参:暴利(プロフィット)
ワイバーンを退けた後の数日間、マルクスは旅を続けながら、パーティーの五人に自らが体得した魔法の全てを伝授することにしました。彼女たちの元々の素質に加え、マルクスの膨大な魔力による直接的な導きは、驚異的な速度で彼女たちの能力を開花させていきました。
「魔法は特別な才能じゃありません。魔力の流れを知り、現象を正しくイメージする技術なんです。さあ、次はバレットの制御ですよ」
街道の傍らに設けた即席の訓練場で、マルクスの丁寧な指導が響きます。カタリナたちは、マルクスから教わった各種バレット――水、氷、熱湯、蒸気、そして光の弾丸を、それぞれの得意分野に合わせて習得していきました。
「すごいわ、マルクス君! このアイスバレット、矢よりも速くて正確に飛んでいく!」
カタリナが豊満な胸を躍らせて喜べば、魔法使いのドロテアも、複数の属性を使い分ける感覚に目を輝かせていました。
さらにマルクスは、身体機能を直接的に向上させる独自の強化魔法も伝授しました。
「ベッティーナさん、マティルデさん。重い装備を自在に操るために、魔力を筋肉へ流し込む**筋肉強化を意識してください。そして全員、移動や回避の瞬間には、魔力を爆発的に加速のエネルギーへ変える身体強化**を」
マルクスの合図で、五人が一斉に動き出しました。
「アクセル!」
カタリナの体が風を切り裂くような速度で平原を駆け抜け、マティルデの振るう剣はマッスルによって岩をも両断する威力を宿します。重装備のベッティーナですら、まるで羽が生えたかのように軽やかに跳躍し、大盾で空気を叩き割りました。
「……信じられない。体の中が魔力で満たされて、自分が自分じゃないみたいに強くなった気がするわ」
ベッティーナが汗を拭いながら、172cmの長身をしならせて微笑みます。彼女たちの鍛え上げられた巨乳、巨尻の肢体には、今やマルクス譲りの高密度の魔力が常に循環しており、その存在感は一国の精鋭騎士団を凌駕するほどになっていました。
「皆さんのセンスがいいからですよ。これで、どんな困難も乗り越えられますね」
マルクスは170cm、60kgの控えめな立ち姿で、満足そうに頷きました。彼は決して偉ぶることなく、五人の美女たちの成長を対等な仲間として見守っていました。
知識を独占せず、惜しみなく与える。マルクスのその献身的な姿勢に、彼女たちは改めて深い敬意と、隠しきれない憧憬を募らせていきます。各種バレットによる遠距離攻撃、アクセルによる機動力、マッスルによる近接破壊力。
「最強のパーティー」の雛形は、王都を目前にして、ついにその完成を見ようとしていました。
王都への旅路は、もはや単なる移動ではなく、かつてないほど密度の濃い「合宿」へと変貌していました。マルクスは、パーティーの利便性と自立を考え、自ら開発した技術の中でも特に希少なアイテムボックスを全員に授けることにしました。
「空間そのものを折り畳むイメージです。皆さんの魔力なら、自分専用の保管庫を維持するのは難しくありませんよ」
マルクスは一人ひとりの手を取り、魔力の回し方を丁寧に伝えていきました。カタリナたちが虚空を撫で、自分たちの持ち物が闇に吸い込まれ、そして自在に取り出せるようになるたび、野営地には少女のような歓声が上がりました。これで、彼女たちの豊かな肢体を縛り付けていた重い荷物から解放され、より自由な戦闘が可能になったのです。
それからの数日間、一行は街道を外れて森や荒野を巡り、しばらく狩りを続けました。
ターゲットは、以前なら避けて通ったような大型の魔獣たち。ですが、各種バレットと身体強化「アクセル」「マッスル」を使いこなす彼女たちにとって、それらはもはや脅威ではありませんでした。
