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二章二十三話 負けない宣言



 俺は一年二組の教室がある校舎とは、別の校舎を歩いていた。

 この学園はでかい校舎がいくつもあって大変だ。


 アルマはシーマと、学園の図書館で戦闘魔法の理論の自習学習をしている。

 ソラはグランと魔法の勉強だ。ソラとグランが非常に仲が良くて嫉妬する。


 しかし、本当に、


「この学園はどんだけ広いんだよ」


『多分、空間拡張系の魔法を使ってるわね!』


 その明らかに異常な魔法を使っているのは、一体誰なのだろうか。学園長だろうか。

 そういえば、ここの学園長って創立時からあの人なのだろうか。

 そうじゃないとすれば、創立者は、それこそ化け物だな。


『ねぇ、ハルト。さっきから考えないようにしてるみたいだけど………』


「ソラ、今なにしてるんーーー」


『迷ってるわね、完全に』


 言わないでくれ、自分でよく分かってるから。

 俺は方向音痴という訳ではないが、方向に強くもない。

 そんな俺にはこの学園は広すぎる。


 そして一番ムカつくのが、この状況をニヤニヤしながら見ているであろう学園長に対してだ。

 あの人の笑いのネタにされるのは、嫌すぎる。


 どうせ今も見ているんだろう、だったら通じるかは分からないが………。

 俺は親指をで自分の首の前を横に引く。そして笑顔で立てた親指を下に向けてやった。


「………君は一体何をしているんだ?」


「えっ………」


(あらま、見られてたわね)


 知的なメガネをかけた、いかにも優等生らしき男子生徒がいた。

 今の状況は、あの動作の意味を知っていてもいなくても、虚空に向かって笑顔でおかしな動きをしている馬鹿だ。


「………………迷っているように見えたのだが」


「それってかなり前から見てたよな、お前」


 どうして話しかけるのにそんなに時間が空いているのか。


「廊下を走ってはいけないからな」


「………そうですか」


 本気の優等生だった。

 だからわざわざ離れた位置から、迷っている俺の所まで歩いて来たのか。俺が止まってなかったら追いつけなかっただろう、それ。


「それで、君はどこに行こうとしていたんだ?」


「魔法工学研究室。案内してくれるのか?………あれ、もしかして先輩………?」


 この雰囲気は十分に先輩と言ってもおかしくはない。

 だとしたら、俺はかなり失礼なことをしていた。


「いや、君と同じ一年だ」


「よかった。それで、なんで俺が一年だと?」


「この学園に、迷うようなアホはいない。特に一年間過ごしている先輩方はありえない」


 ふむ、なるほど。確かにそうだけど。

 ………さらっと俺のことをアホだと言ったよな、こいつ。


「とりあえず案内しよう」


「助かる」


 そうして俺は優等生男子生徒の後ろをついていった。

 なんと驚くことに、校舎は合っていたものの、方向は正反対だった。


「なんで一年生の君が研究室に用があるんだ?」


「顔を出して来いって言われて」


「………へぇ、見た目によらず期待されているんだな」


「失礼。俺のどこが馬鹿っぽい?」


「自分の学園で迷うような奴を、どうして賢いと思うんだ?」


 本当にその通り。

 賢いなら迷う前に、事前に調べておいたりするよな。

 しかもこの優等生には、俺が奇行をしていたと思われただろうし。


「ここだ」


 一つの扉の前まで案内された。逆に、よくもまあ、一年生が研究室の場所まで把握してるもんだ。


「助かった。多分あのままじゃ一日をほとんど無駄にする勢いだった」


 なぜなら全く逆方向に進んでたからな。二階三階、四階と行って別校舎まで行ってたかもしれない。


「今度は迷うんじゃないぞ。………そういえば自己紹介がまだだったな」


 あぁ、俺もつい忘れていた。同学年なんだから、良い友人になれるかもしれない。


「俺はハルト、十五歳。二組だ」


 俺がそれを言った瞬間、優等生男子生徒の表情が激変した。


「………今、ハルトって言ったか?」


「あぁ、俺の名前はハルトだ」


 問いに答えた瞬間、優等生男子生徒は俺に詰め寄って胸ぐらを掴む。

 いきなりの事に俺も驚く。


「君みたいな奴が筆記一位だと………?くそっ」


 なんでそれを………いや、別に隠していないから、グランと同じクラスなのかもしれない。先生が言ったのかもしれない。

 おそらくグランから聞いたんだろう。


 悪態と同時に胸ぐらを放しながら、俺を後ろに放す。


「俺は入試筆記試験、二位のコルアだ。君みたいな奴に負けるつもりはない」


 コルアはそう宣言して帰っていった。

 あのグランよりも頭が良い生徒、それが俺をライバル視している………?


