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異世界でした!  作者: ぽち子。
二章 異世界で迷子になりました。
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夜話2


 

「ライ、ごめんなさい!」

「とーさま、ごめんなさい!」

「……なにがだ?」



 執務から解放されて戻ってきたライが珍しく少し戸惑い気味に返す。

 そりゃそうか、夜に寝室へ戻ってきていきなり頭を下げられたら困るだろう。

 しかも私だけじゃなくて、ユーリも一緒に謝っているのでライは交互に視線を送っている。


「いろいろ心配かけちゃって……ライも忙しいのに」

「とーさま、ごめんなさい!」


 しおらしく俯くと、ライは焦ったような素振りを見せた。

 ……クレイの言っていたとおりだ。

 低姿勢な態度をとると、頭ごなしに怒れず戸惑ってしまうと教えられた。

 そこをうまく使いなさいよ?というのもクレイのお言葉。

 い、いや!ちゃんと反省はしているけどね!


「……別に怒っていない。もういいから、顔を上げろ」

「本当?」


 ああ、と少し気まずいように視線を逸らした。というか照れてる?

 照れているのを隠すためかユーリを抱き上げて、ベッドに近づく。

 突然抱っこされて不思議そうだけど、次にはユーリは嬉しそうな表情。


「今日は三人で寝るんだろう?」

「とーさま!」


 ユーリを真ん中にして、その横に私とライが横たわる。

 まさに親子川の字だ。

 こうしてみると、やっぱりライって父親なんだな。

 正直、子供いなさそうな雰囲気もあったんだよね。だからユーリの存在には驚いたのなんの……。

 ゆっくりと優しく、ライがユーリの黒い髪をなでる。

 ユーリは片手ずつで、私とライの服の裾を握ったまま瞼を閉じた。

 まだどこかで不安なんだろう。そっとその手を握った。


「……今日は戻ってこないかと思った」

「なんでだ。ここは俺の部屋だと言っただろう」


 ぽつりと出た言葉に、少しだけ不機嫌そうにライは返す。

 勿論、寝ているユーリが起きないように小声で。


「ね、ぶっちゃけさ、他の女の人のところに行こうなんて思わなかったの?」

「なんだ、ぶっちゃけというのは……というか俺の妃はお前だけだと言っているだろう?」


 わあ、今度は不機嫌そうだけではなく若干怒っている。

 びしびしと怒りの波動が……ライはオーラでも操れるのだろうか?

 さすが王様……ゴメンナサイ。


「い、いやだってさー、私ってかなり平凡だし?」


 正直、本当に恋愛結婚なのか気になったけど聞けなかった。

 アニーは大恋愛の末に結ばれたとか言っていたけど、それどこのロマンス小説ですかって感じだし。

 具体的なことは何一つ教えてくれないし。

 いまいち信じられないんだよね。

 それに、ほかの女の人のところにも行くチャンスだけど遠慮してたりしていたらどうしようもないし……。


「そうか?なら思い知らせてやろうか?」


 え、と返す暇なく、突然紫の色が目の前に迫った。

 ああ、ライの瞳の色とユーリの瞳の色は一緒だと気付く。

 そして、ふっと唇に吐息を感じた瞬間、唇が触れそうだと理解する。

 誰と、だれの?


 ……って、ぅうわああああぁぁぁっ!! 


 その時の私の行動は素早かった。見事と褒めたたえたいほど素早かった。

 忍者顔負けの回避行動で、私の世界は回った。

 回ったというのは揶揄ではなく物理的に回ったのだ。

 ええ、あの無駄に広いベッドから転がり落ちましたとも。


「ちょ、な、き、きき」

「大丈夫か?ちゃんと言葉を話せ。ほら」

 

 元凶であるライがベッドから降りて手を差し出す。

 なんだか恥ずかしいのか危険を感じてなのか、その手を取れずにいるとライは抱き起してベッドの端に座らせた。

 その表情は……笑っている。それはそれはおかしいそうに。

 なんかすっげえムカつく!睨みつけるけど益々笑うライ。

 どーせ、私の顔は真っ赤ですよ!言っておくけど、ファーストキスもまだの純真な16歳なんだぞ!


「悪かった。変なことはしない」

「まったくだよ!」

「だが夫婦なんだからこっちのほうも少し慣れろ」


 目の前に立っているライは自然に屈んで、おでこに触れた。

 手とかではない、おでこの柔らかなこの感触は唇だ。

 先ほど触れそこなった、あれ。


「ライ!」

「ユーリが起きる。ほら、寝ろ」


 ライは悪びれる様子もなく、また同じ場所に戻った。

 うー、納得いかない、非常に納得いかないけれど、私も同じ場所に戻る。

 今後ライが近づいたら気をつけようという決意とともに。

 目の前のライはほんのり上機嫌で瞼を閉じた。

 こっちは心臓があばれているんだけど!誰のせいだよ!

 睨んで抗議するも、ユーリが起きてしまいそうだから何も言わない。

 今日寝れるかな……そう思いながら私も瞼を下した。




 でも不思議と嫌な思いはなくて。

 それどころか、なんだか幸せに満ちた夢をみたような気がした。

 



少し甘めを目指して失敗しました。

いきなり変な展開で申し訳ないです。


次は私事都合によりもっと空いてしまいそうです。

ですがよろしければ次回もお願いいたします。

お読みいただきましてあがとうございました!

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