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二章八話 Cランクの依頼(裏技)



 俺の初めての依頼は薬草集め。集めるのはいやし草だ。

 ヤノ村なら簡単に大量に手に入るのに、ここではかなりの危険をおかさなければ手に入らない。なんとCランクだ。


 王都から出て一時間ほどの位置に山がある。横に広く連なり、標高の高い山だ。ここら辺ではそこにしかいやし草はない。

 時間さえあればヤノ村に戻って取ってくるのだが、今は時間制限がある。そんなに余裕はないのだ。


『……ねぇ、ソラは私も買いたいけどさすがに無茶よ。ハルトが死んじゃう』


 王都を出てからミドリは俺の魔力から出てきている。人に見られる危険も無いし、こっちの方がすぐに感知ができる。


「大丈夫だって。Dランクの魔物なら余裕を持って倒せる様になったし、多少の徹夜なら耐えられる」


『でも………』


 現在夜中の十二時過ぎ。あと少しで山に差し掛かる。帰りの時間も考えて、睡眠時間を取れればいい方だろうな。朝帰りになる可能性もある。


「死なないようにするから。な?」


 ミドリも分かってるはずだ。自分で言うのもなんだが、結構俺は頑固だ。譲らない一線は持っている。

 ましてや、魔力のパスで繋がっているミドリなら今の俺の気持ちも分かっている。


「じゃあミドリが俺をサポートしてくれよ。早く依頼を終わらせられるように」


『それはそのつもりだけど……。あぁーー!もうっ!仕方ないわね、無茶だけはしないでよ!』


「あぁ、善処する」


 耳元でキンキンとうるさい声。でも俺を心配してくれてのことだからな。不快にはならない。


「さて、そろそろナビ頼む」


 山に差し掛かって数分。木々も増えてきて視界も悪くなってきた。ましてや夜中だ。暗さも合わさって視界が悪い。

 普通ならどうにもならなかっただろうな。


『何すればいいのよ?いやし草の場所見つけろって言われても無理だからね!』


「分かってる。Cランク以上の魔物と鉢合わせしないようにしてくれればいい」


 Dランクの魔物に勝てるようになっても、Cランクはどうにならないだろう。ランクが一つ違うだけで全然違う。

 俺もそこまで自惚れているわけじゃない。


『分かったわ!ここから真っ直ぐ、二十メートルあたりにCランク級がいるわ!』


「了解」


 これで依頼の難易度は格段に下がるはずだ。俺もいやし草は見慣れているから見逃すことはない。

 迂回して進んでいると魔物が出てきた。ゴブリンを大きくしたような見た目をした魔物だ。

 確か名前は……


『オークよ!Dランク!』


 そうだ、力が強くゴブリンよりも頑丈。しかも石で出来ている武器を持っている。

 体を強化し、剣を抜いた。


「ふっ!」


「グウオオオォォォ!!!」


 出来る限り集中した状態で剣を一振り。武器を持っている方の腕を切り落とす。

 オークは叫びながらも体当たりをしてくる。

 こんな光景、前にも見た気がする。……あぁ、俺が初めて魔物と対峙した時だ。そうか、あの魔物はゴブリンではなくオークだったんだな。


「あの時とは……違う!」


 体当たりしてくるオークめがけて走る。このままぶつかる気は当然ない。そうなれば吹き飛ばされるのは俺だ。

 俺はギリギリでブレーキをかけ、横移動しながらオークを真っ二つに斬り裂く。オークは斬られた瞬間から青い粒子となって消えていった。


 なるほど、オークは動物の変化型ではなく魔力から生まれたタイプか。これじゃあ素材は手に入らないな。


『ハルト!やっぱり強くなってる!』


 はしゃぐミドリに俺も気分が良くなる。

 Cランク級以上の魔物と鉢合わせしなければ、案外楽なのかもしれない。


『あっ!魔石があるわ!』


「おっ、本当だ。ラッキーだな」


 魔力から生まれた魔物は魔石を持つ。手に入れば高く売れるが、そもそもなかなか落とさない。運も俺たちに味方しているのかもしれない。

 俺たちはいやし草を探す為、更に山を登っていく。

『また来たわ!オーク!』


「はぁ、はぁ。分か、った」


 山を登り始めて三時間は経った。

 ミドリのナビと、俺のいやし草を探す経験から依頼自体は順調だった。Cランク級以上の魔物も避けている。


 それでも、息も絶え絶えになってしまっている。筋肉も関節も骨も、少しずつ悲鳴を上げ始めていた。


「グフウゥゥゥゥ!!!」


「なんで見つけた瞬間に襲いかかってくる……んだよっ!」


 魔物の生態に文句を言いながら、オークの攻撃をかわしてカウンターで斬る。

 手慣れた動きでオークを倒す。だが疲れで速さがなくなってきたのが自分でも分かる。この三時間で大量のオークとゴブリンを相手にした。一体一体には普通に勝てても、その頻度がやばい。


