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通常生活。  作者:
2/17

学校 1

「…はぁ………」

私は、校門の前で溜息を吐いた。

今日もまたこの学校というガキ共が収容されている無駄にだだっ広い空間に入らなければいけないのか…。

「嫌だなぁ……」

私はどうもこの学校という空間が嫌いだ。

こんな所に通って時間を無駄にするぐらいなら、家で本を読んでいた方が良いと思う。

それに、一度言えば解る事を何度も何度も繰り返すので鬱陶しいったらありゃしない。

挙句の果てに、勝手に出て行ったガキを連れ戻すのに時間が掛かって授業が進まない?

知るか。そんなの私に何の関係が有る?勝手に出て行くのは、そっちの教え方が退屈だからだろう?

工夫もしないで匙を投げるな八つ当たりするな。

「うー…、帰ろうかなぁ………」

よし、帰ろう。

私が踵を反したその時。

「ちょっと其処のお嬢さん?」

「なぁに帰ろうとしてるのかなぁ?」

がっしりと肩を掴まれた。

「や、やだなぁ二人共。この優等生が服を着て歩いてる様な私が、何で帰らなくちゃいけないのさ?」

「「何処が優等生だ、何処が。」」

私は振り返り、黒い笑顔を浮かべる二人を見る。

私の右肩を掴んでいるのは、同じクラスでお隣さんのさーちゃん。

右肩がめきめきと音を立て始めた。

私の左肩を掴んでいるのは、隣のクラスでお隣さんのゆーちゃん。

左肩がみしみしと音を立て始めた。

「お前、今日何の日か解ってんだろ?」

さーちゃんが見下すかの如く笑う。

解ってるから行きたくないんだけどなぁ…。

「あ、まさかまさか、解ってるから行きたくないとか言わないよねぇ?」

ゆーちゃんが満面の笑みを浮かべる。

私の千五百九十回に及ぶサボりと四千七百三十八回に及ぶ脱走は、この二人によって悉く阻止されている。おかげで私は無遅刻無欠勤を貫く優等生として見られてしまっているのだ。

はっきり言って、優等生に見られるとかなり窮屈だ。

テストで七十点を取るとお前らしくないとか、手を抜いただろうとか言われる。

私らしいってなにさ?!

それが本当の私なんだよ!大人なら理解しやがれ!!

…こんな事言ったら、情緒不安定と見られるだろうなぁ。

まぁ、それも良いか。優等生ごっこに飽きたら、情緒不安定な子として振舞ってみよっと。

「さ、行こうぜ。」

あ…、忘れとった。

もう、逃げ出すタイミングは無い。

私は諦めて二人に連行される事にした。


教室に着き、ドアを開けると

『誕生日おめでとう!!』

という声がして、巨大クラッカーが鳴らされた。

…こいつ等は私の鼓膜を破壊する気なのか?

取り敢えず、愛想笑いを浮かべて「ありがとう、皆。すっごく嬉しいよ。」と言ってみせる。

さーちゃんとゆーちゃんがギョッとした顔を浮かべる。

いい気味だ。ざまぁみろ。

「六、誕生日おめでとう。」

ゆーちゃんの双子の姉のみーちゃんがそう言って、私に近寄ってくる。

「……私、ちゃんと笑えてる?」

「…大丈夫。」

小声で訊くと小声で答えてくれた。

理解者が居るって、いいね!

まあ、理解者っつっても、さーちゃんとゆーちゃんとみーちゃんしか居ないんだけどね。

あとは騙されてる可哀相な程目が節穴の人達。

村人A達ってとこかな。

……というか、私の誕生日をクラス全員(+α)で祝うって、どんだけ暇なのさ。

こんな私を総出で祝わなくても…。

さて、此処でお気付きの人が居るだろうが説明しよう。

私は学校以上に自分自身、つまり九重六定の事が嫌いなのだ。

大嫌いなのだ。

そりゃもう、吐き気がする程大嫌いだ。

前に一度、鏡で自分を見て生理的嫌悪が止まらなくなり、鏡を(素手で)破壊した事があった。

それ以来、極力鏡は見ないようにしている。

なにかと不便だー。

「ま、どうでもいいけどねー。」

今はそれよりも、この空間を何とかして欲しいや。

誰も何も出来ないだろうけどね。

私はもう一度、重い溜息を吐いた。

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