肆:死霊の荒野(キリング・フィールド)
死の騎士たちが放つ絶望のオーラが六人を呑み込もうとしたその時、マルクスが天に向けて両手を突き上げました。
「光よ、大地を洗い流す慈悲の雨となれ……! ホーリーバレット・レイン!」
マルクスの叫びと共に、どす黒い雲を突き破って、数千、数万という黄金の光弾が空から降り注ぎました。それは文字通りの土砂降り。戦場全体を白銀の輝きで塗り潰す光の雨は、デュラハンやデスナイトたちの漆黒の鎧を焼き、彼らが纏う死の魔力を強制的に剥ぎ取っていきます。
「ぎ、ぎぃぃ……っ!」
沈黙を守っていた死の騎士たちが、聖なる豪雨に打たれ、苦悶の声を上げながら弱体化していきます。その光景を目の当たりにしたカタリナたちの内に、マルクスの魔力と共鳴する新たな力が奔流となって溢れ出しました。
「……見える、光の道筋が……。私たちにも、できる!」
カタリナが叫び、五人の美女たちが同時に覚醒しました。マルクスから受け取った魔導の知識と、死線を越えた経験が結びつき、彼女たちの手からも黄金の光が放たれます。
「ヒールバレット! 皆の疲れを吹き飛ばして!」
デニーゼが放つ癒やしの弾丸が、雨のように降り注ぎ仲間たちの活力を極限まで高めます。
「不浄なる存在よ、霧散しなさい! ピュリフィケーションバレット!」
ドロテアとカタリナが放つ浄化の連射が、デスナイトの赤黒いオーラを次々と掻き消していきます。
「仕上げよ……ホーリーバレット!」
ベッティーナ、マティルデ、そしてエリザベスまでもが、武器に宿した聖なる光を弾丸として撃ち出しました。
パーティー全員が光魔法に覚醒し、戦場は完全に黄金の輝きに支配されました。マルクスの「ホーリーバレット・レイン」が敵の防御をズタズタに引き裂き、そこへ五人の覚醒した光魔法が容赦なく叩き込まれます。
「……皆さん、素晴らしいです! そのまま一気に押し切りましょう!」
170cm、60kg。光の雨に打たれながら微笑むマルクスの姿は、もはや一人の冒険者ではなく、神の加護を授ける導き手のように見えました。
死の騎士たちは、かつての圧倒的な威圧感を失い、光の奔流の中でその存在を維持できず、一人、また一人と塵に還っていきます。絶望の古戦場は今、マルクスと覚醒した彼女たちが放つ、圧倒的な希望の光によって塗り替えられようとしていました。
空から降り注ぐ黄金の豪雨「ホーリーバレット・レイン」と、覚醒した五人の光魔法による凄まじい連射。その圧倒的な浄化の奔流を前に、死の軍勢はもはや抗う術を持ちませんでした。
「……不浄なる魂に、安らぎを」
マルクスの静かな先導に合わせ、カタリナたちの放つ「ホーリーバレット」が弱体化したデスナイトの胸部を次々と貫きます。聖なる光が鎧の隙間から溢れ出し、漆黒の騎士たちは断末魔の叫びを上げることすら許されず、内側から崩壊して白銀の塵へと変わっていきました。三体のデュラハンもまた、逃れようのない光の雨に打たれ、その核となる怨念を完全に浄化されて霧散しました。
しかし、戦場に静寂が戻った直後、マルクスは消え残る魔力の糸が、地面の亀裂から地下深くへと伸びているのを見逃しませんでした。
「……皆さん、まだ終わっていないようです。この下に、さらに巨大な魔力の源があります。行きましょう」
マルクスの言葉に、カタリナたちは表情を引き締め、彼に続きます。崩落した石塔の基部をマルクスが土魔法で静かに動かすと、そこには古びた螺旋階段が暗い口を開けていました。
一行が慎重に階段を降りた先にあったのは、不気味な青い炎が揺らめく地下の祭壇でした。壁一面には失われた古代の文字が刻まれ、中央の祭壇には、禍々しくも美しい、脈動するような巨大な魔石が鎮座していました。
だが、その魔石を回収しようとした瞬間、祭壇の奥から凍てつくような冷気と共に、真の絶望が這い出してきました。
「……愚かな。我が眠りを妨げ、祭壇の魔力を奪おうとするか」
闇の帳を切り裂いて現れたのは、ボロボロの法衣を纏い、空眼窩に青白い魂の炎を宿した不死の王――リッチでした。その手に握られた髑髏の杖が放つ威圧感は、先ほどのデュラハンたちとは比較になりません。
