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Grim Reaper   作者: 末野ヨシ
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#02 〝pelecan〟

【pelecan】(ペリカン)

国家公務の1つ。暗く人気のない街外の道を行き死の訪れる魂を迎え、すべての原点である〝聖母マリア〟へと還すことが役目である。そしてもう一つの役目〝亡霊駆除〟。

『亡霊』とは、ペリカンに回収されず街外の暗闇をさ迷い闇に潜む魔物と同化してしまった人間の魂である。魔物に取り憑かれ同化してしまった魂はマリアの元へは戻ることはできないためその魂を消滅させなければならない。

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「ありがとうございます!本当にありがとうございます!!」

ドヤルが銀髪の青年―ゾルビット・シュトラウスに何度も頭を下げる。

「い、いえそんな!僕は全然!!町の人の避難を援護したのはこのリンだし!亡霊はジグくんがさっさと倒してくれちゃいましたし!!」

ゾルビットは滅相も無いとでも言うふうに首を振り傍らに大人しく座る一匹の犬と幼い少年をチラチラと見る。

「こんな小さな子供もペリカンを?」

ドヤルは驚いたように目を丸くして黒髪の少年のほうを見る。

「い、いえ!ジグくんはガル……僕のペアのパートナーで!まぁ行く行くはペリカンには……ってあれ?ガルは?」

さらに一層大きく首を振っていたゾルビットははたと動きを止めジグと呼ばれた少年に問いかけた。

「ガルはもう町の外にいるよ。キングと一緒に。」

「ああ、そう……」

ゾルビットはなにか察したのか少し悲しそうな顔をした。

「そう言えば!確か赤毛の青年がいましたね。どうです?もう夜も遅いしうちに泊まって行きますか?」

「あぁ、えと……やめておきます。ガルの方が多分嫌がるので。御好意だけで十分です。」

ゾルビットは丁寧にそう断った。

「そうですか……」

ドヤルはあっさりと引き下がる。

そして少し考えるように黙り込み恐る恐る口を開いた。

「それと、父は?」

ゾルビットは優しく微笑み言った。

「はい。とても幸せそうに逝かれました。魂もマリア様の元へ還ったことでしょう。」


お母さんが言っていた。

亡くなった人の魂はそのままにしているとマリア様の元へは戻れない。ペリカンがもつ〝アニマ〟と呼ばれるマリア様から授かった力によってマリア様の元へ送られる。と。

実際、お母さんが病気で死んでしまった時もペリカンはやってきて光の塊をなにか筒のようなものに入れていた。




「それでは……」

ドヤルとなにか話をしていたのを終わらせるとゾルビットは足早にその場を立ち去ろうとした時

「あの!ペリカンさん!」

ドアノブに手をかけていたゾルビットが振り返る

「僕!ベル・アローンって言います!僕のお父さんもペリカンで、僕ペリカンになるのが夢なんです!!どうしたらなれますか!?」

いつにもなく生き生きと話すベルを見てドヤルの顔もいつの間にか綻んでいる。

「アローン?君テラさんの息子か!そっか、ペリカンに……」

ゾルビットは優しく微笑みベルの目線にしゃがむ。

「ペリカンになるのはそんなに難しくありませんよ。『なりたい』という君の強い意志があれば、諦めさえしなければきっとなることはできますよ。」

そして、ベルの頭を撫でると立ち上がり犬と少年ジグを連れてその場を去った。

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【8年後】

「おーい!ベル。馬車来てるぞ!!」

いつもと同じ。町長ドヤルの野太い声が階下から響きわたった。

「ごめんなさい!!後少し待ってください!!し……しまらな……い……うぉあ!」

全体重をかけて大きなカバンの蓋を押さえつけ必死に閉めようと試みるがしまるどころか逆に蓋は開いてベルの体を跳ね飛ばした。

「なんでしまらないんだよ。はぁ…」

仕方なく別の二つのカバンに分けて入れることにした。



「遅いぞ何やってたんだよ、ってお前なんだそのカバン。なんで一個でまとめないんだよ。」

ドヤルが二つのカバンを見て飽きれたようにいう。

「いや、だって蓋が閉まらなかったから仕方なく……」

「そんなにたくさん持ってくやつなんかあるか?パンツと服と適当に日用品でいいだろ。別にジャングルに行くわけじゃないんだから。向こうにも店くらいあるだろう。」

「はっそっか……!」

ベルのその反応にドヤルは頭を抱えため息をついた。

(こいつ一人で大丈夫だろうか。)

心配そうにベルを見つめるがとても生き生きとしている姿を見ると心配よりも頑張って欲しいと言う気持ちの方が強くなる。

(ま、別にこいつ一人ぼっちってわけじゃないし。オヤジさんもいるみたいだからいいか。)

「ま、頑張ってこいヘタレベル!」

ニカッと笑いながら思いっきりベルの背を叩く。

「ったた……はい。頑張ります!」

気合の入った調子でそう言うとベルは慌ただしく馬車へと乗り込んだ。



馬車の窓から住み慣れた街が流れていく。

ーーーーーいよいよ、僕はペリカンになるんだ。

期待に胸をふくらませた少年が一人。

ボトルネックの街を後にした。




読んでくださりありがとうございます。いきなり過去編でやっと次から本編って感じです。まどろっこしくて申し訳ない…。文字数も割と少ないですね。読みごたえのなさと言ったら……。

それでもこれからもお付き合いしてくださる方!宜しくお願いします!

とりあえず完結できるように頑張りたいと思います。(今まであそびでかいてた小説で完結したものは1つです。)


末野ヨシ

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