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一章四話 この人生、きっと楽しくしてやろうじゃないか



 父さんは用事があると言って出かけ、母さんは色々と家事をしている。

 母さんの手伝いをすると言ったが、「子供の仕事は元気に遊ぶことよ」と断られてしまった。


「それじゃあ、始めますか」


 俺は今、父さんの部屋にいる。

 父さんは昔冒険者をやっていたらしい。

 父さんの部屋には、その時集めていたらしい様々な本が置かれている。


 俺がまず最初にしようと思ったこと。

 それは知識の収集だ。


 もちろん、体づくりも欠かせず行うつもりだ。

 日本での知識から、楽しい異世界生活を送るには体づくりは必須だと思う。


「おっ、これは……」



『初心者のための魔法入門』



 今の俺に、ちょうど必要な本な気がする。

 最初はこの本を読む事にする。


「魔法は、魔力を魔法式に通して発動するものである……」




 その本には今現在、非常に大切な事が書かれていた。


 まず魔力について。

 魔力とは、生物ならどんな種でも持っているものである。

 無機物には存在しない。


 魔力は人それぞれ、保有量が異なる。

 更に、魔力の質というものがあり、魔力の質が良ければ良いほど、一つの魔法を使うのに少ない魔力で強力な効果を及ぼす。


 主に魔力は、生まれた直後から十五歳までの間にかけて増えていく。

 十歳までなら普通の成長とは別に、突然変異的に魔力が増えることもある。




 次に魔法式について。


 魔法式とは、魔法を使うための道具のようなものである。

 魔法を使うには、魔法式を正確に細部まで思い描いて魔力を放つらしい。


 本に書いてあるサンプルを見てみたが、とてつもなく複雑だった。

 あれを完全に暗記しなくちゃいけないのは骨が折れそうだ。

 一度覚えてもすぐに忘れてしまいそうな複雑さだった。

 一応、魔法式とは何かの文字らしいが、魔法式の解明はまだ一文字も成功していないらしい。


 魔法式の解明も、俺の目標とさせていただこう。




 そして最後に魔物について。


 魔物とは二種類の発生の仕方があるらしい。

 一つ目は、動物に大量の魔力が蓄えられて、変質するパターン。

 この状態の魔物は、体の構造は基本的には動物の頃と変わらない。

 凶暴性が増して、とてつもなく強くなるだけだ。


 二つ目は、大気中の魔力が集まり魔石という魔力の塊ができると、それを中心として集まった魔力のタイプによった魔物が生成されるらしい。


 このタイプは元が動物なのよりも圧倒的に強力で、中には魔法の様な攻撃をしてくるタイプもいるらしい。

 しかしこのタイプの持つ魔石は、非常に便利な代物で様々な用途がある。

 魔法具も魔石無しには作れない。


 魔物もいろいろな種類がいるようだ。

 スライムやゴブリンなど、日本のRPGにも見かけた様な魔物も存在するらしい。


 また、魔物から取れる食材や毛皮、骨、鱗などと言ったものは動物からでは絶対に見られない、高質なものらしい。




 まとめると、だいたいこの様な事が書かれていた。

 やはり今後のために、本はどんどん読んでいこう。

 今日の読書はここまでだった。

 理由は簡単。

 学生ならよく分かるのではないだろうか。



 寝落ちしてしまったのだ。


「ハルト。こら、ハルト!こんな所で寝てると風邪引くわよ!」


 いつの間にか寝てしまったようだ。

 普通に考えれば当然か。

 体はまだ三歳のなのだから、あんなに夜更かしして大丈夫なわけないよな。


「母さん……お腹すいた」


「起きて第一声がそれなのね。もう少しでご飯できるから、起きててね」


「はーい」


 俺は目をこする。


 もう昼食の時間か、結構寝てしまっていたようだ。

 でもきちんと読んだ部分は覚えてるから、よしとする。


 ウトウト………


「………はっ!!!」


 起きろハルト!

 俺にはやるべき事があるだろう!

 忘れてはいけない!

 俺は両親の手助けをすると決めたじゃないか!


「母さーん!俺、昼食の手伝いするよー!」

 母さんを説得してなんとか料理の手伝いをさせてくれた。


 やっぱり俺としては、幼い頃から色々力になるべきだと思う。

 だっていつ死んでもおかしくないんだから。


「それで、ハルトは何をしていたの?」


「魔法の勉強をしてたんだよ」


「そう、えらいわね。………えっ、いつの間に文字読めるようになったの……?」


 えっ?