「……皆さん、下がってください! こいつは格が違います!」
マルクスが叫ぶと同時に、リッチが杖を一振りしました。瞬間、絶対零度の吹雪が祭壇を吹き荒れ、覚醒したばかりのカタリナたちの光の障壁を紙細工のように粉砕しました。
「くっ、光魔法が……通じない!? それどころか、魔力が吸い取られて……っ!」
カタリナが弓を構えようとしますが、リッチが放つ「絶望の権能」によって指先が凍りつき、力が入りません。マティルデの剣も、ベッティーナの盾も、リッチが展開した高密度の闇の結界に触れただけで腐食を始めました。170cm前後の豊かな肢体を誇る彼女たちが、恐怖と寒さで膝をつき、呼吸を乱します。
「……はぁ、はぁ……。属性魔法の連射だけじゃ、この結界は抜けないか……」
マルクスは170cmの体を震わせながらも、リッチの瞳を真っ向から見据えました。死霊王の強大な魔力によって、彼の周囲の空気さえも凍りついています。かつてない苦戦。マルクスは絶望の淵で、さらなる魔導の深淵へと手を伸ばします。
地下祭壇の冷気に支配され、リッチの放つ絶望に膝をつきかけていたカタリナたち。しかし、その中心で立ち尽くすマルクスの背中から、かつてないほど濃密で清らかな魔力の波動が立ち昇りました。
「……皆さん、僕を信じてください。一人一人の光が小さくても、重なり合えば太陽にだってなれる。僕が道を作ります……光を、天へ!」
マルクスの凛とした声が響き、彼は自身の全魔力を、魔法に覚醒した五人の仲間たちへと繋ぎました。その瞬間、彼女たちの内に眠っていた光の力が、マルクスの膨大な魔力を触媒にして一気に爆発しました。
「「「「「ホーリーバレット・レイン!!」」」」」
六人の叫びが地下祭壇に木霊しました。マルクスが起点となり、全員の魔力を束ねて一斉に天へと放たれた光は、祭壇の天井を突き破り、そのまま光の雨の土砂降りとなってリッチの頭上へと降り注ぎました。
「な、何だと……!? 不浄を焼く雨だと……が、あああああ!!」
リッチが展開していた絶対零度の結界も、魂を削る死の霧も、天から降り注ぐ無数の黄金弾によって瞬時に浄化され、霧散していきます。それはもはや魔法というより、天罰に近い光景でした。数千、数万というホーリーバレットが、逃げ場のない地下空間を白銀の輝きで埋め尽くし、リッチの古びた法衣を焼き、骨の髄まで聖なる炎で浄化していきます。
カタリナ、ベッティーナ、マティルデ、ドロテア、デニーゼ。170cm前後の豊かな肢体を誇る彼女たちは、マルクスの導きに従い、一心不乱に光の雨を降らせ続けました。
「これなら……いける! 押し潰せ!!」
カタリナの叫びと共に、光の土砂降りはさらに勢いを増しました。リッチが放とうとした禁忌の死霊魔術は、発動する間もなく浄化の雨に叩き落とされ、その存在そのものが世界から否定されるように薄れていきます。
「おのれ……この私が……このような温かな光に……っ!」
断末魔の叫びと共に、リッチの体は光の粒となって完全に崩壊しました。彼が握っていた髑髏の杖も、砕け散って塵へと還ります。
降り注いでいた黄金の雨が止み、祭壇に静寂が戻った時、そこには一点の闇も残っていませんでした。カタリナたちは荒い息をつき、汗で肌に張り付いた衣服越しに、その豊かな胸を上下させています。
「……皆さん、お疲れ様。最高の連携でしたね」
170cm、60kg。光の残滓の中で穏やかに微笑むマルクスの姿を、仲間たちは恍惚とした表情で見つめていました。死の王さえも圧倒したその「光の雨」は、彼女たちの心に、マルクスへの決して消えることのない深い愛と忠誠を刻みつけたのです。
祭壇の中央には、浄化されたことで真の輝きを取り戻した、巨大な魔石だけが静かに鎮座していました。
リッチが光の塵となって消え去り、地下祭壇を支配していた凍てつくような死の気配が霧散しました。マルクスは一息つくと、視線を祭壇の隅々にまで巡らせました。
「皆さん、ここにある魔力の結晶をすべて回収しましょう。そして、地上に残されたものも一欠片も残さずに」