「皆さん、仕留めた後の処理も大切です。素材の価値は、魔法をどう使うかで決まるんですよ」
狩りの後、マルクスは自ら実践しながら解体も教えることにしました。
「ナイフで力任せに切るのではなく、薄い水の刃――水魔法の応用で、肉と皮の境界を滑らせるように……。そう、それが『魔法解体』です」
カタリナやベッティーナたちは、マルクスの手元を真剣に見つめ、見よう見まねで魔法の刃を形成します。170cm前後の長身で、巨乳・巨尻という抜群のスタイルを持つ五人の美女たちが、返り血一つ浴びずに巨大な魔獣を鮮やかに捌いていく光景は、どこか神秘的ですらありました。
「すごいわ、マルクス君! 魔法を使えば、こんなに綺麗に魔石が取り出せるなんて……」
回復士のデニーゼが、ボアの体内から傷一つない藍色の魔石を取り出し、感嘆の声を上げます。
「はい、完璧です。デニーゼさん、筋がいいですね」
マルクスは微笑み、優しく彼女たちの成長を肯定しました。
数日の狩りを終える頃には、彼女たち全員のアイテムボックスには、魔法解体によって得られた最高品質の素材と、数えきれないほどの魔石が詰め込まれていました。マルクスの魔力導調を日常的に受けた彼女たちの体は、内側から溢れる魔力によって肌に艶が増し、その立ち姿には歴戦の強者だけが持つ静かな威圧感が備わっています。
「知識も、力も、そしてこの便利な空間も……。マルクス君、君にどれだけ感謝すればいいのかしら」
リーダーのカタリナが、汗を拭いながら熱い視線を送ります。
「いえ、僕の方こそ。皆さんと一緒だから、ここまで効率よく修行ができたんです」
170cm、60kg。見かけは相変わらず穏やかな青年のままでしたが、マルクスが率いるこのパーティーは、今や王都のどんな精鋭をも凌駕する「魔導の集団」へと進化を遂げていました。
王都の冒険者ギルド。その重厚な扉を開け、マルクスを筆頭に五人の美女たちが足を踏み入れると、館内は一瞬にして水を打ったような静寂に包まれました。170cm前後の長身に、隠しきれない豊かな肉体を誇るカタリナたちが放つ、洗練された強者のプレッシャーに全員が圧倒されたのです。
「すみません、買取をお願いしたいのですが」
マルクスが受付に声をかけると、案内されたのはギルドでも最大級の広さを誇る特別査定場でした。
「さあ、皆さん。アイテムボックスの中身を全て出しましょう」
マルクスの合図で、五人が一斉に虚空へ手を伸ばします。
次の瞬間、広大な査定場は魔物の山で埋め尽くされました。魔法解体によって部位ごとに完璧に分類され、血抜きすら完璧な特級素材の数々。
「な、……なんだこれは!? ワイバーンの皮がこれほど無傷な状態で残っているなんて!」
「フォレストボアが五十体……全部魔法で解体されている! 傷一つないぞ!」
「この魔石の量と純度はどうなってるんだ! ギルドの金庫が空になるぞ!」
ギルド中の査定官が総出で、震える手で検品を始めました。マルクスは混乱する場を落ち着かせるように、「買取価格見積書も出してもらえますか?」と丁寧に依頼します。
数時間後、ギルド長が直々に持参した書類には、王都の歴史を塗り替えるような驚愕の数字が並んでいました。
【冒険者ギルド・王都本部 最終買取見積書】
・特級飛竜完全素材一式: 20,000,000 G
・フォレストボア(極上肉・剛毛 52体分): 15,600,000 G
・フォレストウルフ(上質毛皮 30体分): 4,500,000 G
・最高純度魔石(各属性 合計120個): 60,000,000 G
・魔法解体済 希少部位・薬草類一式: 10,000,000 G