 そう言われてみればそうだ。

 この世界の文字は、日本語でもなければ英語でもない。

 そして俺はまだ三歳だ。

 本一冊読み切れるほど、文字を覚えた記憶はない。


「もしかしたら、ハルトのスキルと関係があるのかもしれないわね」


 知らない単語が出てきた。

 しかもスキルだと。

 面白そうな匂いがプンプンする事この上なしだな。


「スキルって!?」


「スキルっていうのはね……、そうね、その人特有の特殊能力みたいなものかしら。一人一つだけの」


 まあ、日本のゲームやら小説やらでたくさん聞いてたからなんとなく分かるが。


「どんなのがあるの!?」


「なんでもあるわよ。

 《剣術》や《槍術》みたいな戦闘系、《鍛治》や《料理》の技能系とか。

 《大食い》とか《睡眠》なんてスキルもあるのよ」


 おおおお。

 なんて面白そうなんだ。

 魔法と並んで、下手したらそれ以上に面白そうだ。


「スキルはハルトくらいの頃から影響を受け始める事もあるらしいから、ハルトが本を読めたのはスキルのおかげじゃないかしら」


「母さんのスキルは!?ていうか俺のスキルは何なんだろう……」


「少し落ち着きなさいよ。

 私のスキルは《料理》よ。ちなみに父さんのスキルは《剣術》」


 なるほど。

 だから母さんの料理は絶品なのか。

 もちろんそれだけじゃないだろうけどな。


 それにしても《剣術》か。

 強そうでカッコいいな、父さんが羨ましい。


「スキルは八歳になったらハッキリするから、その頃に先生に調べてもらうわ」


 本が読める、いや、文字が分かるなんてどんなスキルだろうか。

 解読、とか?

 いや、文字取得とか?


 ………どちらもパッとしねぇ……。


 いや、ただの憶測でしかないし、八歳まで気長に待っていよう。


 そうだ、あれも言っておいたほうがいいだろう。

 あまり無駄に心配かけるわけにもいかないし。


「母さん、俺、今日から早起きして運動するよ」


「ハルト……どうしたの?」


「もうあんな事があっても、大丈夫なようになりたいんだ」


 魔物に勝てるようになりたいし、大切なものを守れるくらいに強くなりたい。


「そう………………こんなに大人っぽくなって……そんなに怖い思いをしたのね……」


「えっ?」


 後半何を言っているのか聞こえなかった。

 なぜか泣きそうな顔で頭を撫でられる。

 どうしたのだろうか。


「どうしたの?母さん」


「いえ……なんでもないわ。さあ、ご飯できたわ。父さんもそろそろ帰ってくる頃よ!準備しちゃうわよ、ハルト!」


「う、うん」


 一体どうしたのだろうか。

 ガチャッ


 父さんが帰ってきた。


「「おかえりなさーい」」


「おう、ただいま」


 テーブルにはもう料理が並べられている。

 父さんはすぐに準備をして、食卓に出てきた。


「今日はハルトがご飯作るの、手伝ってくれたのよ」


「おっ、えらいなぁ、ハルト」


 父さんに頭を撫でられる。

 母さんとは違い、少し荒々しいがそれもまたいい。


「それじゃーーー」


「「「いただきます」」」


 うーん、相変わらずの絶品だ。


「父さん、それで先生はなんておっしゃってたのかしら」


「問題ないってよ」


 さて何のことだろうか。

 あぁ、魔法の勉強のことだろうか。


「ハルト、明日から先生がお前の勉強を見てくれるそうだ。先生は魔法が上手いし、分かりやすく教えてくれるだろ」


「やった!!!」


 これで一歩魔法に近づけるだろう!

 明日から楽しみだ!


「父さん、あの事も……」


「あぁ、忘れてた。ハルト、お前魔法学園に行ってみたくないか?」


「行きたい!!!」


「お、おぅ。そうか。

 王都にある魔法学園。入学出来るのは十五歳からだ。それまでーーー」


「先生にたくさん教えてもらう!」


「お、おおぅ。そうだ。ちゃんと教えてもらいなさい」


「うん!」


 やっぱりあったのか、魔法学園。

 魔法の学校なんてやっぱり憧れだろう!

 スキルのことも楽しみだし、早く魔法使いたいし、早く学校行きたい! 。

 やりたい事がいっぱいだ。


 しかしそれまでにやっておくことは決まってる。

 読書と、先生の授業での知識の収集。

 体づくり。

 せっかくだし、教会に置かれてる本も読ませてもらおう。


 体づくりに関してはすることは決めてる。

 毎朝のランニングと筋トレだ。

 それとは別に暇な時があったら、その時出来るトレーニングをしよう。


 今日の夜から筋トレは始めよう。




 一度死んでから、二度目の人生だ。

 いや、二回分の死んだ記憶があるから実際もっと死んだ。


 この人生、きっと楽しくしてやろうじゃないか。



「神様の日記帳」なんてのも書いてみました。

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