一章十一話 史上五人目の技能使用者の可能性
「…………うぅ……」
ここは……そうか、魔力操作の授業中に気を失ったのか。
痛みで意識を無くすなんて、流石に情けないな。
先生に怒られるだろうか。後でちゃんと謝っておこう。
外はもう暗くなり始めていた。寝てたのは、だいたい五、六時間ほどだろう。
せっかくの授業をそんなに寝てしまうなんて、なんて勿体無いことをしてしまったんだ。
とりあえず、起きたことを先生に伝えよう。
「うおっ!」
ガタンッ
体に力が入らない。これは日本での三日徹夜した時と同じ感じがする。つまりは極度の疲れだ。
「まぁ、一年以上かかることを裏技で楽しようとしてるんだからな……」
多少のデメリットもあって当然だろう。
むしろ極度に疲れるくらいで済むならよかったじゃないか。
「ハルトくん!起きたのですか!」
倒れた時の音が聞こえたのだろう。
先生が部屋に入ってくる。
「おはようございます。授業中に寝てしまってすみません」
「いえ、私のせいです。本当にごめんなさい」
先生がとても申し訳なさそうにする。
いや、俺の踏ん張りがなかっただけだしな。
「いや、俺の気合がなかったからですよ」
「本当に私のせいなんです。私が判断と加減のミスをしました……」
ふむ……嘘は言ってない気がする。俺に気を使っているわけではなさそうだ。
まあ本当に先生のミスだとしても関係ない。
「気にしないでください。先生が失敗したとしても、俺の為にしてくれたことなんですから。あまり気にされたら面倒臭いです。」
俺はよく分からないことで謝られるのは、あまり好きじゃない。
何か間違えたなら、次は気をつければいいじゃないか。
「そ、そうですか、すみません。……体の調子はどうですか?」
「なんかものすごく疲れてます。疲労困憊で……す?」
一つ、気になることがあった。今まで感じたことのない感覚がある。まるで血液のように、体の中を流れるなにか。
まさかこれが、魔力なのか?
「どうしましたか?やっぱり、どこか悪いのーーー」
「先生」
「え、はい」
「魔力が……感じれました」
「えぇ!もうですか!」
先生が驚いている。なんか先生、ここ数日で驚きっぱなしな気がする
しかし、なにを驚いているのか。先生に魔力を流してもらったからなのに。
「普通は!何回も繰り返しやっていくものなんですよ!」
まるで俺が普通ではないみたいな言い方ではないか。
失敬な。
「ハルトくんは……とても魔法の才能がありそうですね……」
「本当ですか!?よっしゃ!!!」
「魔法式の高速暗記と、歴代最速の魔力操作会得です。これで才能がない方がおかしいです」
よっし!
魔法が使えるだけでも十分なのに、俺に才能があると!なんて嬉しいことだ。
しかし、魔力操作とは面白いな。魔力の流れに意識を向けると気持ちがいい。
体の中を脈打つようなこの感覚は、どこか安心感を覚える。
そして感覚で分かる。
この魔力を他人にも流せる気がする。どんな感じになるんだろうか。
……あれ、先生は他人への干渉は技能だって言ってなかったっけ?
……なるほど、確かに俺には才能があるかもしれない。
技能を習得してしまったのかもしれない。
「………………」
「どうしましたか?」
先生にはまだ言わないようにしよう。
随分と技能を使えることに自信を持っていたようだし。
しかしそうなると……俺は史上五人目の技能使用者の可能性があるのか……!
あまり人にバレると、絶対面倒ごとに巻き込まれる気がするな。
他人には言わないようにしよう。
まあ、技能の可能性があるこの感覚は後々調べるとしよう。
「あっ、流れでうやむやになるところでした。
謝られるのが嫌そうなのが嫌なのはなんとなく分かりました。でももう一度、謝らせて下さい。本当にすみませんでした」
先生が頭を下げる。
銀髪が流れる。
「許します、だからもう謝らないでいいですよ」
謝られるのは少しむず痒くて嫌なんだ。
「ありがとうございます。何があったか説明をーーー」
「ハルト、迎えに来たぞー!」
父さんが来た。
今日は少し遅かったな。
「今行くー!」
とりあえず返事をしてから、先生の方を向く。
「それで、なんでしたっけ」
「…………いえ、やっぱなんでもまりません。クラウさんを待たせては悪いです。今日の授業はここまでです。それではまた明日」
「え、あ、はい。また明日」
先生の様子が少しおかしい……?
いや、何かを考えて、思いついた、という感じがした。だからあまり気にすることではないだろう。
俺は父さんの元へ向かう。やっぱりかなり疲れていたのだろう、すぐに寝てしまった。
家まで父さんにおぶってもらった。
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「ほら、ハルト、家に着いたぞ」
「うぅ……」
家に到着。非常に眠いが我慢するしかない。
言えばこのまま寝かせてくれるだろうけど、それは好まない。
それは両親も知っている。
「もう少しでご飯になるから少し頑張れな」
「うん。……トマト見てくる」
俺はそのままトマト畑を見に行く。
自分の部屋もあるが、どちらかと言えばこっちにいる方が落ち着く。
俺専用の安らぎの場所って感じだ。
「それにしても…………」
もしも本当に技能を習得していれば一大事だ。
「他のものに魔力で干渉できれば技能なんだよな……」
先生がそう言っていた気がする。
俺はトマトの葉を触り、意識する。自分の魔力の流れを。
…………なんだ?トマトの葉にも魔力を感じる。
そういえば生物なら必ず魔力を持っているって言ってたな。
植物もその枠に入るらしい。
意識する。
自分の魔力をトマトの葉に流していく事を。
なんとなく魔力の扱い方がわかる。昨日まで無かった機能がいきなり付いたようなものなのに、どうすればいいかが分かる。
そして俺の魔力がトマトの葉へとながれてーーー
「ハルトー!ご飯できたわよ!」
母さんが呼んでる。
俺は急いで手を洗って食卓へと向かった。
トマトは、どこか少し前よりも更に美味しそうに大きくなっている。
ハルトは非常に楽しみにしていた。
目が覚めてたった数日で得た“技能”という新しい力。
それを得た自分が魔法を使える日を。