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総合計: 110,100,000 G
(※日本円換算:約11億円相当)
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「……ワイバーン一式で二千万ゴールド。魔法解体の手間を考えれば、妥当な査定ですね。ありがとうございます」
マルクスが淡々とその結果を受け入れる横で、カタリナたちは呆然と立ち尽くしていました。
「に、二千万……ワイバーン一匹で二千万……総額は十一億……?」
「マルクス君、私たち、貴族の領地どころかお城が買えちゃうわよ……」
カタリナが豊かな胸を激しく上下させ、ベッティーナやマティルデも腰を抜かさんばかりに驚いています。170cm、60kg。見かけは穏やかな青年のマルクスですが、彼がもたらした「正当な富」と、それを可能にした圧倒的な実力に、ギルドの幹部たちは戦慄していました。
「……マルクス様。これほどの額、今すぐには現ナマで用意できません。ギルド特製の預かり手形を発行いたしますが、よろしいでしょうか?」
ギルド長が冷汗を拭いながら深々と頭を下げる光景に、周囲の冒険者たちは目を疑いました。
無力だった青年が、王都を揺るがす伝説の始まりを告げた瞬間でした。
王都の喧騒が落ち着き、豪華な宿の一室で祝杯を挙げた後も、カタリナたち五人の胸の内には、エールの酔いだけでは説明のつかない熱が宿っていました。十一億ゴールドという天文学的な報酬よりも、彼女たちの心を強く揺さぶっていたのは、目の前で穏やかに茶を啜る青年の存在でした。
「マルクス君、本当にお疲れ様。……あの、これ、少し肩が凝ってるんじゃないかと思って」
斥候のカタリナが、しなやかな指先をマルクスの肩に乗せました。170cmの彼女が密着するように身を乗り出すと、豊かな胸の重みがマルクスの背に伝わります。彼女の瞳には、かつての恩人に対する感謝以上の、熱い情愛が滲んでいました。
「ああ、ありがとうございます、カタリナさん。少し歩き疲れましたかね」
マルクスは、背後から漂う甘い香りに顔を赤らめることもなく、ただ純粋に好意を受け取って微笑みます。
「マルクス様、私からもお礼を。君の魔法指導がなければ、私たちは今頃……。その、私、君のような強い方に守られる幸せを初めて知りました」
盾士のベッティーナが、甲冑を脱いだ柔らかな姿でマルクスの隣に座り、大きな尻で彼を押し込むように距離を詰めます。彼女の言葉は告白に近いものでしたが、マルクスは「いや、ベッティーナさんの守りがあったからこそ、僕も安心して魔法を撃てたんですよ」と、完全に「戦友としての信頼」として返してしまいました。
マティルデは力強く彼の腕を取り、ドロテアは魔法の議論を口実に顔を寄せ、デニーゼは献身的に彼の世話を焼きます。五人の美女たちが競い合うように放つ、豊満な肢体による誘惑と、熱を帯びた言葉の数々。
しかし、マルクスは驚くほどに気づきません。
彼にとって、彼女たちは共に死線を越えた大切な仲間であり、自分が教えた魔法を立派に使いこなす誇らしい「弟子」でもありました。彼の頭の中は、今もなお「どうすれば魔法の精度を上げられるか」「空間魔法の維持効率をあと数パーセント改善できないか」といった、魔導の探求で占められていたのです。
「……ねえ、マルクス君。私たち、これからもずっと一緒のパーティーでいいのよね?」
ドロテアが潤んだ瞳で尋ねると、マルクスは一点の曇りもない笑顔で頷きました。
「もちろんです。こんなに信頼できる仲間は他にいませんから。これからもよろしくお願いしますね、皆さん」
