ワールド2の3
人は環境に順応する。
驚くような環境、例えばある日突然二十歳の女の子になっても…
なんとなく、日々の中で馴染んでしまうものだ。
私の場合もそう。
すっかり女としての自分に馴染んでしまった。
心も身体も………
時折、まだ男だった頃の感覚が戻る事があるが、それも一瞬のこと。
今の俺は、いや私はどこから見ても23歳の新婚間もない普通の女性のはずだった。
そう、あの事件が起きるまでは…
あの日は、珍しく仕事が早く終わった聖也と待ち合わせて
軽く夕飯をすませた帰りだった。
聖也の車は、結婚前に買い換えた
まだ日本に何台もないという白いベンツ。
山麓バイパスに入った辺りから、前に後ろに煩くつきまとう
真っ黒で、フルスモークのBMW。
なんだよこの車。
やけにつきまとうな!
気にしちゃダメよ。
相手にしなければ、そのうち何処かに行くでしょ。
う、うん。あっ!!
突然その車が前に回り込んで急ブレーキをかけた。
紙一重で、聖也の車が止まる。
相手の車から、3人降りてくる。
一目でわかる‥
ヤのつく職業関係者。
こら降りてこんかい!
人の車の前に割り込みやがって。
そうや、そうや、降りてきて謝れ。
聖也が少しドアを開けかけたところで
外からいきなりドアを引き開ける。
はよ、降りてこい!!
あなた達、どこの組の方ですか?
なんでお前に言わなあかんねん!
多分僕が直接、組長さんに話したほうが早いと思いますが。
やかましいわい!
お前、誰や!?
榎田の者ですが。
はあ?知らんなぁ!!
あなた達、後で後悔しますよ。
知るかい!
バキッ!
あら、聖也……
一発で伸びちゃった!
おお!
アニキ、こいつええ女連れてまっせ。
お詫びにこの女もうときましょか。
おい、ねえちゃん!
痛い目したなかったら、大人しいに降りてこい。
はああ〜!?
あんた達、誰に文句つけてるのか分かってんの。
榎田と組との関係も確認せずに、こんな事して。
ホントにチンピラね!!
(うわぁ〜、あたし何言ってんの!?
ゴメンなさい。
ホント!ゴメンなさい。)
あぁ?この女!!
腕を捕まれて、もうダメ!!と、思った瞬間……
相手のチンピラが宙に舞って、背中から地面に叩きつけられた。
??????
この女!
と、掴みかかる腕を引いて一本背負い!
そのまま、回し蹴りで残った一人のみぞおちあたりへ、ヒールをめり込ます。
うわっ!!
やっちゃったぁ!?
なんで、なんで私こんなに強いの?
取り敢えず、聖也を助手席に移し、車を発進させる。
後には、地面に転がるチンピラ三人。