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異世界でした!  作者: ぽち子。
四章 異世界文化交流をしました。
19/28

15.



 個人的にはお肉の焼き具合は、ミディアムが最高だと思っている。レアだと生っぽいし、ウェルダンだと焼きすぎで固い。

 そして目の前の盛り付けられているお肉はミディアムだと確信している。

 正直素晴らしい出来だ。見た目だけで食欲がそそられる。

 ちなみに私は好物のものは最後まで取っておく派である。

 でも途中に味わいながら楽しむのも好きで、あと兄弟がいる人なら少しは理解してもらえると思うけど残しておくと取られてしまうから途中で食べてしまうこともある。

 食事時はいつだって弱肉強食なのさ……。


 と、何が言いたいかというと、目の前に美味しそうなものがあってそれに手を付けないのはそれなりに理由があると思うんだよね。

 たとえば、この憎きコルセットが胃を圧迫して苦しかったりしていてだね!


「サシャ様、先ほどからお食事があまり進んでおりませんが大丈夫ですか?」

「心配しないで、アニー。ちょっとコルセットがきついだけなの……」


 隣に座るアニーは心配そうにしている。

 そのアニーも勿論とても素敵なドレスを身にまとっていて、これぞ正しく貴族のご令嬢。

 元々メイド服でも気品がある感じだったけど、正しい格好をしたら益々美しくアニーの魅力を最大限に引き出している。

 さすがは三大公主フェンリートの姫君である……。

 本当に何でメイドさんなんてやっているの?一回腹わって話し合う必要があると思うの……。


「ちょうどいいじゃない。普段から食べ過ぎたし、少しは痩せるんじゃない?」


 この憎たらしい言葉を愉快げに発するのは、アニーの反対側の隣に座る美形の貴公子……のような男。

 見た目に騙されるその正体は、どS女装変態貴族クレイである!

 何故アニーの隣に座るのかって?信じられないことに婚約者同士だからだ。

 予想はついていたけど実際に目の当たりにするとやっぱり信じられないな。

 見た目に関してはもちろんお似合いの二人なんだけど。

 ……さっきから微笑みながら合う視線が、ぎらぎらとまったく笑っていなくて怖い。

 普通、婚約者同士ってもっとアハハウフフみたいな感じじゃないかな?


「この食べれないという生殺し、いつまで続くの?」

「メインディッシュまで出たので、あともう少しですよ」


 ということは軽く一時間は経っただろうか?

 最初華々しく拍手喝さいの中を登場してから、両国王陛下による晩餐会の開催の挨拶と変わらない国交に対する宣誓。

 まずここだけで30分は経っていたと思う。正直、全校集会の校長先生の話より長い。

 次に料理に対する説明が入る。早く食わせろって思ったのはこの広い会場内、私だけではないはずだ。

 ようやく食べようというところで、隣に座るヴァード国の国王と王妃にご挨拶。

 ヴァード国のコンラート様とアデリーヌ様は予想通り美しかった。

 でもコンラート様はどちらかというと人のよさそうな顔立ちの人でアデリーヌ様も清楚で大人しめな美人さんだったのでお似合いの二人だった。

 そして二人は視線が合うたびに照れたようなはにかんだ微笑みを浮かべているのだから、見ているこちらがごちそうさまです!って言いたくなるよ。

 なんだか見ているこっちが癒されるようなそんな癒し系夫婦って感じだ。

 まったく、クレイもアニーも少しは見習って……うん、そんな二人はちょっとアレだな。


「じゃあ、もうすぐお開きってこと?」

「んなわけないでしょ、交遊会があるから場を移すだけ」

「うげ……」

「終わりましたら何か軽いものを用意するように手配いたします。それまではどうか頑張ってくださいませ、サシャ様」


 まあこれで終わりのはずがないとは思ったけど。

 アニーとの反対側の隣をちらりと伺うと当然夫であるライが座っているが、先ほどからコンラート様と談笑している。

 実は他の人には聞こえないようにさっきからのアニーとクレイとの会話はこそこそ声を潜めているし、対外的には笑顔を崩していない。

 これもすべてあの涙がにじむ努力のおかげだ……。

 ちなみにアデリーヌ様は、食事がウィート国のものであるから初めて食べるようで、食べながら面白いほど表情を変えていて可愛い、可愛すぎる。

 隣に座るヴァート国の側近の方もアデリーヌ様の様子を見ては頬を緩ませているところをみると、やはり癒し系夫婦で間違いないようだ。


「サシャ」

「え……は、はい」


 アデリーヌ様の可愛さに癒されていると突然ライからお声がかかった!

 ちょっと突然話しかけないでよ、まじで吃驚したよ。

 しかも、コンラート様やアデリーヌ様までこちらを向いているではないか!

 一体なんだろうか……もしかしてアデリーヌ様のこと見すぎたとか?


「この後、アデリーヌ殿にこの城の庭園を案内してほしいが良いか?」

「へ……アデリーヌ様を私が?」

「わたくし、植物の研究を行っておりましてずっと気になっておりましたの……お願いいたします、サシャ様」

「ぜひお願いします」


 揃いも揃ってお願いされたら断れないけど、もっと詳しい人にお願いしなくていいのかな?

 一応庭園の知識も叩き込まれたけど自信が……と思っていたら、横から凄まじい圧力を感じる……!

 振り向かなくてもわかる、これはあのスパルタ教師以外にいない。

 ヘマしたら吊るすわよ?って無言で訴えかけれるなんて超怖い。


「え、ええ、わたくしでよければ是非ご案内させていただきますわ」


 ひきつっていなければいいけど何とか微笑みとともに了承の言葉を返す。

 私の言葉にアデリーヌ様は、ぱあぁと顔を明るくさせた。それが今のところ唯一の癒しだ。

 コンラート様が羨ましい。ライって美形だけど癒し系って感じじゃないからさ……。


「案内する庭園は城のとさほど変わらないからそう心配するな」

「ライ……」

「頼んだぞ」


 聞こえないようにこっそりと励ましの言葉を微笑み付で囁かれても癒されませんから。

 むしろ顔が熱いというか、ただでさえコルセットで腰から胸のあたりまで苦しいというのにさらに息苦しくしてどうする!

 いえ別に伴侶に癒しを求めているわけではないですけど、だからといってこういう風に振り回せれるのもどうだろうか……。

 こちらの考えていることが顔に出ているのか、ライは一瞬だけ可笑しそうに笑った。

 まあすぐに国王としての表情に戻ったけど。


「ではそのように。コンラート殿は別室にて」


 また国王同士の会話のようで、私にはわからない。

 とにかく今はいつの間にかに運び込まれたデザートを食べるほうが先だ!

 ミルフィーユのようなケーキにアイスが添えわれているこのデザート。

 コルセットがなんのその。何があろうと、私はこのデザートだけは完食する!

 いつの間にかに持って行かれてしまったメインディッシュのお肉の分まで、食べるんだ!

 隣ではらはらとアニーが見守る中、謎の信念が私を駆り立て次から次へと口に運び無事に完食しました。

 う……この圧迫感半端ないんですけど、ちょっと一気に食べ過ぎたかも。

 ドレスがちょっと寄っている気がするけど……気のせいだよね?

 でもこの後もこのままの恰好なのか……だ、大丈夫かな。

 布が薄そうだし……いやでもまだ憎いけど心強い味方のコルセットがある!

 念のために言うけど、コルセットはまだ破られていませんから!

 


 

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