」
「分からない。お屋敷の人たちに鬼婆は盗まれたってた。けどお屋敷の人たちそんな悪いことしないもん……。お屋敷の人たちも何のことか分からなくて鬼婆を追い返しちゃったの。それで鬼婆怒って私がお家に帰れないようにしちゃったの、そうしたら大変なこといっぱい起こるから」
座敷わらしは鬼婆すごい怒ってて怖いと言い、目に涙を浮かべ始めた。
私は座敷わらしを慰めているとふと、あることを思い出した。
「タマさん、そういえば鴉のブティックで三丁目の山に住む山姥の真珠が盗まれたって話を聞きましたよね」
「真珠?真珠ならお屋敷のご主人と奥さんがえりちゃんのお誕生日プレゼントにあげてたよ」
「そうですか……では、いまからお屋敷に行ってみましょうか。真珠の入手方法を聞いてみる必要がありそうですね。あとお屋敷の人に蝦蟇蛙の旦那さんを知っているか聞いてみましょう」
蝦蟇蛙の旦那さんの失踪事件を調べていたら、今度は窃盗事件に繋がってしまった。
蝦蟇蛙の旦那さんが窃盗事件に絡んでいるとタマさんは思っているのだろうか?
もし窃盗事件に蝦蟇蛙の旦那さんが絡んでいたら奥さんはきっと深く悲しむに違いない。
蝦蟇蛙の旦那さんが絡んでいないことを願い、私たちは事件を解決するべく六丁目のお屋敷に向かったのだった。