マルクスの指示に従い、カタリナたちは動き出しました。リッチとの激闘の跡地には、あの巨大な中心核だけでなく、壁や床に埋もれていた数多の高品質な魔石が、浄化の余韻を受けて静かに輝いていました。
「……すごい数ね。地上の分と合わせたら、ギルドがまたパニックになるわ」
カタリナが驚嘆の声を上げながら、アイテムボックスに次々と魔石を納めていきます。170cm前後の豊満な肢体を躍動させ、ベッティーナやマティルデも瓦礫の隙間に落ちた結晶を丁寧に拾い集めていきました。
地下祭壇での回収を終えた一行は、再び螺旋階段を上り、月明かりの差す地上の古戦場へと戻りました。そこには、先ほど殲滅したデュラハンやデスナイト、そして数多の亡霊騎士たちが遺した、膨大な数の魔石が星を撒いたように転がっていました。
「さあ、仕上げです」
マルクスは170cmの体を静かに真っ直ぐに保ち、両手を大きく広げました。アイテムボックスの空間を拡張し、半径数百メートルに散らばる魔石をすべて回収していきます。虚空に吸い込まれるように集まった魔石は、マルクスの足元に巨大な黄金の山を築き上げました。
しかし、それらの魔石にはまだ微かに、死霊たちの怨念や瘴気が付着し、どす黒い影を落としています。
「汚れたままでは、本当の輝きは引き出せません。……一気に清めます」
マルクスが指先を山のように積まれた魔石へと向けました。
「ピュリフィケーションバレット。連射」
放たれたのは、先ほどまでの攻撃的な光ではありません。すべての汚れを洗い流す、慈愛に満ちた浄化の奔流。マルクスの指先から絶え間なく放たれる光の弾丸が、山をなす魔石の一つひとつに正確に着弾し、内部に潜むわずかな穢れさえも根こそぎ焼き払っていきます。
チリチリと不浄な煤が弾け飛び、黄金の光が弾丸の雨となって降り注ぐたび、魔石の山は内側から透き通るような純粋な輝きを放ち始めました。
「……なんて綺麗なの。まるで夜空の星を全部集めて、磨き上げたみたい」
ドロテアがその美しさに目を細め、エリザベスもまた、マルクスの圧倒的な魔力操作と、その徹底した「浄化」の姿勢に深い敬意を抱かずにはいられませんでした。
すべての魔石が一点の曇りもない透明な結晶へと変わり、戦場だった場所は、今や聖域のような清廉な空気に満たされています。マルクスは満足そうに頷くと、浄化された最高品質の魔石の山を、自らのアイテムボックスへと静かに仕舞い込みました。
「これで、ここも本当の意味で眠りにつけますね。……さあ、帰りましょう。王都で温かいお風呂が待っていますよ」
170cm、60kg。戦いを終えてなお、一点の乱れもない穏やかな笑みを浮かべるマルクスに、六人の美女たちは寄り添うように歩き出しました。
翌朝、マルクスたちは王都の冒険者ギルドへと向かいました。アイテムボックスから取り出されたのは、昨夜の戦場で回収し、マルクスが一点の曇りもなく浄化し尽くした膨大な数の魔石です。
「……こ、これは……!? 鑑定眼が壊れたのか……? これほどの高純度、見たことがない!」
ギルドのカウンター裏から飛び出してきた鑑定士は、椅子から転げ落ちんばかりに絶句しました。特にリッチから回収した巨大な中心核と、地下祭壇の秘宝である伝説級の大魔石がカウンターに並べられると、ギルド内は静まり返り、他の冒険者たちはその神々しい輝きに目を焼かれて息を呑みました。
「すべて昨夜の討伐で得たものです。回収した魔石をギルドに売る手続きをお願いします。適正な評価をお願いしたいので、価格見積書も出してください」
マルクスが穏やかに告げると、ギルド長が冷汗を流しながら自ら査定を開始しました。数時間後、震える手で差し出された見積書には、王国の国家予算を軽々と揺るがす驚愕の数字が並んでいました。
【冒険者ギルド・王都本部 最終買取価格見積書】
・地下祭壇 秘宝大魔石(神話級・完全浄化): 2,500,000,000 G
・死霊王の中心核魔石: 1,200,000,000 G
・デュラハン・デスナイト魔石(8個): 800,000,000 G
・戦場回収 高純度魔石(数千個・全浄化): 500,000,000 G