その完璧に「清廉な回答」に、五人は一様に溜息をつきました。十一億円を稼ぎ出し、ワイバーンを瞬殺し、空間さえ操る天才は、女心の機微に関しては、森で最初に出会った時と変わらぬ「強くない」鈍感さを発揮していたのです。
「……はぁ、これは先が長そうね」
カタリナが苦笑しながら、マルクスのために淹れ直した二杯目のお茶を差し出します。
最強の魔法使いと、彼を心底愛する五人の美女。
王都の夜は更けていきますが、マルクスが彼女たちの恋心に「覚醒」する日は、まだしばらく先になりそうでした。
王都の閑静な高級住宅街に、マルクスたちは新たな拠点となる屋敷を購入しました。十一億ゴールドという莫大な資金の一部を投じ、六人がそれぞれの個室を持ちつつ、広々としたリビングや最新の設備を備えた邸宅です。アイテムボックスがあるため引っ越しは一瞬で終わり、その日の夜、一行は新しい家での初めての夜を迎えました。
修行の疲れからか、マルクスが早々に自分の部屋で寝静まった頃。リビングの暖炉の前には、カタリナ、ベッティーナ、マティルデ、ドロテア、デニーゼの五人が、薄手の寝間着姿で集まっていました。
「……さて、みんな。いい加減、この状況について話し合いましょうか」
リーダーのカタリナが、エールではなく、少し強めの蒸留酒を一口煽って切り出しました。暖炉の火に照らされた彼女たちの肢体は、昼間の冒険者としての姿とは異なる、艶やかな女性としての魅力を放っています。
「賛成よ。正直、マルクス様のあの鈍感さ……魔法の精密さとは正反対だわ」
盾士のベッティーナが、豊かな胸を揺らして溜息をつきました。
ここに集まった五人は、全員がマルクスに恋をしています。しかし、当の本人は彼女たちが向ける熱い視線も、密着する体温も、すべて「仲間としての信頼」として処理してしまう。この夜、ついに**「マルクス攻略会議」**が幕を開けました。
「まず、彼に『異性』として意識させる必要があるわ。ドロテア、魔法の修行にかこつけて距離を詰めるのはどう?」
「……もうやってるわよ。でも彼、私が顔を赤くして近づいても、『ドロテアさん、魔力の循環が乱れてますね、顔が熱そうです』なんて言って、額に手を当ててくるのよ。それ、逆効果で私が倒れそうになるだけ……」
魔法使いのドロテアが赤面してうつむくと、マティルデも腕を組んで頷きました。
「私も、剣の稽古でわざと組み合っても、『マティルデさん、マッスルの使い方が甘いです。もっと密着して重心を移動させて』って、無自覚に私を抱きかかえるように指導してくるんだから。あれ、確信犯じゃないのが一番性質が悪いのよね」
デニーゼは献身的に食事や身の回りの世話を焼いていますが、マルクスは「デニーゼさんは本当に優しい仲間ですね」と、聖女か何かのように崇めてしまい、一歩踏み込ませてくれないといいます。
「……結論として、彼は私たちのことを『最強の仲間』としてしか見ていない。だから、この屋敷での生活を通じて、少しずつ『一人の男と女』の関係を刷り込んでいくしかないわね」
カタリナが戦略をまとめます。
「焦って一人で突撃しても、あの天然の結界は破れない。今は五人で協力して、彼の周りを常に甘い空気で包むのよ。王都での生活は始まったばかりなんだから」
五人はそれぞれの巨乳、巨尻をソファに沈め、月明かりの下で一致団結を誓いました。自分たちのことを想って家を買い、惜しみなく魔法を教えてくれる優しい青年。その「本丸」を射落とすための長い戦いが、この静かな屋敷で始まろうとしていました。
一方、二階の自室で眠るマルクスは、「明日は屋敷の防衛結界の出力をあと三パーセント上げる練習をしよう」と、夢の中でも魔法のことばかりを考えているのでした。
