テスト2 義足の秘密
義足の秘密
博士は高い志を持った人だった。
彼は義足の開発研究者だった。
今日も今日とて、戦場からはたくさんの負傷した兵士が贈られてくる。みんな地雷や爆弾でその脚を失った哀れな人たちだった。
博士は一文の値打ちにもならないのに、負傷者一人一人の怪我を見て義足をこしらえてあげた。それはまるで父親が我が子にそそぐ愛情のようで、ときに厳しく、ときに優しく、失った両足を嘆く人々を励ました。
いつしか、博士はたくさんの人から神様と呼ばれた。
だが博士はそんな呼び名も毛ほども気にしなかった。きっと博士は単純な同情心から人々に義足を与えたのではないのだろう。彼のどこまでも真摯な横顔はなんの見返りも求めていない殉教者のような厳粛さがあった。
そういえば彼の息子は昔、病気で両足を失ったらしい。
私は、彼の過去に触れて納得がいった。彼にとって両足を失った人々すべてが息子も同然なのかもしれない。
ある日、とても天気がよくなった。
これほどまで新聞社を喜ばせた記事は後にも先にもないだろう。
戦争が終わった。
街は歓喜に包まれて、普段陰気な私でもどこか心が躍った。
もうこれ以上、哀れな人たちは増えることはなくなる。私は嬉しくなって博士のところに走った。
「博士、戦争が終わりました!」
「なんてこった!じゃあ誰がこれから実験体になってくれるんだ!?息子の脚はまだ完成していない!」
戦争が終わっても爪痕は残っていて、哀れな人たちがいなくなることなんてなかったから、無償で義足を作り続ける博士は相変わらず神様と呼ばれていた。
だから私は博士の嘆きを墓まで持っていこうと決めたのだ。