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一章十話 愛する人を守るろうとする感情



「さあ、今度は魔力操作について教えますよ!」


 昼休憩をとってからの午後の授業。


 ん?

 先生のテンションが上がってるって?

 あの後、落ち込んだまま俺の弁当を食べにきたから分けてたら、すぐに持ち直していた。

 やはり母さんの手作り料理は最高だという事だ。


 まぁ、先生がやる気を出してくれるのは助かる。

 その方が授業もはかどるし、今まで聞いてきた話の通りならこの授業をこなせば、魔法が使えるのだ。


 魔法に必要な過程は二つ。

 魔法式の完全暗記と、魔力操作の会得だ。

 火球(ファイアボール)の魔法式を覚えたから、あとは魔力操作ができれば魔法が使えるはず。


 楽しみだ。


「まず、魔力操作の説明をしますね。

 魔力操作はその名の通り、魔力を操る事です。ですが、普通の人は魔力を放つ事しかできません。

 本当に魔力を思いのままに操れれば、それは技能の域です」


 はい、また知らない単語が出てきた。

 毎度のごとく質問させてもらおう。


「先生、技能って何ですか?」


 技能。

 普通に技術とかとは違うのだろうか。いや、違うのだろうけど、どう違うのだろう。


「技能とは、魔力操作などの技術を極限までに高め、スキルの様に特殊な効果をもたらす能力です。

 例を挙げると……ハルトくんの記憶力はもはや技能と言ってもいいかもしれませんね」


 ふむ、なるほど。

 “技術”を極限まで高めて得たものを、“技能”と呼ぶのか。

 俺の記憶力って、他人より少し優れてるだけじゃないか。

 技能ってそんなに簡単なものなのだろうか。


「ちなみに、過去に技能を得た人数はたったの四人だけです」


「へぇ……いや、俺の記憶力がそこに並ぶとかあり得ないですよ」


「はい、流石に冗談です。ですがとても技能に近い能力ですよ、それは」


 流石に俺が歴史上五人目なんて事にはならないだろう。

 いくらなんでもそこまで身の程知らずではない。


「それで、魔力操作を身につけるにはどうすればいいんですか?」


「魔力操作を身につけるにはいくら早くても一年以上かかります」


「……ん?えっ!?」


 そんなにかかるのか!?

 俺としてはせいぜい数日だと思っていたのに。あと数日で魔法を使えると思っていたのに。


「そう、普通は一年以上かかるんですが裏技を使いましょうか」


 ニヤリと笑う先生。


「裏技なんてあるんですか!ぜひ、使って下さい!」


「私の技能を使います」


「はい、お願いしま……。って、えええぇぇぇ!!!先生、史上四人のうちの一人なんですか!?」


「すごいでしょう」


 胸を張る先生。

 少し張り合われてる気がする。

 くっ、悔しい。

 見た目高校生くらいの少女に馬鹿にされている気分だ。


 しかし本当に凄い。

 只者ではないんだろうな、とは思っていたがここまでとは。

 俺はこんな人に魔法を教わっているのか。


「私の技能は魔力操作の技能です。

 普通は放つ、せいぜい自分の体に巡らすくらいしか出来ないはずの魔力操作を、私は他人に魔力で干渉することが出来ます。

 論より証拠。上を脱いで、そこに寝転がって下さい」


 先生は午後の授業の前からあった布を指差す。

 言われた通りに服を脱いでから寝転がる。


「それでは魔力を流しますよ」


 先生の手が背中に触れる。ヒンヤリしていてすべすべしている。

 気持ちが良かった。


 何かが体の中に流れ込んでくるのを感じる。


「…………ぁぁ……」


 マッサージをされてるみたいに、体の内側からじわじわと気持ちが良い。

 あまりの気持ちの良さに、声が出てしまう。


「魔力を外部から流されるのは気持ちがいいでしょう?これが私の技能です。……こら!」


 うっかり寝てしまった俺の頭を強く叩かれた。

 なんだか余計に強くなかったか?


「……暴力だと思います」


「私の授業で寝るのが悪いんです」


 いや反省しないわけではないが、半分は先生に魔力を流されたせいなのだが。

 それはそうとして、


「これでどうやって魔力操作を身につけるんですか?」


「その前に一つ。なぜ魔力操作を身につけるのが大変か分かりますか?」


 なぜか。


「分かりません」


「単純なことです。普通に暮らしていて魔力を感じることなんて、まずないからです」


 そうか、確かに身につけなくちゃ感じることのない感覚を覚えるなんて矛盾している。

 それをどうにかしようとするのは、時間がかかるのは当然な事か。


「そこで、私の技能でハルトくんに魔力の感覚を覚えてもらいます」


「なるほど!」


 それは確かに裏技だ!