王都に購入した邸宅での生活が始まって数日。マルクスを振り向かせようと躍起になる五人の「攻略作戦」は、より大胆かつ、彼女たちなりの「自然」を装った過激なものへとエスカレートしていました。
その日の午後、マルクスがリビングで空間魔法の維持効率を計算していた時のことです。
「あ、マルクス君。ちょうどよかった、背中のファスナーが固くて……手伝ってくれない?」
カタリナが、すでに半分以上はだけた格好で部屋に入ってきました。170cmのしなやかな肢体、そして布地から零れんばかりの豊かな胸。彼女が背中を向けると、そこには滑らかな肌が露わになっていました。
「あ、いいですよ、カタリナさん。……あ、これは魔力の残滓で生地が少し硬化してますね。今解きます」
マルクスは淡々と指先から微細な魔力を放ち、ファスナーの噛み合わせを直すと、そのまま自分の作業に戻ってしまいました。彼女が期待していた「手が触れて動揺する」といった展開は、マルクスの驚異的な魔力操作精度によって、一瞬の作業として処理されてしまったのです。
さらに、その後も「自然」な晒し込みは続きます。
盾士のベッティーナは、風呂上がりだと言って、申し訳程度のタオル一枚を体に巻いた姿でリビングを横切りました。172cmの長身、引き締まった腹部と、重力に抗うような巨乳・巨尻のライン。
「あら、マルクス様。まだ起きてらしたのね。……なんだか、のぼせちゃったみたい」
ベッティーナがわざとらしくソファに倒れ込み、タオルの隙間から豊かな太ももを覗かせます。しかし、マルクスはすぐに立ち上がると、
「大変だ。魔力切れの後の長湯は血管に負担がかかります。今、水魔法で頭を冷やしますね。ウォータークール」
と、彼女の額に絶妙な温度の冷水を生成し、献身的に「看病」を始めてしまいました。
マティルデは修行後の着替えをわざとマルクスの前で行い、ドロテアとデニーゼも「魔法の実験で服が汚れた」と言っては、彼の間近で無防備な裸体を晒します。五人の美女たちが入れ替わり立ち替わり、黄金の比率とも言えるその肉体の魅力を惜しげもなく解き放っているのです。
しかし、マルクスの「天然の結界」は鉄壁でした。
彼にとって、裸体は「生物学的な個体の状態」の一つであり、仲間がリラックスしている証拠に過ぎませんでした。何より、彼の瞳は彼女たちの肌の美しさに感嘆しつつも、それ以上に「体内の魔力の循環が滞っていないか」を無意識に鑑定し続けていたのです。
「皆さん、最近は屋敷の中で随分と開放的ですね。魔力効率を上げるにはリラックスが一番ですから、良い傾向だと思います」
170cm、60kg。穏やかな笑みを浮かべてそう言い切るマルクスを前に、五人は一様に天を仰ぎました。
目のやり場に困るどころか、正面からまじまじと観察され、健康状態まで心配されてしまう。これほどまでに健全で、これほどまでに残酷な拒絶があるでしょうか。
「……もう、バカ。大バカよ、マルクス君」
カタリナが真っ赤な顔で呟きましたが、マルクスは「えっ、何か計算を間違えましたか?」と首を傾げるばかり。
五人の美女たちによる、全力を挙げた「自然な誘惑」。
それは、マルクスのあまりにも純粋すぎる魔導への情熱と、驚異的なまでの鈍感さによって、空回りし続けるのでした。
王都近郊の古戦場跡。そこには、かつての王国騎士たちが怨念によって具現化した「幽霊騎士団」が彷徨っていました。マルクスと五人の仲間たちは、ギルドからの緊急依頼を受け、霧深いその地へと足を踏み入れました。
「皆さん、気をつけてください。この霧、魔力による怨念の塊です」
マルクスの警告と共に、霧の向こうから青白い炎を宿した鎧の集団が姿を現しました。実体を持たない亡霊騎士たち。カタリナたちが一斉に攻撃を開始しますが、ここで予期せぬ事態が起こります。