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総合計: 5,000,000,000 G
(※日本円換算:約500億円相当)
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「……五億、ではなく五兆……いえ、五千万……五、五十億ゴールドですか。妥当な査定ですね、ありがとうございます」
マルクスが淡々とその結果を受け入れる横で、カタリナたちは「ご、五十億……?」と、もはや現実味のない数字に意識が遠のきそうになっていました。
ギルドを出た後、一行は王都の喧騒から少し離れた場所で足を止めました。そこには、昨夜マルクスに命を救われ、共に戦った聖騎士団分隊長、エリザベスの姿がありました。
「エリザベスさん。傷の具合はどうですか?」
マルクスが尋ねると、エリザベスは175cmの長身を正し、深紅の髪を揺らしながらマルクスの前に跪きました。
「傷は、あなたの光のおかげで跡形もありません。……マルクス様、私は騎士団へ戻り、正式に辞職して参りました。私の剣が守るべきは、あなたという光そのものであると悟ったのです。どうか、私をあなたの仲間に加えてください」
マルクスは少し困ったように微笑みましたが、彼女の真っ直ぐな意志を感じ取ると、優しくその手を取りました。こうして、エリザベスを仲間に加え、五百億円相当の軍資金を手にしたマルクスのパーティーは、王都の勢力図を根底から塗り替える存在となりました。
五十億ゴールドという空前絶後の報酬を得た翌晩、マルクスの屋敷では新メンバーであるエリザベスの歓迎会が催されました。デニーゼが腕によりをかけた豪華な料理が並び、最高級のワインがグラスを満たします。
「マルクス様、改めて感謝を。この命、今日からは貴方のために捧げます」
上気した顔でそう告げるエリザベスは、いつもの白銀の甲冑を脱ぎ捨て、背中が大きく開いた深紅のドレスを纏っていました。175cmのモデルのような長身、鍛え上げられつつも女性らしい曲線を描く肢体は、ドレス越しでも圧倒的な存在感を放っています。
宴もたけなわとなった頃、エリザベスはナチュラルにマルクスを誘惑し始めました。彼女に邪な意図はなく、あくまで命の恩人への純粋な親愛と、騎士としての忠誠心が、その苛烈なまでの美貌と相まって過剰な色気となって溢れ出してしまったのです。
「マルクス様、少し喉が渇きませんか? 私のグラスから……いかがです?」
エリザベスは170cmのマルクスの隣に滑り込むように座ると、自らの豊満な胸元を押し当てるようにして距離を詰めました。彼女の長い指先が、マルクスの髪を愛おしそうに撫で、耳元で甘い吐息を漏らします。
「貴方の光に触れた時から、私の心はずっと熱いままなのです。……今夜は、騎士としてではなく、一人の女として貴方のお話を伺いたい」
至近距離で見つめるエリザベスの濡れた瞳。その情熱的なアプローチにマルクスが困惑していると、背後から氷点下を突き抜けるような冷気が漂ってきました。
「……あら、エリザベスさん? 歓迎会は『みんな』で楽しむものじゃなかったかしら?」
カタリナが、引きつった笑みを浮かべながら弓を持たない手でマルクスの肩を掴みました。それを合図に、他の四人も一斉に詰め寄ります。
「そうよ。マルクス君は私たちのリーダーなんだから、独り占めは禁止!」
マティルデが不機嫌そうに唇を尖らせ、ベッティーナがその巨躯を活かしてエリザベスとの間に割り込もうとします。
「癒やしが必要なら、私の方が得意です! マルクス様、こちらへ!」
デニーゼがマルクスの反対側の腕を抱きしめ、ドロテアも「魔法の理論構築には静かな環境が必要ですわ」とエリザベスを牽制しました。
マルクスを巡る、覚醒した五人の美女と、新参の美女騎士による激しいバッティング。170cm、60kgのマルクスは、左右から押し寄せる柔らかな感触と、火花を散らす視線の応酬の板挟みになり、リッチとの死闘以上に冷や汗を流していました。
「皆さん、落ち着いてください……料理が冷めてしまいますから」
