夢話
迫りくる光の集合体を間近で見てしまった目には、暗いここが微かな光があったとしても暫くは一帯が闇に見えた。
地面に座り込むようにしてついている足からひんやりとした感覚が伝わるからにして、ここの床が整備された石畳の部屋だということが分かる。
ようやく目が慣れた頃つたない光を頼りに自分の手を見つめて、開いては閉じる。
思った通りに動く手は、力強く握りすぎていたのかやや白く見えたが確かに私の手で。
ちゃんと揃っていて、どこも怪我はなかった。
あれ、どうして?
何故か初めにその疑問だけが私の中にあった。
どうして、こうしているのだろう、と。
その疑問を持ったまま呆然と座り込む私に被さる影が写って、それに気付いてその影の主を見上げた。
やはり暗がりなこの部屋でその人の表情までは上手く見えない。
でもその人の格好を足元から見たときの激しい違和感に何かの予感を感じた。
自分の範疇外のことが起きてしまっていることを。
だって、だって私は本来なら……。
本来なら?
どうして私はこんなところにいるのだろう?
不意に不安になって床に手を着けたらひんやりしていて、何かの溝が私を中心に囲っているのを見つけた。
この紋様は初めてこの時は初めて見たものだけど、今はどこかで見たことがあるようにも見える。
そう思ったのがこれが夢だからか、それとも、私の記憶?
規則正しくプリーツの入った紺のスカートも胸に赤いリボンのついた白いシャツも黒のソックスに茶色のローファーも、みんな懐かしくて。
でも目の前のこの人はまるで違う。それは根本的で、どうしようもなく違うものだから違和感しかない。
その違いの意味は、あともう少しで分かりそうで、解らない自分が酷く段々もどかしくて息苦しく感じてきた。
本当に息苦しく喘ぐ私に、目の前の人は優しく目隠しをする。
まるで、何も気にするなと、何も考えるなと、何も思い出すなと言うように。
暖かい、手で。
目隠しをしたのは、だれ?
私の意識は緩やかにおちていって、そしてまた目覚めるのだろう。