「な……!? 攻撃が、通り抜けるの……!?」
カタリナの放つ「アイスバレット」も、マティルデの剣も、亡霊たちの体を虚しく透過していきました。物理攻撃はもちろん、実体を持つ水や土の属性魔法も、実体のない彼らには決定打となりません。
「う……体が重い……魔力が吸い取られていくみたい……」
幽霊騎士たちの振るう「魂を凍らせる剣」は、ベッティーナの物理的な大盾をすり抜け、彼女たちの精神を直接削り始めました。五人の豊かな肢体も冷たい死の気配に曝され、震えが止まらなくなります。これまでの実体ある魔物との戦いでは味わったことのない、初めての苦戦でした。
「皆さん、僕のところへ集まってください! 実体のない相手には、光の属性を直接ぶつけるしかありません」
マルクスは170cmの体躯を前に出し、膨大な魔力を「光」へと変換しました。
「カタリナさん、ベッティーナさん、マティルデさん。皆さんの武器をこちらへ。光魔法を付与します!」
マルクスが五人の武器に手を翳すと、黄金の輝きが刃や盾、弓に宿りました。武器に光魔法を付与されたことで、それらは亡霊を切り裂く聖なる武具へと変貌します。
「これなら、いけます! ドロテアさん、デニーゼさん、僕と一緒にバレットで援護してください。……いきますよ、ホーリーバレット!」
マルクスが指先から放ったのは、不浄を浄化する聖なる光の弾丸でした。カタリナたちも聖なる力を宿した武器を振るい、反撃に転じます。マティルデの剣が亡霊の鎧を捉え、ベッティーナの盾が冷気の刃を弾き返します。マルクスの放つ「ホーリーバレット」が亡霊騎士を貫くたび、怨念の霧が晴れるように光の粒となって消えていきました。
「助かったわ……。マルクス君、この光の力、凄まじいわね」
カタリナが、荒い息をつきながら豊満な胸を押さえ、マルクスに視線を送ります。窮地を救い、自分たちの武器に新たな力を授けてくれた彼の背中は、誰よりも頼もしく映っていました。
「いえ、皆さんが冷静に対応してくれたおかげです。……さあ、残りの亡霊も一気に浄化してしまいましょう」
マルクスは穏やかな口調で仲間を鼓舞しました。圧倒的な力だけでなく、仲間の武器に力を分け与える彼の献身的な姿に、五人の恋心はより深く、揺るぎないものへと変わっていくのでした。
幽霊騎士団を討伐し、霧が晴れ渡った古戦場の最深部。そこには、マルクスたちの他にもう一人の生存者がいました。
崩れ落ちた石柱の影に倒れていたのは、白銀の甲冑を血で染めた一人の美女騎士でした。燃えるような赤髪を地面に散らし、荒い息を吐く彼女の腹部には、亡霊の冷気によって壊死しかけた深い傷が刻まれています。意識は朦朧としており、生命の灯火が消えようとしている瀕死の状態でした。
「……あ、危ない、……逃げ……」
死の淵にありながら、自分を覗き込むマルクスを案じてかすかな声を漏らす彼女。175cmほどの長身。甲冑越しでも分かるほどに鍛え上げられ、かつ女性らしい豊満さを備えたその肢体は、死の冷気に曝されて青白くなっていました。
「大丈夫ですよ。今、助けますね」
マルクスは落ち着いた声で応えると、膝をついて彼女の傷口に手を翳しました。膨大な魔力が瞬時に「慈愛」と「清浄」の性質へと変換され、黄金の輝きとなって収束していきます。
「……いきます。ヒールバレット、ピュリフィケーションバレット」
マルクスが放ったのは、肉体を再生させる癒やしの弾丸と、亡霊の呪毒を根こそぎ取り除く浄化の弾丸。それらを正確に、かつ絶え間なく連射しました。
着弾のたび、彼女の体を黄金の波紋が包み込みます。亡霊の呪いによる黒ずんだ傷痕が、ピュリフィケーションバレットによって浄化され、煙を上げて消え去ります。間髪入れず撃ち込まれたヒールバレットが、引き裂かれた肉を魔法の糸で編み上げるように瞬時に再生させていきました。