マルクスの穏やかな制止も、恋の戦場と化した食堂では空しく響くだけでした。五十億の富と、最強の布陣。しかし、マルクスの屋敷に平穏な夜が訪れるのは、まだまだ先のことになりそうでした。
歓迎会の喧騒から一夜明け、マルクスの屋敷にある広大な訓練場には、緊張感漂う空気が流れていました。マルクスは、新たに仲間となったエリザベスを正面に見据えます。
「エリザベスさん、貴女には騎士としての卓越した技量がありますが、これからの戦いには『力』の底上げが必要です。僕の魔力をパスとして、僕が持つ知識と権能の一部を貴女に転送します」
マルクスがエリザベスの額にそっと指先を触れると、黄金の光が彼女の全身を包み込みました。膨大な情報の奔流が彼女の脳内を駆け巡ります。
「……っ、これは……! 空間が、私の意思と繋がっている……?」
エリザベスは驚愕に目を見開きました。彼女の脳裏には、無限の広がりを持つアイテムボックスの概念と、マルクスが操る全属性の魔法理論が完璧な形で刻み込まれていました。マルクスの驚異的な魔導演算能力によって、彼女は本来なら一生をかけても到達できない魔導の真理を一瞬にして「授けられた」のです。
「これで準備は整いました。皆さん、今日は六人で修行を行います。一人ひとりの限界を超えてください」
170cmのマルクスを中心に、カタリナ、ベッティーナ、マティルデ、ドロテア、デニーゼ、そしてエリザベスが円陣を組みました。
「まずは身体強化と魔法の同時発動です。……いきますよ!」
マルクスの合図で、訓練場は魔力の激突による閃光に包まれました。
新たに魔法を授かったエリザベスは、愛剣に光と火の複合魔法を纏わせ、疾風のごとき踏み込みを見せます。その速度は以前の数倍。彼女はアイテムボックスから次々と魔石を取り出し、自らの魔力を補填しながら、覚醒した「ホーリーバレット」を連射しました。
「負けてられないわね! 空間固定、マルチロック……射貫け!」
カタリナが空中に魔法の矢を固定し、一斉に放つ新技術を披露すれば、ベッティーナは「マッスル」と土魔法を融合させた絶対防御の城壁を築き上げます。
マティルデは重力を操る魔法で自身の剣の重さを変幻自在に操り、ドロテアとデニーゼは後方から「ピュリフィケーション」と「ヒール」の弾丸を雨あられと降らせ、仲間のコンディションを常に最高潮に保ちます。
マルクスは六人の魔力循環を一手に見守りながら、時には自ら「ホーリーバレット・レイン」を放って高い負荷を与え、彼女たちの対応力を磨き上げました。170cm、60kgの細身ながら、六人の美女たちの全力攻撃を片手で受け流し、的確な助言を与える彼の姿は、まさに魔導の深淵を歩む者のそれでした。
「もっと、もっと高く! 皆さんの魔力は、まだそんなものではないはずです!」
夕暮れ時、訓練場に立っていたのは、汗にまみれ、衣服を乱しながらも、かつてない万能感に満ち溢れた六人の美女たちでした。全員がアイテムボックスを使いこなし、全属性の魔法を自在に操る「魔法騎士」へと変貌を遂げたのです。
「……マルクス様、ありがとうございます。この力、貴方のための盾として使いこなしてみせます」
エリザベスが、ドレスから着替えた訓練着を肌に張り付かせ、荒い息をつきながらも艶やかな笑みを浮かべました。最強の個が集まり、マルクスという核によって繋がった。王都を、そして世界を揺るがす「最強のパーティー」が、ここに完成したのでした。
修行を終え、茜色に染まった訓練場に静寂が訪れました。心地よい疲労感の中、カタリナ、ベッティーナ、マティルデ、ドロテア、デニーゼ、そしてエリザベスの六人は、示し合わせたようにマルクスの前に並び立ちました。
夕日に照らされた彼女たちの肌は、修行の余韻で上気し、黄金の粒子が淡く輝いています。170cm前後の豊かな肢体を誇る美女たちが一斉に向ける真剣な眼差しに、170cm、60kgのマルクスは、リッチとの死闘の時さえ感じなかった強烈なプレッシャーを感じていました。
「……マルクス君。私たちは、貴方に救われ、力を与えられ、ここまで歩んできたわ」
カタリナが、一歩前に出て口を開きました。その瞳には、かつてない決意の光が宿っています。
