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一章二十三話 《言語理解》



 今日は待ちに待ったスキル習得の日だ。


 幼い頃から本が読めていた。スキルに関係してるのだろうから、それ系統だろう。

 いまいちカッコよくないんだよな……。

 父さんの《剣術》とかなら強そうだし、カッコいいのに。




「ハルー、暇なら遊ばない?」


 グランの家の前を通ると予想通り、話しかけてきた。


「今からは無理だな。俺はこれからスキルを調べてもらうんだ」


「あー、なるほど。だからそんなにソワソワしてるんだね」


 どうやら俺はソワソワしているらしい。

 自分じゃ分からないもんだな。


「グランは調べてもらわないのか?」


「いいよ、面倒だから。スキルなんかじゃなくて魔法を極めたいし」


「そ、そういうもんなのか」


「そういうもんでしょ」


 グランは本当にスキルなんてどうでもいいって感じだ。魔法と同じくらい、下手したらそれ以上に面白そうなのに。

 俺がスキルに期待しすぎなのか。

 この世界ではグランの考えが普通なのだろうか。


「まあ、それなら今日は諦めるね。また遊ぼう」


「あぁ」


 そうして俺たちは別れる。


 少し違和感を感じたな。

 グランと会ってなかったのは少しの間だけだったのに、その間で随分と大人っぽくなったように感じた。

 何かあったのだろうか。成長期?