「……っ、ぁ……温かい……。何、この……光……」
彼女の瞳に力が戻り、頬に朱が差しました。致命傷だったはずの傷は、傷跡一つ残らず消滅し、失われた血液さえも魔力によって補填されていきます。
「気分はどうですか? 呪いも外傷もすべて消しました」
マルクスが手を差し伸べると、美女騎士――聖騎士団の分隊長、エリザベスは、信じられないものを見るように自分の体を確認し、それからマルクスを仰ぎ見ました。
「君が……私を? 聖堂の司祭様でも不可能なほどの、こんなにも清らかな光で……」
背後では、カタリナたち五人が少しだけ複雑な表情で見守っていました。また一人、自分たちの愛する「天然の英雄」に救い出された、美しく強い女性。
「……ありがとうございます。私はエリザベス。この御恩、必ずや……」
170cm、60kg。相変わらず一見すれば線の細い青年であるマルクスは、エリザベスの感謝に静かに微笑み、彼女の手を取って立たせました。王都を揺るがす光の魔法使いの周りに、また一つ、新たな運命の糸が絡みつこうとしていました。
エリザベスを救出した安堵も束の間、古戦場の地面から噴き出した漆黒の魔力が、再び周囲を闇へと塗り潰しました。地響きと共に現れたのは、先ほどの幽霊騎士団とは比較にならないプレッシャーを放つ、高位の不死者たちでした。
霧の向こうから、漆黒の馬に跨り、自身の頭部を小脇に抱えたデュラハンが3体。そして、禍々しい魔剣を携え、赤黒いオーラを纏ったデスナイトが5体。彼らは言葉を発することなく、完璧な陣形でマルクスたちを包囲しました。
「……っ、嘘でしょ!? なんでこんな場所に最上位のアンデッドが……!」
カタリナが弓を構えますが、その指は微かに震えていました。デスナイトが剣を振るうたび、空間そのものが削り取られるような衝撃波が吹き荒れます。
「皆さん、下がって! さっきの光魔法付与だけじゃ、この密度は防ぎきれません!」
マルクスが叫ぶと同時に、一体のデュラハンが死の鞭を振るいました。ベッティーナが「土魔法・壁」と「マッスル」を全開にして大盾で受け止めますが、その盾が悲鳴を上げ、彼女の巨躯が数メートルも後退させられます。
「ぐっ……なんて重さなの……!」
「アクセル」で加速したマティルデの剣撃も、デスナイトの魔剣によって冷酷に弾き返されました。それどころか、デスナイトが放つ「死の宣告」の波動が、彼女たちの豊かな肢体から体力を奪い、視界を奪っていきます。
五人の美女たち、そして負傷から回復したばかりのエリザベスまでもが、逃れようのない死の抱擁に絡め取られるような苦戦を強いられていました。
「……くっ、数が多いな。一属性ずつじゃ押し切られる……」
マルクスは170cmの体を盾にするように前に出ました。デスナイトの魔剣が彼の鼻先を掠め、死の冷気が頬を焼きます。しかし、彼の瞳は絶望に染まってはいませんでした。
「カタリナさん! 皆さん! 属性を混ぜるんです! 光だけじゃない、土と風、そして聖なる力を一本の矢に、一振りの剣に凝縮して!」
マルクスは自身の魔力回路を全開にし、アイテムボックスから取り出したばかりの魔石を握りつぶして魔力を強制補填しました。
「僕が道をこじ開けます。……ホーリーバレット、連射!!」
指先から放たれる黄金の光弾が、デュラハンの漆黒の鎧を叩きます。しかし、敵はそれを盾で受け流し、ジリジリと距離を詰めてくる。死の騎士たちの沈黙の圧力が、六人を絶望の淵へと追い詰めていきました。
170cm、60kgの青年マルクスが、かつてないほどの死闘の中で、次なる一手を見出すべく脳細胞を加速させます。