「最初は、ただの仲間として、あるいは魔法の師として見ていたかもしれない。でも、今は違うの。……私は、貴方の隣を歩む一人の女として、貴方を愛しているわ」
それを合図に、堰を切ったように告白の言葉が溢れ出しました。
「マルクス様、私のこの命も、鍛え上げたこの体も、すべて貴方のものです。どうか、私をただの盾ではなく、貴方の伴侶として側に置いてください!」
ベッティーナがその豊かな胸に手を当てて訴えれば、マティルデも「私は、マルクスがいない世界なんて考えられない。一生、私を甘やかして、守らせて!」と情熱的に叫びます。
ドロテアは知的な瞳を潤ませ「貴方の魔導の深淵と共に、私の人生を共に歩ませていただきたいのです」と告げ、デニーゼも「毎日、貴方の健康と幸せを一番近くで支えたい……それが私の願いです」と控えめながらも力強く微笑みました。
最後に、深紅の髪を揺らしてエリザベスがマルクスの前に跪きました。彼女はアイテムボックスから一輪の、魔力で生成した枯れない薔薇を取り出し、彼に捧げます。
「マルクス様。私は騎士団を捨て、貴方の剣となりました。ですが、それは義務ではありません。私の魂が、貴方という光に焦がれ、求めているからです。……私は、貴方を愛しています。この愛に、身分も立場も関係ありません」
六人の美女たちによる、魂を削り出すような一斉の告白。
彼女たちの想いは、修行で高められた魔力と共鳴し、訓練場全体を温かな桃色の輝きで包み込んでいきました。
マルクスは、あまりにも純粋で重い彼女たちの愛に、言葉を失いました。彼は一人ひとりの瞳を真っ直ぐに見つめ返し、その熱量を受け止めます。
「……皆さん、ありがとうございます。僕は……」
170cmの青年は、少しだけ照れたように、しかしこれまでにないほど凛とした表情で、彼女たちの想いへの答えを紡ぎ始めようとしていました。黄昏の光の中で、六人と一人の運命が、今まさに真の意味で一つに重なろうとしていました。
夕日に染まった訓練場に、六人の美女たちの熱い想いが充満していました。カタリナたちの切実な眼差し、そして跪くエリザベスの捧げた薔薇。そのすべてを受け止めたマルクスは、深く、静かに息を吐きました。
170cm、60kg。その細身の体から放たれる魔力は、どこまでも穏やかで、しかし一点の曇りもない透明な壁のように彼女たちの熱狂を優しく押し返しました。
「皆さん、ありがとうございます。僕にそれほどまでの想いを寄せてくれたこと、心から光栄に思います」
マルクスは一人ひとりの瞳を真っ直ぐに見つめ返し、誠実な、しかし断固とした口調で言葉を続けました。
「ですが、お応えすることはできません。……僕は皆さんのことを、かけがえのない大切な仲間だと思っています。生死を共にし、同じ理想を掲げて歩む、家族以上の絆を感じています。だからこそ、そこに特定の恋愛感情を持ち込むことはできないんです」
その言葉が放たれた瞬間、訓練場の空気が凍りついたように静まり返りました。カタリナの弓を引く指先が微かに震え、マティルデの大きな瞳に涙が溜まります。エリザベスは捧げた薔薇を持ったまま、石像のように固まりました。
「恋愛という形になれば、いつか独占や嫉妬が生まれ、僕たちのこの完璧な連携は崩れてしまうかもしれない。僕は、皆さんと対等な立場で、世界の深淵を覗き、共に成長していきたいんです。誰か一人のものになることも、皆さんを序列で分けることも、僕にはできません」
マルクスは一歩踏み出し、跪くエリザベスの肩に優しく手を置きました。
「エリザベスさん、貴女の剣は僕を救い、僕の光は貴女を癒やしました。それは愛という言葉よりもずっと高く、純粋な『信頼』です。カタリナさん、デニーゼさん、皆さん。僕は皆さんと共に戦い、笑い、明日を迎えるこの関係を、何よりも守りたい。……恋愛感情ではなく、もっと強固な、魂の共鳴者として側にいてほしいんです」
170cmの青年が放つその言葉には、一切の迷いも、妥協もありませんでした。あまりにも誠実で、あまりにも残酷な「拒絶」。しかし、それは彼女たちを突き放すものではなく、むしろ「永遠の仲間」として繋ぎ止めるための、彼なりの究極の誠意でした。