「ハルト、あなたの念願のスキルがもうすぐ手に入るわよ」


 母さんの声に考え事を中断する。もう教会がすぐそこだった。


「ハルトはどんなスキルが欲しいんだ?」


 父さんが訊いてくる。

 実は父さん、現在荷物持ちだ。両親が準備した、先生へのお礼だそうだ。


「とりあえずカッコいいのがいい。父さんのみたいな」


「おっ、そうかそうか」


 父さんは俺にカッコいいと言われて気分が良くなっている。

 単純だな。


「でも本が読める関連じゃあ、望み薄だよね」


「そんな事はないわよ、それだけでも色々な将来の道があるし、翻訳も出来たりしたら結構良い仕事につけるのよ」


 そうなのか。


 現在、まだ言葉が通じない、というよりも部族が存在する。

 彼らとの橋渡しになれれば、確かにお金は入りそうだ。けど俺はもっとカッコいい、強そうなのがいいんだ。

 そんな子供っぽい事、両親には言いたくないけど。


 俺は教会の扉を開けた。

 そこではもう既に先生が待っていた。


「そろそろ来る頃だと思ってましたよ」


 珍しい。

 先生は基本的に、来た時は寝ていることが多いのに。


「なんと言っても、教え子のスキル習得の日ですからね」


 やっぱり一般的にスキルは特別なもののようだ。

 グランは本当にいいのだろうか。


「先生、グランが来ないみたいなんですけど……」


「スキルを調べるのは自由ですので、特に強要はしないんです。それにグランくんは私が貸した魔法書で勉強を頑張ってるようなので邪魔するのも悪いです」


 強要しない決まりでもあるのだろうか。


 グランは勉強しているらしい。

 俺も負けていられないな。そのうち俺も魔法書を貸してもらおう。


「それではハルトくん、そこに座ってください」


 先生が指差した所は少し特別な感じだった。

 赤い布で飾られ、蝋燭が立てられている。その中央にはよく分からない小さな飾り物。

 まるで何かの儀式のようだな。

 スキルが神からのギフトとも考えられているんだから、おかしくはない。


 俺はそこに設置されているイスに座る。父さんと母さんは俺の斜め後ろだ。


「スキルにはいくらでも種類があります。どうなのでも悪用しないでくださいね」


「分かってます」


 過去に《暗殺》やら《盗難》とかがあったらしい。

 流石にそれを悪用するほど分別がないわけじゃない。


「それではいきます」


 先生は俺の額に手を当てる。俺は目を瞑る。

 段々と先生の手が温かくなってくる。これは魔法ののために魔力が集中してるんだろう。


「スキル、“調査(サーチ)”」


 更に熱くなる。

 なんとなく、自分の中をくまなく調べられている気がする。

 不快感は無いが落ち着かない感覚だ。


 先生は予想以上に早く手を離した。


「え、これで終わりですか」


「はい、終わりです」


 魔法を使ってから時間にしてたったの十秒。

 あっけないな。

 先生は記憶を辿るような、脳内検索しているようなそぶりをしてから言った。


「ハルトくんのスキルは《言語理解》ですね」


 え、なんだそのパッとしないスキルは。カッコ良さのかけらもないじゃないか。

 いや、予想はしていた。

 本が読めるようになるスキルなんて、カッコいい様なのは予想できなかったからな。


 それでも改めて言われると落胆するな……。

 俺のそんな内心は知らずに、先生と両親はテンションが上がっている。


「すごいですよ!スキルは被ることがよくあるのに、聞いたことがありません。完全にオリジナルですよ!」


 オリジナルだろうが関係ないのに。


「よかったなハルト。思ったより良いスキルじゃないか。これなら将来も安泰だろうな」


「よかったわね、とっても良いスキルよ。それにオリジナルなんて!」


 両親も喜んでいる。確かに金銭面的にはあまり困らないスキルかもしれない。

 でも俺が望んでいたのとは違うんだ。

 カッコよくないし、使ってる時も特にはカッコよくなさそう。


 そうは言っても、みんなが喜んでいる空気を悪くするのも躊躇われる。

 悪いスキルではないんだ。

 だったら嘘でも喜んでやろうじゃないか。


「うん!すごく嬉しいよ!」

「グランよ、俺は今とても残念だ」


「どうしたのさ、なんかこっちまで気分下がるよ」


 その後、シャルと一緒にグランの家に遊びに来た。

 シャルはネコを可愛がっている。いや、どちらかと言えばネコに構ってもらっている。


「俺のスキルがさ……カッコ良さのかけらもなかったんだ」


「あはは、ハルはスキルに夢を抱きすぎだよ」


 グランは、やっぱりなぁ、って言う感じだ。やっぱりそうなのか。

 そうだな、無数の中からランダムなスキルなんて良いのを引く確率はそりゃ低い。


 でも夢見てた分、やはり落ち込む。


「ちなみにどんなスキルだったの?」


「《言語理解》だってさ」


「《言語理解》か………」


 グランは何か考え込んでしまう。

 神妙な顔をしている。


「どうしたんだ?」


「……いや、どうもしないよ。そうか、なんか地味だね」


 グランはすぐに表情を元に戻す。

 何かを隠してるな、だが追求はしない。


「だよな、地味だよなぁ……。はぁ、なんかガッカリだ」


 そんな俺を見てグランは苦笑いをする。なんだかグランが本当に大人だ。

 グランも八歳だし、何かスキルを得ていてもおかしくない。

 だとしたらこの精神的成長も理解できる。


 《成長促進》とかだったら嫉妬する。

 明らかにチートだろう。異世界に転移した主人公がかなりの確率で持ってるスキルじゃないか。

 グランは先生に調べてもらわないようだから、知る由はないが。


「僕は良いと思うよ、たくさん稼げそうじゃん」


「それ、母さんたちにも言われた。でも俺が望んでるのじゃないんだ」


「スキルなんて妥協しなくちゃやっていけないと思うよ」


 そうなんだけどさ。

 習得はもうしちゃったんだから、どうしようもない。


「仕方ないよ、シャルちゃんに慰めてもらったら?」


「え?……うおっ!」


 いつのまにかシャルが俺の背後に来ていた。

 そして飛び乗ったてきた。


「お兄ちゃんどうしたの?」


 シャルの心配が心に染みる。


「……ハルは今、スキルが望んでいたのじゃなくて落ち込んでるんだよ」


 グランがシャルに説明する。

 シャルは「すきる……?」って首を傾げていた。


 可愛いなぁ


 シャルはしばらくスキルが何か考えていたが、結局分からなかったらしい。それはそうだ。

 シャルは後ろから俺の顔を覗き込んでくる。


「お兄ちゃんは何でもかっこいいよ?」


「っ、シャル!」


 なんてことを言うんだこの子は。可愛すぎるし、なんて嬉しいことを。

 俺はあまりの可愛さに脳の処理能力が追いつかなくなる。

 とにかくシャルの頭を撫でまくった。技能で魔力を流しながら。


「ほわぁ………」


 シャルの顔はだらしなく緩む。その可愛さがもう最高です。


 そうだな、どんなスキルでも関係ないじゃないか。

 むしろ、それで俺の妹にカッコ悪い姿を見せるわけにはいかない。

 このスキルでたくさん稼いでシャルの為に使おう、そうしよう。


 俺は立ち直った。


「ハルって単純だよね」


「シャルが特別なんだ」


「相変わらずのシスコンだね。ハルが立ち直ったなら僕は勉強の続きでもしようかな」


 失礼なことを言ってから、グランは部屋の端に置かれていた魔法書を持ち出す。


「あ、俺も一緒にやる。邪魔はしないから安心しろ」


 見覚えだけでもあれば、暗記するときに有利だ。

 それに剣術で遅れをとってるのに、魔法の勉強まで負けるわけにはいかない。


 当然、俺の片手はずっとシャルの頭の上だ。

 そんな俺をジトッとした目で見てから、グランは魔法書を開いた。


「………ん?」


 そこで俺はおかしなことに気付いた。



インフルにかかりました(泣)。二日に一話更新になりそうです。

申し訳ございませんっっっ!!!

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