phantom 後編
特に無いです。(絶望)
「飛鳥君が、phantom?」
消えそうな声で呟き、そのまま目を閉じて、気絶し...、
「は!!!」
「え、?」
「なぁーんーだ!!!」
...、
普通に怪物となった飛鳥から
飛び起きて、
いつものテンションで喋り出した。
(…………………………………)
飛鳥は呆気にとられすぎて、
何も考えれなかった。
「へぇー!、
ジェミニタイプなんだァ!!
飛鳥君珍しいね! イヤァー!!
まあなんか普通に、
原色で見た目シンプルだから
ルーザーのファントムっぽいね!!」
飛鳥はあまり会話の内容が入って来なかった。
(とういうかさっき10メートル程宙を舞う程の腹パンをくらって平然と立っているこの人の方が珍しいというか)
「まあ後は、警察に任せなさいなぁ! 取り敢えず変体解いておこうよォ!、
見た目は完全にルーザーだから間違われて撃ち殺されちゃうよォ!」
この内容だけは、頭にダイレクトに
入ってきた飛鳥はすぐに元の青年の
姿に戻った。
正義は警察に連絡を入れた。
一応話を聴くらしいので飛鳥も
この場を離れられかった。
色々と聞きたいことがあったが 、
辺り一面に転がっている死体を見ると聴く気も失せた。
飛鳥はふと正義の顔を見た。
つらい目をしていた。
(やっぱりいつもの笑顔よりぎこちないと思った、この人はこういう時は空元気で自分の心を守っているんだ。
そして僕が変な気を
使わないようにするために、
大人って、 凄いな)
飛鳥は何も知らなかった、
(僕とさっき倒した奴らの名前、
phantom
日本語で(怪人) と言う意味だ、
わざわざ英語で読んでるってことは
多分学名だろう。
ルーザーとか、ジェミニとか、
なんか種類でもあるのかな?)
「遺体の山。」
「え?」
「あまり怖がらないんだね、
ひょっとして、初めてじゃないの?」
「...、
はい、 3度目です。 」
「そうかァ..。」
それ以上は聴いてこない。
飛鳥は察していた。
警察としては、身元不明のファントムなんて、話を聴かない訳にはいかない、いつかは全部話さなければならないのだと。
だが、自分が話したがらないのを分かっているから無理に聴き出せない。
(諦めよう、
この人を困らせちゃだめだ。)
「全部...、
話します。」
「!!
いい...、 の?」
飛鳥は小さくうなづく。
飛鳥は口を開き
ゆっくりと話し出した。
「僕は父と母と2つ上の兄の4人暮しでした。 父は建築関係の会社の社長をしていて、多分普通の家庭よりは裕福な暮らしをしていたと思います。」
飛鳥は一瞬言葉が詰まるも再び話し出した。
「僕が9歳の時、会社が倒産して、
と言うよりは、少し大きな会社に
倒産させられて、
お父さんは、僕達と従業員が路頭に迷わないように、
首を吊って、
その保険金で従業員の最後の給料と僕らがしばらくは暮らしていけるお金を残して死にました。
お母さんは...、
その後、女1人で僕らの事を
育ててくれました。
でも無理が祟ったのか、
僕と兄が学校から帰ってきた時に
1人で寂しそうに死んでました。
遺体はストレスで内蔵が
ボロボロだったそうです。
その後はお父さんの会社で働いてた
おじさんが、引き取ってくれて、
凄くいい人でした。
好きだったです。
でも、兄ちゃんは母さんが死んでからは本当に元気無くしてて、
学校では、僕はあまり喋るタイプじゃなかったから、人とは関わらなかったけど、
兄さんは、何故かいじめの対象になってました。
僕には...、
何も言ってくれなかったし、
僕も、
同じ学校にいたのに
家族なのに
気づけなかった。
僕の卒業式の日でした。
その日は兄も早退して
家の皆でお父さんとお母さんのお墓に報告しに行く約束をしてました。
でも、何故かいつまでも待っても
帰ってこなくて、
ケータイに電話しても出なかったから、学校に電話したんです。
でも学校に掛けても
電話が繋がっらなかった。
おかしいと思っておじさんと
学校に行ってみたら...、
地獄だと思いました。
学校中の人間が、生徒教師関係無く
1人残らず殺されてました。
死体は皆、
内蔵がミンチにされてて、
首に自分たちの腸を巻き付かれて
天井からぶら下がってました。
僕らは急いで兄さんのクラスの部屋に行きました。
クラスに着いたら兄さんは体中ぼろぼだったけど気を失って倒れてるだけでした。
その後、警察と救急車を呼んで、
兄さんは入院しました。
事件から3日後位に僕は学校終わりに兄さんが入院してる病院にお見舞いに行きました。
兄さんいる大部屋に入ると、
そこの人は皆学校の人達みたいに
内蔵がぐしゃしゃで、
天井から自分たちの腸で首を
釣られてる形で死んでました。
兄さんの...、
いや、
兄さんの姿をした奴が、
病室のど真ん中に立ってました。
そいつは病室から出る時に僕の耳元で呟きました。」
『 あ〜んたのお兄ィ〜ちゃん、
もう〜いないのよぉ〜。
あたしがたべちゃったからねぇ〜。
可愛そうな人だったよぉー?
いじめられてる事も、
ずっとお父ちゃん死ぬまでいじめてた
奴らの事死ぬほど憎んでたのにさァ
弟のあ〜んたにすら
言えなかったんだからさぁ〜。
あたしを恨むなよ〜? 僕ゥ〜?
全部あんたと
弱虫なお兄〜ちゃんが
悪いんだからねぇ〜?』
飛鳥の目に涙が浮かび始めた。
それでも、
淡々と喋り続けた。
「僕は...、 僕は、 何が何やら
分からなくて、 その場でただぼーっと突っ立ってました...。
その間に...、
病院中の人達が
アイツに殺されてたのに
僕はアイツと
自分が、 憎くて、憎くて、
この手で、
殺してやりたいと、 思いました。
そしたら、
体中が冷たくなって、
いつの間にか、体があの鳥の化け物になっていたんです
その後も
自分を恨んだり、
誰かを自分の手で殺したいと思ったら
鳥の化け物になれました。
兄さんや色んな人を殺したアイツを
自分の手で殺すのが
何も知らずに、
何もしてこなかった
自分の償いなんだと思って、
アイツを探しにおじさんの家から
出て旅を始めました。」
「それで、
あの山にたどり着いたんだね」
「はい、 あいつはあそこに潜んで
登山者を殺していつもみたいに
崖に腸で人を吊るすのを
楽しんでたんです。
僕は...、
アイツと戦って、
ギリギリで勝って、
殺しました。
炎鬼さん...、
今の僕は、
元人間だって分かってても、
化け物なら心を傷めず殺せるんです。
さっき殺した奴だって、
ひょっとしたら、弱いだけで
いい人だったかもしれない。
それでも炎鬼さんと違って、
あんな悲しそうな目をする事は出来ないし、心のどこかで死んでも構わないって思ってるんです。
こんなの...、
僕はもう.....、
人間とは呼べない。
僕は、アイツらと何ら変わらない。
只の人殺しのファントムなんです。」
全てをはなし、
飛鳥は、
両手の甲を表に、
手を指し出した。
飛鳥がファントムになった経緯でした。
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