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一章九話 先生もあれでかなり自由人だよな



「それで、先生はどの種族なんですか?」


 前に、自分は人族ではないと言っていた。

 妖精族が今はいない事を考えると、エルフ族とかか?


「ふふっ、秘密です」


 うん、まぁ、そう言うと思った。

 案外先生は妖精族だったりしたりして。

 まぁ、絶滅しているって書かれてるし、違うだろうけど。


「さあ、魔法式を見てみましょうか」


 そう言って、先生は一冊の本を開く。

 とても古びた本だ。ものすごい歴史を感じる。


「これが魔法書です。私が唯一持ってる魔法書なので、大事に使ってくださいね」


「はい」


 本を開いてみる。


 うわ、何だこれ。

 長く一筆で書かれた所もあれば、いくつもの線で書かれた部分もある。

 しかもその形に規則性なんて少しも無いように見える。

 まるで子供の落書き、いや、なんか無駄に複雑で余計おかしなことになっている。


「その魔法式はさっき見せた幻影(ファントム)の魔法です」


 つまりあの魔法を使えるようになるには、これの完全暗記が必要になると。

 なんだそれ、大変すぎるだろ。

 これ一つでも、一週間で覚えられたら奇跡だ。


 いや、魔法式を覚えるだけで使えるならむしろ楽か。

 単純作業すぎて根気勝負になりそうだ。


 いくら大変でも諦めないがな。


「ちなみに、これでも比較的簡単な方です」


 ………………うへぇ。

 難しいのはどこまで難しいのだろう。

 やる気が少し萎むわ。


「まぁ、最初からこれを覚えろ、なんて言いません。

 まずは簡単な魔法式から覚えて、慣れていきましょう」


 そう言って別のページを出す。

 さっきの魔法式より幾分かシンプルなものだ。

 うん、これなら頑張れば何とか。


「これはこの中で最も初心者向けの魔法式です。魔法は火球(ファイアボール)です」


 先生は手のひらを上に向ける。


 次の瞬間、丸い火の玉が現れた。すごい、が予想通りだ。

 幻の魔法の方がすごかったな。


 そんな事を考えていると、火の玉が動き始めた。

 先生の周りをぐるぐる。

 俺の周りをぐるぐる。


 熱い!!!けど、おもしろい。


 思った以上に面白そうだ。

 大した事ないとか思ってすみませんでした、火の玉さん。


「案外便利なんですよ。少ない魔力で攻撃にも使えるし、周囲を照らせるし、冬には暖まれますしね」


 なるほど!

 少ない魔力で済む、有用性のある魔法か!


 ていうか先生が地味に胸を張って自慢げにしてるのが少しいらつく。


「先生、これ使えるようになりたいです!」


「ですよね、そう言うと思ってました。

 紙とペンはそこのタンスの中、いくらでも使ってもらって構いませんよ」


 そうだ、何か特別な事をするわけじゃないんだ。

 ただ覚えるだけでいいんだ。


「はい!……それで、先生、完全に覚えるための何かコツとかは……」


「そんなのありませんよ?」


「………え?」


 コツはない、とにかく頑張れといことか?いや、何もおかしな事ではないが……。

 しかし、それでは先生の授業を受ける意味が……。


「……あー、ハルトくんが何を考えてるか分かりました。

 私は、魔法を使えるようになることに関してはちょっとしか手助けしません。

 私が教えるのは、魔法学と歴史、一般教養です。その他教えて欲しい事があれば教えますが、魔法を覚えるのはほぼ自力で頑張ってくださいね」


 まじか。

 魔法を使えるようになりたいなら勝手に頑張れと、そういうことですか。

 なんか一気に魔法を使うのが大変に思えてきた。


 その他のことを教えてくれるのは助かるけども。


「私は少し出てくるので、頑張っていてくださいね。それでは」


「えっ、ちょっと…………」


 そう言い残して、先生は教会から出て行ってしまった。


 えーーー、なんか見捨てられた気分。


 普通、三歳を一人で置いていきますかな。

 いや、先生は俺が精神年齢二十超えだと知ってるのか。

 いや、それにしても授業中にいなくなるとは……。


 俺は辺りを見渡す。


 広めの教会の中に、ポツンと俺一人。

 とっても静かだなぁ。


「……やりますか…………」


 先生もあれでかなり自由人だよな。

「それで、たった一時間で覚えてしまったと?」


「はい」


 先生が教会から出て行って一時間半。

 超集中して魔法式を覚えましたよ。だってこれ覚えれば魔法に大きく近づくんだから。


 そうして完全に覚えてから、先生が帰ってきた現在。

 なんだか少し責められてるような雰囲気がある状況。


 いや、なんで?


「はあ……、なんだか少し予想できてた自分がいました」


 ため息をつかれてしまった。

 いや、何か悪いことをしたつもりは無いんだけどな。


「一つ教えてあげましょう。この魔法式は普通の人なら、覚えるのに一週間はかかるんですよ」


「え、そんなに大変じゃなかったんですが」


「ハルトくんって案外変人ですよね……」


 軽くディスられた。いや、なぜだ。

 俺の記憶力なんて大したことないのに。

 日本でも、そんな特別じゃなかったはずだ。

 せいぜい大学まで、知識関連のテストで満点以外取ったことがないくらいで……。


 ……うん、俺、暗記系は得意だったわ。


「まあ大した事じゃないですし、どうでもいいじゃないですか」


「いや、十分大した事ですけど、まあ分かりました。

 ちなみに幻影(ファントム)の魔法式はどれくらいで覚えられると思いましたか?」


「よくて一週間ですかね」


「……一般的に、才能がある人でも三ヶ月はかかると言われてますよ……。

 私でも一ヶ月はかかったのに……」


「えっ?」


「なんでもありません!」


 なんか怒鳴られた。

 質問に答えただけなのに。


「俺の事はどうでもいいじゃないですか、そんな事より次の事したいです」


「…………そうですね……。いや、もうお昼にはちょうどいい時間ですし、昼食を取ってからにしましょう。

 あと、できれば少しの間一人にさせてください……」


 先生は頭を抱えながら、別の部屋に入ってしまった。

 何か気を悪くする事を言っただろうか。


 まあ、どうでもいいか。

 千二百年生きてきたおばさん精神は、伊達ではないだろう。

 俺の頭の中はすぐに魔法のことでいっぱいになった。


 午後は何をやるのだろうか。

 着実に魔法使用に近づいている。


 生まれてくる弟か妹の為にも、魔法を使えるカッコいいお兄ちゃんになってやろうじゃないか。



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