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異世界でした!  作者: ぽち子。
一章 異世界の朝でした。
3/28

3.



 ふりふりのどピンク可愛い系を着るか、フリルあるけどだけどちょっと上品ドレス風を着るかの選択で、勿論選択の余地はありませんでした。

 ……鏡に写った自分を改めてみると、これって痛い人じゃない?

 確かに十代であれば多少なりとも似合っていたかもしれないけど、どう見ても二十歳を超えている私にはきついものがある……。

 アニーは物凄い笑顔なんだけどね。正直アニーのほうが似合うと思うんだ。

 それか開き直るしかない。だって信じられないけど、私にとったら『16歳』の朝でしかないしね!


「サシャ様、それでは遅くなりましたが朝餉の支度が整いましたのでこちらに」


 アニーが隣の部屋へと誘導する。

 やはり豪華な寝室の先は、豪華な部屋が待っていた。

 ここはリビングみたいなところ?4~5人は余裕で座れそうなソファーが置いてあって、複雑な織物のような絨毯がひかれている。

 壁側には絵画が飾ってあって、本棚も。おお、使っていないけど暖炉らしきものもあるよ!

 まさにお城の中のような……ってお城なんだよね、ここって。

 しかもドッキリでない限り、城は城でも王城である。さらにその主の人の妻、なんだよねぇ。

 そう思うと何だが胃の辺りがキリキリと……と、思ったら「ぐー」と空気を読まずになった。

 ……はい、おなかがとっても減りました。



「どうぞ、お召し上がりください」

「ありがとう……」


 うう、恥ずかしいっ!アニーは暖かく微笑んでいるのが更に居心地悪いの何の!

 仕方がないじゃん!昨日は失恋したから、殊勝にも夕飯をぬいちゃったのが悪かったんだな。

 って本当の『昨日』は知らないけど。

 目の前にあるのは極々、いやとても美味しそうな洋食らしきもの。

 見た目はそう変わらない。白いパンにサラダに、暖かいスープ。

 サラダの葉っぱは見たことないのがあるし、スープの色は赤いけど……こんな美味しそうな香りがするから大丈夫だよね?


「い、いただきます」


 マナーを知らないけど、とりあえず白いパンをちぎって口に入れる。

 ……うん、期待を裏切ることなくパンですよね。

 でももっちりしていて焼き立てみたいに美味しい!

 スープもサラダも、知っている味とはちょっと違うけど、一応『文化が違う』から味付けも違うよね。

 それに許容範囲どころか、とても美味しい!

 朝からがっつく私を、アニーはにこにこと笑顔のまま見守っていた。

 ちょっと見られて食べにくかったけど、完食してお腹も一杯で満足。


「ごちそうさまでした!」

「お口には合いましたか?お茶をどうぞ」

「美味しかったよ!ありがとう」


 お茶も紅茶みたいなもので、とっても香りがよくって美味しい。

 さすがに異世界とはいえ、これが最高級のものだと気付く。

 なんというVIP待遇。本当にいいのかな。

 美味しいお茶を一服したところで、これからどうすればいいんだろう。

 アニーは急かす様子もなく相変わらずにこにこ笑顔のままだし。

 まさしくメイドの鏡……と感心ではなくて、なーんか妙な気分だ。

 例えるならば、都会に出た息子が故郷に帰ってきた時に手厚く迎えるときのような……。

 ちなみにこれは我が家の親父殿の実体験らしい……だから毎年帰省していたのか。


「サシャ様」

「は、はい!」


 突然話しかけられて、明後日の方向に行きがちだった思考を戻す。

 不思議そうなアニーに何とか笑顔を取り繕ったら、追求はやめてくれた。

 うん、やっぱりメイドの鏡だ!


「陛下より公務の取りやめについての指示は受けております」


 そりゃそうだよね、記憶喪失みたいなもんだもん。

 極々一般人で100%純粋の庶民である私にそんな高度なことなどできるわけがない。

 貧相な頭では、精々民衆を前にして微笑みながら手を降っているイメージだけども!