 技能で身体能力を底上げされている体はガタが来始め、標高が高いのもあって息も切れてくる。否応無く体力が奪われていった。


『……もう引き返したほうがいいんじゃないかしら』


「あと一つなんだ、はぁ……っ!ここで帰れるかよ」


 あと少しで依頼を完了できるんだ。時間は可能なかぎり節約しないといけない。

 昼間にまた来るなんてしたくない。


「……おいあったぞ、いやし草!」


 体力もギリギリなところでようやく最後のいやし草。これであとは王都に帰るだけだ。

 気力が戻ってくた。


『また!ゴブリン二体!』


 置いていた剣を手に取る。もうEランクの魔物には負けない。

 ゴブリンは今までの個体と同じように、俺を見つけた瞬間に襲いかかってくる。駆け引きなんていらない。俺は正面から剣を振ろうとした。


 しかしーーー


『ハルト!!!』


「くっそ!」


 一瞬足に力が入らなくなり座り込んでしまった。お構いなしにゴブリンは襲いかかってくる。

 俺はもう片方の足で横に跳んでなんとか避ける。


「ふんばれよ、俺の脚!」


 力を振り絞ってゴブリンを一体斬る。

 俺に攻撃してきたもう一体のゴブリンは振り返ってまた攻撃してくるが、長いリーチを生かしてそいつも斬る。


 青い粒子が舞う中、流石に地面に座り込んでしまった。


『大丈夫!?』


「……あぁ、なんとか」


 今のは危なかった。相手がオークだったら死んでいたかもしれない。

 ついに体が言うことを聞かなくなってきた。しかし王都まで魔物と遭遇せずに帰るのは無理だ。かと言ってここに留まっていると魔物が集まってくる。


 進むしかない。

 だが今まで通りに魔物と遭遇して戦っていたら正直死ねる自信がある。


「ミドリ、魔法を使う」


 魔力が少ない俺は普段、魔法を使うことは控えている。でも今回はそんなこと言ってられないな。

 あの時みたいに魔力を使いすぎて体力まで消費するようなことのないように気をつけないと。


『……うん、それしかないわね。私も一番魔物と会わない道を教えるわ!』


「頼んだ」


 ガクガクの体で俺たちは山を下りていった。

 宿に帰れたのは、空が明るくなってきた頃だった。

 少ない魔力で四苦八苦しながらなんとか王都に着いた。王都に着いた頃は魔力が底をつく寸前。

 普通に死んだかと思ったわ。


 これがCランクの難易度か。いや、ミドリにかなり助けられている。実際の難易度よりも格段に楽なはずだ。

 目標額に届けるためにはCランクの依頼をこれからほぼ毎日しなくてはいけない。今までに経験したことのない、過酷な状態だ。


 気力は十分。ただ過労でぶっ倒れるかもしれない。

 せめてご飯をしっかり食って体力をつけよう。あと出来る限り寝よう。


 依頼完了の報告はもう既にしてきた。

 朝早くからいたアリオと数人の冒険者からは驚かれ、心配された。思ったより冒険者もいい人達だったな……。

 手に入った額もそれなりだ。これを続けていればきっと貯まる。そう信じる。


 ふらふらと部屋の前にたどり着いた。とにかく少しでも早く寝たかった。


 扉を開けるとそこにいたのは……


「あ、ハル、おはよう。何してたの?」


「グラン……」


 ついさっき起きたらしいグランだった。

 心配させないためにバレないよう出てきたんだ。グランに伝えたら止められそうだし。

 今、ガクガクな体を見られるわけにはいかない。


「……朝の運動だ」


「誘ってくれればよかったのに!さっきまで走ってたの?」


「……あぁ」


「じゃあ疲れてても寝ちゃダメだからね。筋肉が固まっちゃうし」


 そう言ってグランは先生から借りてきた本を開いた。勉強をするのだろう。


「………」


 今夜は、いやもう朝か。

 今日は寝れないかもしれない。今寝たら一日中起きない自信がある。そうなれば疲労もバレる。


 これからもそうかもしれないと思うと目眩がした。



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