ワールド1の8
聖也の希望の今すぐ結婚ってのはムリという事で
私の大学卒業を待ってに、軌道修正。
そして今日は、我が家に結婚の申し込みに聖也が来る予定なんだけど…
千秋ちゃん、お父さん知らない?
えっ!?
お父さんいないの?
そうなのよ。
さっきまで書斎にいたと思うんだけど。
もしかして、逃げた?
ええ〜っ!?
そんなぁ〜。
大丈夫。
そんな度胸ないから。
ならいいけど‥
もうすぐ、聖也来ちゃうよ。
お母さんにまかせといて。
朝から異様にテンションの上がった母と
一言も話さない父の間で、私はハラハラするばかり。
ピンポーン。
あっ!
来た!!
お父さん!!
早く、こっち!
父が、連行されて来る。
お父さん、どこにいたの?
納屋の中。
突然、片付け物思い出したって。
ホントに往生際が悪いんだから…
相変わらず、黙って機嫌悪そうにリビングの椅子に。
ピンポーン!
そうだ!
忘れてた。
はぁ〜い♪
弾んだ声で母が玄関のドアを開ける。
いらっしゃい♪
聖也さん。
あ、どうも……
と、入って来た聖也の手には大きな花束。
(いや、それ、違うでしょ…
普通、菓子折かなんかでしょ。
せめて、ケーキとか)
い、いらっしゃい。
あ、あ、この度は…
その‥‥‥
(お母さんに花束渡して、どうすんの!)
あら、まあ♪
さあ、どうぞ、上がって。
リビングの入り口で、聖也が直立不動で凍りつく。
中を覗くと、睨み付けるお父さんと目が合う。
ちょっと、お父さん。
ご挨拶は?
そんな、まるで親の仇でも見るような…
お母さんの声で、シブシブ口を開く。
あ、ああ‥どうも…
あっ!
は、初めまして。おとうさん
榎田です。
榎田聖也です。
おとうさん??
誰の……?
あっ!すいません。
まあ、まあ。
聖也さん、どうぞ座って。
ほら、お父さん、お花頂いたのよ。
ふん。
(お父さん、そんなに睨んだらせっかくのお花が枯れちゃうよ)
それで、今日はなんのご用ですかな?
えっ、はっ、はい。
お、お父さんを僕に下さい!
ええ〜っ!?
ち、違う!
お嬢さんを下さい!
嫌だ!!
お父さん!!
なんだかんだで…
デートは月に三回だけ。
デートは、行先を前もって知らせる事
門限は9時。
学校は必ず卒業する事。
結婚までは、当然Hはなし。(これは、手遅れだけど♪)
以上の条件で
なんと誓約書に署名捺印までさせられて
聖也は帰って行った。