 先生がいないと出来ない裏技だ。


「お願いします!ぜひ俺に魔力操作の感覚を教えて下さい!」


「もちろん、そのつもりです。もう一回横になってください。さっきより強く流すので痛いですよ。これ噛んでいてください」


 そう言ってもう一つ、布を手渡される。

 俺は言われた通り、横になって布を噛む。


 ……これあれだよな。痛みで暴れて舌を噛まないようにしてるんだよな。

 どんだけ痛いんだよ……。

 しかし、魔法を使うための痛みならいくらでも我慢してやろう。


 少しの恐怖があるのは許してほしい。


拘束(バインド)


 ひぃぃぃ!!!


 先生の魔法で頭と手足を固定される。

 これは…………やばい気がする。


「いきます」


 いや、少し待ってほしーーー



 ドクン!



「ぅっ、うがぁぁぁぁぁぁ!!!」


 痛い!

 ヤバイ!

 予想以上だ。


「ガアァァァァァァ!!!」


「少しの辛抱ですから、頑張って下さい」


 まるで体の中に、熱された金属が入ってきてる様だ。体は拘束されて少しも動けない。

 しかもその金属がどんどんと大量に流れてきて、さらに熱くなっている様に感じる。


「もう少し……」


「うぐぅッッ!ッッッッ!」


 痛みが更に増す。

 息すら出来ていないのかもしれない。

 もうだめだ、何も考えられなくなってきた。


 ついに意識が途切れた。

「ガアァァァァァァ!!!」


「少しの辛抱ですから、頑張って下さい」


 ハルトが魔力を流されて数秒、ここまではシシルは予想していた。

 いくら精神的に大人でも、これは耐えられるものではない。

 理論的に、その痛みは味わったことがない程のものになる。


(ごめんなさい、ハルトくんの為です)


 いくらハルトの為とはいえ、シシルも心苦しかった。


 シシルは以前に魔法を使って、自分の体で体験してみたから分かるのだ。

 尋常じゃない痛みだった。


(…………ん?)


 シシルは違和感を覚える。

 まるでハルトの魔力回路を何かが塞いでいる様な気がした。


(何でしょうか、これ。こんな感覚初めて……)


 今まで何人にも施してきた能力。

 しかしこの様な感覚は初めてだった。

 魔力回路が何かで塞がれているなど、あっていいことではなかった。


(これが本当にハルトくんの魔力回路を塞いでるとしたら……ハルトくんはまともに魔法を使えないかもしれない。それは何とかしてあげたい)


「もう少し……」


 さらに魔力の勢いを強める。


 そこでハルトは意識を失った。

 シシルは申し訳なく思うが、このままにしておくわけにもいかなかった。


 更に強める。


(あと少し。あと少しで取り除けーーー)




      フレルナッッッ!!!



「っっっ!」


 突然感じた得体の知れない存在に、思わず手を離す。


「ぅぅぅぅっっっ……!」


「ハルトくん!!!」


 ハルトの体が激しく痙攣を起こす。

 とても予想通りとは言えない。明らかに尋常じゃない様子だった。


回復(ヒール)!」


 シシルは慌てて回復魔法を使う。

 これはあくまで体力の回復と傷の回復促進だが、やらないよりはマシだと判断したのだ。


(完全に私のミスだ……!ハルトくんの為と言いながら、自分の好奇心を優先してしまった……)


 魔力回路という繊細な部分に得体の知れないものがあったのだ。

 一度やめて、詳しく調べてみるべきだった。



 数分後、シシルの魔法が効果あったのか無かったのか、ハルトの痙攣は収まり呼吸も安定する。


調査(サーチ)


 シシルは魔法でハルトの状態を調べる。


「……とりあえず何も後遺症はないですね。…………ごめんなさい、ハルトくん」


 完全にシシルのミスだった。

 自分の好奇心で、ハルトを危険にさらしてしまったのだ。


 シシルは後悔する。けど、こういう後悔はこの千二百年で嫌という程してきた。

 だからとにかく反省、次に活かすのが大切だと知っている。


 それにハルトならきっと許すだろうとも、思っていた。


(それにしても、あの感覚……どこかで感じたことがあるような気がする)


 それだけではない。

 シシルは確かに感じていた。あの強烈な意思のようなものに混じった、少しの感情。


 そう、あれはまるでーーー


「……愛する人を守ろうとする感情………?」




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