「……そっか。マルクス君らしいわね」
沈黙を破ったのはカタリナでした。彼女は苦笑いしながら、溢れそうになった涙を指で拭いました。
「『仲間だから』っていうのが、貴方の最大の防御魔法なわけね。……分かったわ。今は、その言葉を受け入れる。でも、私たちが貴方を想い続けるのは自由でしょ?」
「ええ、それは止められません。ですが、僕の答えが変わることもありませんよ」
マルクスは穏やかに微笑みました。マティルデやベッティーナも、納得いかない表情を見せつつも、彼の揺るぎない「聖域」を前に、今は矛を収めるしかありませんでした。
告白という嵐が過ぎ去った訓練場で、七人の絆は「恋愛」という枠を超え、より抽象的で、より強固な、定義不能な集団へと昇華されました。夕闇が迫る中、マルクスを中心に歩き出した彼女たちの背中は、失恋の痛みよりも、彼と共に歩む未来への確信に満ちていました。
マルクスの屋敷が朝露に濡れる頃、王都の地を揺らす軍靴の音が響き渡りました。
「反逆者マルクス! 聖騎士分隊長エリザベスを不当に拘束し、魔導で洗脳した罪により、これより身柄を拘束する!」
門前に現れたのは、重装歩兵と騎兵からなる騎士団五百名の制圧部隊でした。その先頭に立つ副団長が剣を抜き放ちますが、屋敷の玄関先に立っていたのは、欠伸を噛み殺しながら弓を手にしたカタリナ一人だけでした。
「……五百人も連れてきて、朝から騒々しいわね。マルクス君は今、朝食のあとの読書中なの。邪魔しないでくれる?」
170cmのしなやかな肢体を誇るカタリナは、マルクスに授けられた知識とアイテムボックスから、浄化された最高品質の魔石を一つ、指先で弄びました。
「エリザベスを引き渡せ! 貴様らのような下賎な冒険者に、王国の至宝たる騎士を置く資格はない!」
副団長の号令と共に、五百人の騎士が一斉に突撃を開始しました。しかし、カタリナの瞳に宿ったのは、恐怖ではなく底冷えするような落胆でした。
「資格、ね。……皆に魔法を教えてくれたマルクス君の足元にも及ばない連中が、よく言うわ。いいわ、少しだけ教育してあげる。……『弱すぎる』っていうのがどういうことか、その身で知りなさい」
カタリナが弓を引き絞ると、指先に黄金の光が収束しました。彼女はマルクスから授かった全属性魔法のうち、風と光を極限まで圧縮し、空中に固定された千本の「魔法の矢」を生成しました。
「ホーリーバレット・マルチロック……一斉掃射!」
放たれたのは矢ではなく、光の暴力でした。空を埋め尽くした千の光弾は、突撃する五百人の騎士一人ひとりの「武器」と「膝」だけを正確に、寸分違わず撃ち抜きました。
「ぎ、あああああ!?」「私の剣が……!」「脚が……動かん!」
たった一射。
わずか数秒で、王国の精鋭五百名は地面に這いつくばり、武器を砕かれ、戦意を喪失しました。カタリナは悠然と彼らの間を歩き、震える副団長の喉元に、実体化した光の矢を突きつけました。
「これが現実よ。あなたたちは自分たちの型に固執して、魔導の真理に触れようともしなかった。騎士団のプライド? そんなもの、マルクス君が教えてくれた『効率』の前ではゴミ同然よ。……あんまり弱すぎて、教育にもならないわね」
カタリナの冷徹な言葉は、物理的な傷以上に騎士たちの心をへし折りました。彼女はアイテムボックスから「ピュリフィケーション(精製)」された水を出し、無造作に副団長の頭から浴びせかけます。
「頭を冷やして帰りなさい。次にここへ来るときは、せめて一分間は持ちこたえられるようになってからにすることね」
かつて王国の盾と謳われた五百の軍勢は、たった一人の女性冒険者によって返り討ちにされ、完膚なきまでに叩き伏せられました。
屋敷の窓からその光景を眺めていたエリザベスは、かつての同僚たちの無様な姿に溜息をつき、隣で静かに紅茶を飲むマルクスを、改めて畏敬の念を込めて見つめました。
「……カタリナ、少しやりすぎですよ」
「あら、マルクス君。害虫駆除にはこれくらい必要でしょ?」
マルクスの穏やかな苦言に、カタリナは先ほどの冷酷さが嘘のような、恋する乙女の顔で微笑んで見せました。