「それともうお一つ……」


 と、途端にアニーは晴れやかな笑顔を消し、暗雲立ち込めるかのように物憂げな顔をした。

 清楚で明るいイメージしかなかったアニーにしては珍しい表情。

 な、なんかあるの!?と私は内心焦る。


「サシャ様には王妃の再教育として、後見人でいらしゃるクレイ様に会っていただきます」

「後見人?」

「はい、クレイ様はウィートランドの古くからの諸侯のお一人であり王家にも深くかかわりのあるお方です」


 へえ、じゃあ偉い人だ。そんな人から王妃教育受けていたのか。

 何となくイメージでは、荘厳な白髭を蓄え厳しい眼差しのジェントルマン。

 先が思いやられるな……テーブルマナーなんて勿論知りませんとも。


「サシャ様、何があっても気を遠くなさらないでくださいね……」

「……はあ?」


 苦渋の決断をするかのようにアニーは大げさに顔を顰めた。

 一体に何を、と問う前に閉じられていた扉が突然開かれた!


「おそーい!!!」

  

 開いたと同時に、開いた本人と思われる人物が怒りを顕に叫ぶ。

 あまりのことに驚いたのと同時に、その人物の服装に唖然……。

 何だこの、目の痛い色は!真っ赤で更にど真っ赤なドレスに頭が傾きそうになるぐらい重そうで派手な真っ白い帽子という奇抜な格好。

 ちなみに帽子は羽でアレンジされていて、一瞬鳥の巣をつけているかと思った……。

 エメラルドグリーンのハイヒールをこつこつと響かせながら近付いてくるものだから、逃げたくてたまらない!

 それに、それにだ。ドレスはどう見ても女性ものだけど、よく見たら女性にしては身長も肩幅があって……。

 先程の扉を開けたときの叫び声は女性の声ではなくて、随分低い男の声だったような……。


「ちょっとぉ!聞いてるの!?」

「……す、すみません」


 顔を近くで見るとこれまた美形!私、美形に弱いはずなのに全然嬉しくないよ!

 美形なのに、どう見てもカッコイイのにどうしてバッチシ化粧してあるんですか!?

 パープルのアイシャドウに赤のルージュ、金色に近い髪の毛は綺麗な縦ロール……違和感あるけど、美形だから似合っていないわけではない不思議……。

 くそ、どんな格好をしていても似合うなんて美形ってやっぱり得だ。


「……どうしたの、コレ。本当サシャなの?」

「クレイ様、先程申し上げたとおりサシャ様の記憶は今16歳です」

「ほんっとに記憶ないのねぇ」


 はあ、とため息交じりに物凄く呆れたご様子。

 ん?ちょっと待って。アニーってば今なんて、誰様って言った?

 聞き間違いでなければ、これがあのクレイ様?

 私のなかの厳しそうな紳士のイメージがガラガラと崩壊する音が聞こえた。

 う、うそだ。こんな奇抜な格好が許されるなんて……。


「まあ、いいわ。記憶がないならないで、この方が返って調教のしがいがあるじゃない?」

「クレイ様、あまりサシャ様を虐めないでくださいよ!?」

「安心なさい、あたくしが立派な王妃に再教育してあげる」


 ……間違いない。

 この人の性格はSだ!生粋のどSだ!!

 扇(これまた原色ピンク)を翻しながら妖艶と微笑む姿がハマり過ぎです。

 ハマりすぎだけど、常識的に考えてどうみても女装の変態さんに私は気が遠のくなりそうになったのは言うまででもない…。




 前途多難な様子にセレブ生活という夢はどうやら早くも崩れているみたいです。

 王妃いらないので、帰って欲しいとはさすがにまだ言えませんでしたとも……。 




遅くなってしまい大変申し訳ございません!

人物紹介はまた次回にて。

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