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二章二十二話 授業って眠くなるよな



 あれから一週間が経った。


 アドガルドとその取り巻きは、俺たちに一切関わらなくなった。

 望んだ結果ではあるのに、クラスとして間違っているような気がしてしまう。

 まあ、そのうちどうにかなるだろう。


 今は授業の時間。

 学園長が言っていた通り、魔法を覚える授業はなかった。

 今も魔力回路に関する授業をしている。


「魔力回路って言うのはねぇ〜、実はそれ自身も魔力で作られてるのよぉ〜」


 カランナ先生の授業はゆっくりだが聞いていて分かりやすいものだった。

 シーマ曰く、ゆっくりだからこそノートが取りやすいらしい。


 ソラはかなり苦戦しているが、俺が家で教えてることもあり、なんとかついて来ている。

 自分の好きなように、勉強出来るのが嬉しいと言っていた。


 俺はというと、基本的に居眠りをしていた。


 だって内容がもう知っていることなのだから、カランナ先生につられて眠くもなる。

 シシル先生は、先生自身が思っている以上に進んでいたらしい。


 ただ意味がないわけではない。

 シシル先生からは聞けなかった、驚きの考え方を知れたりする。


 とは言っても、それでも眠くなってしまうんだ。

「おい、ハルト、もう昼だぞ」


「………あぁ、おはよう。アルマ」


「おはよう、じゃねぇよ。あんまり調子こいてると俺が抜いちまうぜ?」


「はっはっ、やってみろ」


「覚悟しとけ!」


 一時間目だけでなく、三時間目まで寝ていたようだ。

 二、三時間目が移動教室じゃなくてよかった。


 この魔法学園の授業構成は、午前中と午後少しで三時間の授業を行う。

 午後は自由だ。


 しかし遊び呆ける生徒はほとんどいない。

 各自が魔法式の暗記や、図書館で魔法理論の自習、金が必要なものはギルドで依頼を受けたりしている。

 仮にも世界最高峰の学園だからな。


「あれ、ソラとシーマはどこに行ったんだ?」


 二組は、アドガルド達は学食、俺たちは弁当か購買だった。

 しかし、シーマだけならまだしもソラの姿まで見えなかった。


「ソラちゃんならシーマが連れてったぜ。連れションだな」


「………その言葉、すごく久々に聞いたな」


「ハルトは昼、食わねぇのか?」


「ソラが持ってる」


 俺はソラに悪いからいいと言っているのに、ソラは毎朝早起きして二人分の弁当を作ってくれる。

 何かしら働いていたいんです、と言っていた。


「熱々だな、羨ましいぜ」


「いや、俺としてはそっちの方が羨ましいがな」


 俺とソラが恋愛に進展することはない。

 むしろ、俺としては、それはソラの為にも避けなければいけないことだ。

 その点、進展する可能性のあるアルマとシーマの方が羨ましい。


 それにしても、なんだかんだで今の状況は珍しい。

 普段は四人で行動するとき以外、ソラは俺かグランと、アルマはシーマと行動することが多いからだ。


 どうせなら気になってる事を聞いておくか。


「アルマ、お前って貴族なのか?」


 ファミリーネーム持ちは基本的に貴族だが、アルマにそんな雰囲気はない。


「いや、俺は貴族じゃねぇ。ファミリーネームは親父が、国王から授かったんだ」


「はぁ?国王から?」


 王都ガイアビアの国王は、滅多に顔を見せないのに。

 一体アリオは何をしたんだろうか。


「王都にB級の魔物が襲って来たときに、一番功績を挙げたらしいぜ」


「Bランク!?アリオってすごかったんだな………」


 Bランクともなれば、その魔物が数体集まるだけで国が滅ぶ可能性もある。

 王都や帝都のような大都市は、まだ安全だが、それでも危険なことには変わりない。


「知らねぇのか?親父はギルドで最強って言われてるぜ?」


「そうなのか………全然知らなかった」


 そういえばアリオの話ってほとんど聞いたことが無いな。

 知っていることと言えば、父さんの友人って事くらいだ。


「確かアルマの夢って………」


「騎士になりたいのは親父は関係ねぇな。俺は誰かを一番守れる仕事がしたいんだ。これからはシーマを守るぜ」


「シーマはアルマに守られなくてもいいくらいの魔法使いだけどな」


「ハルト様!」


 アルマと話していると、ソラが勢いよく扉を開けて入ってきた。