「………最高かよ」


 これは面白い事になるな。

「失礼します。一年二組のハルトで………ってカランナ先生!」


 魔法工学研究室の中には、呑気に飯を食べているカランナ先生がいた。

 もしかしてカランナ先生が、この研究室の担当なのか?


「あらぁ〜、ハルト君じゃない。どうしたのかしらぁ〜?」


「今日からここの研究室に参加しろって、学園長に言われたんですけど」


「えぇ〜。聞いてないんだけどぉ〜」


 まじか、学園長は何をしているんだ。

 そういえば、話はつけておいたとは言われてなかった。


「まぁ、いいわぁ〜。そこら辺で何かしらやってていいわよぉ〜。私は寝るから」


 そう言って、カランナ先生は本当に置いてあるソファに に横になり始めた。

 だが、俺としても好都合。最初は何が置かれてるのか見たかった。


「色々あるな………」


 そのほとんどが見たことがない研究道具らしき物だった。

 何が書かれてるか理解のできない資料も山ほどあった。

 なるほど、魔法学園の生徒は二年生になってからが本番のようだ。


「あれ、これって………幻影(ファントム)の魔法式か。それに、火球(ファイアボール)?」


「ハルト君、なんでそんなに早く魔法式を判別できるのかしらぁ〜?」


 カランナ先生がソファから起きて、側に来ていた。

 なんで魔法式が判別できるか?見たことのある魔法式だからだ。

 ………………いや、俺が《言語理解》を持っているからだ。


 しかし、それをこの人に言っていいのだろうか。出来る限り隠しておくべき事柄なんだが。

 いや、学園直が許可を出してるし、ここで研究をするなら、バレずに二年間を過ごすのは無理だ。


「俺のスキル《言語理解》のおかげです」


「《言語理解》〜?………………そういうことねぇ〜」


 すぐに理解したらしい。さすがは魔法学園の先生、しかも研究室の先生だ。

 これを教えたんだし、俺も聞いていいよな。


「カランナ先生にも質問していいですか?」


「もちろんよぉ〜」


「一週間前、アドガルドの動きを止めたあれ、何ですか?」


 ずっと気になっていた。魔法式が出なかったがスキルという雰囲気でもない。少し異様だった。


「あれは『言霊』っていうのよぉ〜。魔法に関して未熟な人には効きやすいのよねぇ〜」


「そんなすごいスキルを持ってるんですね」


「スキルじゃないわよぉ〜。色々調合した時にできた薬を飲んでみたら、使えるようになってたのぉ〜」


 なるほどな、俺は今、信じられないことを聞いた。

 そんな強力な力を、人工的に使えるようにした、だと?


 それって明らかに尋常な事じゃない。


「今も作れたりは………?」


「無理。もう材料がないもん。しばらくは作れないわねぇ〜」


 それはつまり、材料さえあればまた作れるという事だろう。

 カランナ先生がここにいる理由がよく分かった。


「ねぇ、そんなことよりもハルト君。君って魔法式の意味が分かるのよねぇ〜?」


「まぁ、はい」


「じゃあこれはぁ〜?」


 カランナ先生が、さっきの魔法書の別のページを開いて見せる。

 それは強化(ブースト)だった。


強化(ブースト)ですよね?」


「すごいわぁ〜!君にはなんて見えてるのぉ〜?」


 それを訊かれても困る。なぜなら言葉には出しづらいのだ。どういう意味かが分かるだけで。

 強化(ブースト)は『強』と『身』。


「“強化”と“身体”を意味する魔法式が書かれてます」


「なるほどぉ〜!これは二単語で出来ているのねぇ!ハルト君、君をこの研究室に入ることを許すわぁ〜」


「ありがとうございます」


 学園長が許可を出している時点で、それは揺るぎなかった気がするがな。

 まぁ、カランナ先生にも気に入ってもらえたようで良かった。


 しかし、それとは別で気になることが出来た。


「なんでここにその魔法式があるんですか?」


 魔法書、魔法式自体が特殊な魔法。この魔法式の魔法書は先生が持っているのだ。

 なのに、本物の魔法式がここにあるのはおかしい。


「だってこれ、私がコピーしたものだしぃ〜」


「はっ?コピーしたって………本気ですか?」


「えぇ、なんか出来たのぉ」


 ………この人も十分に化け物だと思う。スキル無しに研究を一気に進めているらしい。


「よぉ〜し、ハルト君が入ってくれれば付与魔法の革新と、魔法式の解明、オリジナル魔法式の作成まで出来ちゃいそうだわぁ〜!」


 なんだ、それは。

 聞いただけで、異常な所業だと分かるような事柄を言っていたような気がする。もしもそれらが出来ても、まだまだ先だろうな。



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