二章十九話 セレモニー
ガラッ
静かに開けたつもりだが、それでも生徒が一斉にこちらを振り向いた。
しかしすぐにまた前を向く。
流石に今の視線は、心臓が止まる思いだった。
ソラなんて驚いて俺の後ろに隠れてしまっている。
とりあえず一番後ろの、空いている席に座った。
魔法学園といっても、入学式はありふれた感じだな。
しかし人数が少ない。
一学年約三十五人、それが二学年分だから七十人。
特に面白いことがあるわけでもなく、入学式は淡々と進んでいった。
しかしソラが一つ、気付いた。
「ハルト様、あの人ってグランさんじゃないですか?」
ソラが指をさした方向には、確かにグランがいた。
いつもの服装で、司会の先輩や先生方と並んで立っていた。
「何か聞いてる?」
「いえ、分からないです」
実はソラとグランはとても仲が良い。
数日前に二人を会わせてみたら、気付いた時にはびっくりする程気が合っていた。
少し嫉妬してしまったのは事実だ。何を話していたのか訊いても教えてくれないし。
と、そんなことよりもグランは一体何をしているんだろう。
『入学生、挨拶。首席のグラン君、ステージへ』
「はい!」
グランは凛とした声で返事をし、ステージに上がっていく。
待て待て、グランが首席だなんて聞いていない。
というよりも、思っている以上にグランがしっかりしてるんだが。
「グランさん、凄いです………」
「………………………そうだな」
一番疑問なのが、どうしてソラはグランに対してそんなに素直なのか。
分かってる、これは嫉妬だな、ジェラシー。
たとえソラがグランのことが好きなのであっても………きっと背中を押して………やれる男でありたい。
「暖かな日差しと、芽吹き始めた緑が春の訪れを感じさせる今日この日、僕たち三十五名はこの最高峰の教育・研究機関である魔法学園に入学することができました」
から始まり、
「僕たちはこれから、世界に名の知れた魔法学園の生徒として、最高峰の知識者、実力者となれるようにーーー」
このような入学に当たった抱負を言い、
「僕たちはまだまだ若輩者です。先生方、先輩方の教えを吸収し、そして自分達なりの理解へ昇華させていきたいとーーー」
そうして最後に自分の名前を言い、礼をしてステージを降り始める。
一度もミスをする事なく、聞き取りやすい声で言い切った。
先輩、同学年、先生方、全員からの割れんばかりの拍手がホールに響いた。
周りの女子生徒からは、グランを褒める声が聞こえる。
俺も正直驚いている。
俺といる時は、あんなに情けない所もあるのに、今日のグランは首席として恥ずかしくない立ち振る舞いに見えた。
親友の成長に嬉しくなる。
しかし同時に、自分を置いて成長していくのではないかという焦りと寂しさも感じていた。
「………ハルト様も十分凄いですよ」
ソラがそう告げる。
表情に出ていたのだろうか、だとしたらみっともない。
だが単純なことに、それだけで自信が持てる。
「あぁ、ありがと」
「はい。どういたしまして」
そしてソラは前に向き直った。
ソラはこう言ってくれても、それでも俺は置いていかれないように努力していこう。
グランには未だに剣で勝ててないしな。
『それでは、これから学園長先生主催の歓迎セレモニーを開催します!』
そのアナウンスと共に、突然周囲が暗くなる。
魔法を使っているのだろう、昼間とは思えないほどに真っ暗だ。
すると突然、ステージのあった位置に大きな立体映像が現れた。
『世界に羽ばたくこの魔法学園!君たちは今日、ここの生徒となるのだ!さあ、準備はいいか!?それではいくぞ、空間幻影!!!』
そんな学園長の声と共に、俺たちの周囲三百六十度に動物や魔物、魔法、様々な映像が現れる。
どこからか楽器の音も聞こえてきた。
『かつて魔王を討った勇者の仲間である賢者のように!魔法の謎を解き明かしてきた偉大なる研究者のように!君たちは皆、そうなれる可能性を持っているのだ!!!』
「「「おぉぉぉぉーーー!!!」」」
ホールが震えるほどの歓声が、このホールを埋め尽くす。
立体映像は、魔物達と戦う魔法使い、大発見をした瞬間の研究者の姿を見せる。
チラッと、隣のソラを見る。
目をキラキラ輝かせて、すごく楽しそうだ。ミドリもいつの間にかソラの髪の中から見ていた。
俺もかつてないほど心が昂ぶっていた。
『この学園は容赦なく、君たちを追い込むぞ!覚悟はできているか!?』
「「「おぉぉぉぉーーー!!!」」」
それを聞き、学園長は一拍おいて宣言した。
周囲では火花が、光が、魔法が飛び交う。
『これより第四百九十六期、魔法学園の始動だ!!!』