 そして俺の机に両手を置いて身を乗り出した。


「ハルト様、もう授業中に寝るのはやめてください」


 突然そんな事を言い出した。

 廊下でカランナ先生に何か言われでもしたのだろうか。


「シーマさんが、成績不振者は退学だって言ってました」


「………あぁ、なるほど」


 授業中によく居眠りをしている俺が、退学にならないか心配してくれているのか。

 確かに、この学園は容赦なく生徒を切り捨てる一面がある。


「あと三ヶ月だけですけど、私はまだ学園で勉強したいです」


「俺が退学してもここにいればいいんじゃないか?」


「奴隷法でそれは禁止されてます」


 なるほど、それは初耳だった。

 俺のことを心配してくれてると思って嬉しく思ったが、そうではなかったようだ。


「ソラちゃん、走るの速いよ………。あれ、何してるの?」


 シーマが息を切らしながら教室に入ってきた。

 獣人族であるソラを追いかけてきたのなら、それは大変だろう。


「ハルト様が授業中に寝ないようにお願いしてます」


「なんで?………………って、なるほどねー」


 シーマが何のことか思い当たったらしい。


「ソラちゃん、ハルトは授業の内容、全部分かってるから寝てるんだよ」


「………えっ?それって、ハルト様はもう先の内容も理解してるってことですか………?」


「そういうこと。それにソラちゃんに勉強を教えてあげられてる間は、ハルトも大丈夫だよ」


 確かに、ソラに教えられるだけの理解ができているのに、俺が成績不振で退学させられることなんて無いだろう。


「………それもそうです。ハルト様って本当に凄いんですね」


 そして突然に好きな子に褒められるのは、どうしたって慣れないからやめてほしいんだ。

 ソラにそう言う訳にもいかないが。


「それで、ハルト達は何を話してたの?」


「俺がどれだけシーマのことが を好きかっていうーーー」


「はーい、そうですかそうですか。ソラちゃん、ご飯食べましょう」


「え、あっ、はい」


 なんでそこでアルマはそういう事を言うんだろうか。

 と思ったが理解した。親の威光を振りかざすみたいで、シーマには言いたくなかったんだ。

 つまりは意地だな。


 最近の俺たちの昼はこんな感じだった。


  『一年二組、ハルト君は至急学園長室に来てください』

「こんにちは、ハルト君。一週間ぶりですかね」


「………………こんにちは」


 全校放送で呼び出されるなんて、初めての経験だ。

 ものすごく気まずい。俺が何かしでかしたのだろうか。


「最近、随分と楽しそうじゃないです」


「………おかげさまでソラも俺も楽しませてもらってます」


「結構結構。さて、君が楽しんでいる間、私は何をしていたと思いますか?」


 俺は、机の上にわざとらしく広げられた資料と、学園長の目の隈を見て答える。


「ガーナウルド家、帝国との………交渉?」


「その通りです。どこかの問題生が、入学早々にしでかしてくれたトラブルの後処理をしていました」


「本当にすみませんでした」


 あの件で、随分と学園長に迷惑をかけていたらしい。

 俺としても、もう少し穏便に済ませられたんじゃないかと、反省はしている。


「………まぁ、その事はいいんです。今日呼んだのは、君が魔法工学研究室に入る件についてです」


 そういえば、条件として研究室で成果を上げることが言われていた事を思い出す。

 何も言われなかったから、すっかり忘れていた。


「今日から研究室に顔を出してください。教室は別校舎にあるので、迷子にならないように」


「はい、分かりました」


「ふふふ、ハルト君なら、一日で数世紀分は進展させるでしょうね」


 いくらなんでも、それは言い過ぎではないだろうか。

 俺だって所詮はただの生徒なのだ。


「そんな事はありませんよ。魔法式の意味の理解だけで数世紀はかかります」


 ………なるほど、それなら一日でそれだけ進展させるのも簡単だな。

 しかし、それ以外はどこまで関われるか分からないが。


 とりあえず、教室でソラが待っている。


「分かりました。じゃあこの後に行ってみます」


「ふふふ、よろしくお願いしますね」


 そうして俺は学園長室を出た。



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