決別
日曜日が永遠に続けば良いのに。
正義は早々と支度をし仕事に出かける。
「じゃぁねぇー飛鳥君!!
ちゃんとお留守番するだぞぉ!!」
あの告白の後
飛鳥は病院を退院し、
そして今、
正義の家に居候させて貰っていた。
(おかしいだろ。
どうしてこうなった。)
なんで、こういう事になったのか、
飛鳥は納得が行かず、取り敢えず記憶を辿ることから始めた。
記憶を辿ること罪の告白の後の時
両手を差し出し、
自首の姿勢を正義に見せた。
それに対して
正義の口からでた言葉は、
「飛鳥君。 それは出来ないよ。
人を殺したファントムには、
人権がないから、
この事に付いて
罪には問われないんだ。」
人を殺したファントムには
人権なんてない。
子供を殺した連続殺人鬼にすらある
人権が、
彼らにはない。
そして、
「飛鳥君、
残念だけど、
貴方はファントムだから、
名字を捨てなきゃいけないの。
法律で決まってるから、
これに関しては罪に問われるの。」
これが、今の日本のファントムに対する態度らしい。怪物に成り果てても人間であるには間違いない。
飛鳥もそうだ。
何もしなかった自分を恨み、
何も知らなかった自分を恨む、
これは間違いなく人間が持っている心であり、飛鳥が人間であるという紛れもない証拠のはずだった。
そんな彼にでも、容赦なく家族の証の一つである名字を奪い、明らかに自分を排除しようとする。
人間達の汚い思想が飛鳥には見えた。
だが、
青年は反対も抵抗もすること無く
小さく首を縦に降った。
警察が到着した後の仕事は早かった。
(手馴れてるな、きっとこんな事が珍しい事じゃないんだろうな。)
そしてすぐその場で
霧島飛鳥は、
霧島の名を奪われた。
書類も何も無く、ただパソコンで淡々と処理されていた。
飛鳥に対し、了解も何も無しで。
ちなみに病院にも連絡を入れて、
退院させられていた。
その後警察署で事件の概要を喋り、
日が沈み初めて間もない夕方位に
署を出た。
正義個人から後で話があるらしいので彼女が退社するまで隣のコンビニで
立ち読みでもしながら暇を潰した。
夜の6時位に正義が警察署から出てきた。
「ごめん!遅くなってごめんね!」
「いや、そんな待ってないです。
話って、 なんですか?」
「あーそうそうそう!
飛鳥君、 今泊まるとこある?」
「いや無いです。
おじさんの家には兄の事で、
迷惑掛けすぎたし、
今の僕が行っても...、」
「そうかァ。
よしじゃあ仕方ないねぇ!
私の家に来なさい!! (笑)」
以上、
事の成り行きでした。
(…………………………………、)
(何か変だな。
もう1度思い出してみようか、)
これを何回かほど繰り返しているうちに、
既に日が沈んでいた。
(いや、おかしいだろ。)
「たっだいまァ〜!!」
テンションの高い声で
正義が帰ってきた。
「あ、お帰りなさい。
お疲れ様です。」
「飛鳥君! 明日なんだけどォ!
外出するけど大丈夫ゥ!?」
「あー、はい。」
翌日二人は、初めて出会った例の雪山、いやもう雪一つない火山の前にいた。
「景色変わっちゃったね〜」
普通噴火したばかりの山の上は
有毒な火山ガスなどがあるのだが、
ファントムには酸や毒、薬品類は効かないため、平気で登れる。
(また噴火したとしても、
変体して炎鬼さんを担いで逃げればいいだけだ。
あれ?炎鬼さんって普通の人間だから
ガスは不味いんじゃ?)
「私の事は気にしないでねぇ!
私も酸は聴くけど毒と薬品は効かないから!!」
「え? あのそれってどういう?」
「ついたよ。」
あの岩山だ、
(いま思い返すと、
火山の噴火の熱で雪が溶けて凍死する前に助かったって、
こんなふざけた事なかなか無いよな。)
「飛鳥君、アレ、出して」
そう言われると飛鳥は
バックから黒色になった血まみれの
服を取り出した。
兄の物だ。
死体は砂になってしまったのだろう。
これしか残っていなかった。
ファントムになった以上、
自分の家族の墓には、入れない。
基本的には残った遺品を焼き、寺でその無念を払ってその灰を小さな壺に入れて地下に保存するらしい。
たがそれをするぐらいなら、
家族の手で焼いてもらって供養した方が兄のためになる。
正義の考えだった。
岩山の下に服を綺麗に畳み、そして飛鳥は火を付けた。
「火が...、 黒い。」
「遺体の砂が残ってたのかな。
燃やすとさ、黒い火をだすんだ。」
「ろくな遺体も残らないのに、火葬したらしたでこれですか。
死んだ後もお前の兄さんは化け物だって言わてる気分ですよ。
神様はいますね、
きっと心が水晶の用に綺麗で嫌味の無い性格なんでしょうね。」
(あ、)
「...、すいません。」
「ん?いいよぉ!
吐き出しちゃいなよぉ!
大人のお姉さんが
黙って聴いてあげるよん!
後、
出来れば正義って
読んで欲しいな!」
「...、
ぷッ(笑)」
飛鳥は思わず吹き出した。
そして照れくさそうな笑顔で話出した。
「僕、最初どうかと思ってたけど
命が助かって良かったです!
正義さんと出会って良かったです。
正義さんといると楽しいです!
正義さん、
僕、
これ以上、
人が死ぬの見たくないです。
ファントムになっちゃった人が人を殺すとこも見たくないです。
今の僕は人を殺すファントムだけど
僕の力は僕の物なんだから、
何に使ってもいいと思ってます。
僕、戦います。
もう決めました。
僕は僕の知らない人にだって死んで欲しくないし泣いて欲しくない。
出来れば笑っててほしい。
戦う力がいまここにあるなら、
僕は、戦えない人の為に戦いたい。
後、
僕はファントムなのにファントムに付いて何も知らない。
僕は無知だけど、
無知のままではいたくない。
絶対迷惑だと思うけど、
僕にファントムの事、
教えて欲しいです。
これがずっと考えてた事です。」
正義は言われる前に分かっていた。
自分の口から言って欲しかったのだ。
「いいよぉ!
いくらでも教えてあげるぅ!
後、
一人で戦うとか思わないでね!
私もガンガン参加するよぉ!
前は助けてもらったけど...、
今度は私が飛鳥君を助けてあげるからァ! 」
「正義さん(笑)
あの前僕ここで助けてもらったから普通に貸し借りないとおもうんですけど(笑)」
「のんのん!
貸し借りとかないの!
うちらは友達!
年の差やばいけど(笑)
1人前になるまで、
私が守ってあげる !
もちろん私は死にません!
約束するよ!」
黒い炎を灯した服は、
いつの間にか、優しい焚き火の様な
暖かい火に変わっていた。
そして飛鳥は、
何もしなかった自分に(決別)して、
戦う事を決めた。
大分慣れてきました。