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家族という仕事  作者: 阿井 亜斗
2章

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9/10

4.

「へえ〜。そんなことがあったんだ。」

 晶は楽しそうな声を出した。


 いつの間にか菊莉に襲われたこと以外にも、香から聞いた菊莉と浩平の話をしもしていた。

 話を聞いているとき、晶の様子がすこしおかしいような気がしたがいつもの様子に戻っていた。


「犬をつけておいて正解だったね。でなければ、兄さん死んでいたよ。」

 無邪気な顔で、晶はつげた。

「そうだろうな。犬をつけてくれて助かったよ。」


 犬にまとわりつかれながら礼を伝えた。

 何が気に入ったのか、犬がずっと満月にじゃれついていた。


「井戸に、菊莉に、皿ね。」

 晶の呟きに、思い出した。


 その3つの言葉からふと思い浮かんだものがあった。

「皿屋敷か。」


「皿屋敷」と言えば、大まかに言えばお菊という娘が奉公先の当主の貴重な皿を割り、当主の怒りを買い手打ちにされ、井戸に放り込まれる話だ。

 死後、亡霊になったお菊が皿を「一枚、二枚、・・・」と数え最後に「一枚足りない。」といいお話だ。


 実は皿屋敷の話は全国にあり、共通点としては「井戸」「お菊という女性」「皿」となっている。

 大元の話は播州皿屋敷で、その話を元に歌舞伎などでリメイクされ全国に伝わったとの話がある。

 最後は最後は落語や浄瑠璃など、それぞれちがったりするがお家断絶が有名ではないかと思う。


「確かに共通点があるな。」

「だよね。しかも、菊莉さん井戸の話をしたときに言ったんでしょ。」


 晶は一旦、間を開けた。


「『足りない』って。」

「その言葉は皿のことを言っていたのか。」

「井戸の話が出た時に、なんかひかっかたんだよね。でも出来すぎだなと思ってたけど、井戸が発見されたのは2週間前で、浩平さんの家に行ったのは先週末なんだよね。」

「そのはずだが。」

「菊莉さんは、井戸に引きづられたんじゃないかな?」


 晶は話を続けた。


「皿屋敷の話は全国にある話だし、大学にある井戸も皿屋敷が元になっている逸話があるのかもね。あるとしても似たような話なんだろうけど。」

「菊莉は大丈夫なのか?」

「さあ?」


 晶は肩をすくめた。


「菊莉さんはたまたま、皿屋敷の共通点に引きづられただけだから通り魔にあったようなものだと思うよ。日常生活は普通におくれているから。ただ。」

「ただ?」

「問題なのは浩平さんかもしれない。」


 それに、思わず眉を顰めた。


「なんでだ?浩平は菊莉を庇ったし問題ないだろう。」

「そうだったいいんだけど。『お菊さん』の方はそんなこと関係ないだろうから、浩平さんを地主の父親にみたてて、もしかしたら復習しにいくかもしれないね。」

「復習?」

「皿を割って手打ちにしたのは、奉公先の当主だろ?もう、長い時代経ちすぎて何もわからなくなっている様子だし、関係ない兄さんも襲われたから、関係がある地主の血筋ならなんでもよくなってるかも。」

 満月は襲われた時の菊莉の様子を思い出した。

 後半の言葉になっておらず、意味がない奇声をだしていた。

「そのまま行くと、大地主の家が没落するかもしれないね。」

「だとしても、二人には関係なだろ。菊莉が浩平を殺すなんて二人にとっては理不尽すぎる。」

「確かにね。ただ、菊莉さんが『お菊さん』の影響が強すぎて、肉体と精神が耐えられずにこのまま死んでしまう方が早いかもしれないし、。菊莉さん病院にいる?」

 急いで、佐藤に連絡することにした。


「菊莉さんがいなくなりました。」

 満月の連絡を受け、菊莉が病院にいるか確認したところいなくなっていた。

 菊莉も頭が打ってないか見てもらったところ、問題ないということで大事をとって1日入院することになっていた。

 が、そこ病室からいなくなっており、院内を探してみたがいなくなっていたとのことだった。


 満月は佐藤の話を、車を運転しながらスマホをハンズフリーで聞いていた。

「満月さんはどこに向かっています?」

「大学にある井戸。」

「そうなりますよね〜。」


 原因になっているのは、井戸が発見されたからだ。

 そのため、井戸をどうにかすればいいのではないかと思ったのだ。


「佐藤には申し訳ないが、浩平のところにはってもらってもいいか。菊莉はそちらに行っているかもしれないし。」

「部下に向かわせているので大丈夫です。」


 流石この手に慣れていると手回しが早い。


「井戸に行くとは言っていましたが、どうするんですか?」

「着いたら連絡するよう晶に言われているが、どうするかは俺にはわからない。」

「そうですか。」


 そんな話しながら運転していたら、大学に着いた。

「悪いが大学に着いたので晶に電話するな。」

「お気をつけて。」


 佐藤との連絡をきり、晶に電話する。

 スマホは持っていないが、固定電話に繋がるはずだ。


「もしもし。」

「俺だ。」


 井戸があると言われている場所に向かいながら晶に電話した。


「井戸に着いた?」

「もうすぐだ。」


 工事場所につき、井戸が見えてきた。

 他で井戸の実物を見たことがないが、昔に作られたといった感じの石造りのものだった。


「井戸に着いたぞ。」

「わかった。」


 着いたの伝えた途端、犬が出てきた。

 犬の口には何かが咥えられていた。


「・り・・の・・・・。」


 何かが聞こえた。


「PYAnnd$q2ertyあiopaすdfghjlなndeーーーーーーーーーーーーー!」


 横の茂みから、なにを言っているのかわからかない奇声を上げた菊莉が襲ってきた。

 無表情ながら奇声をあげており、現実感がなかった。

 これが般若の顔のような怒り顔ならまだわかったが、もうシステマチックに声をあげているようにみえたが、満月に対する殺意は本物だ。

 井戸をどうにかしようとしているのを察して、浩平ではなくこちらにきたのだろう。

 菊莉は満月に襲い掛かり女性の力とは思えない力で首を絞めた。

 抵抗しているがこのままでは絞殺される。


 犬は何かを口に咥えているし、助けられないだろう。

 自分が時間を稼がなければと思っていたところ。


「菊莉、やめろ!」


 菊莉が急に上から消えた。

 身をあげて見てみると、そこには浩平がおり菊莉をタックルして満月からどうかしたようだった。


「お願いだ!やめてくれ。」

「Sqgう9が足りN1&のーーーーーー!」

「皿なんてどうでもいいから!」

「Aあああaaaa1111%%%%%%ーーーーーーー!」


 無表情に奇声を上げる菊莉を押さえつけている浩平。


「あああああああああああぃいいいいい、4んでしまえ!あの方と結婚できたのに!」


 ほぼ何をいっているのかわからなくなっているところに「結婚できたの」言葉だけははっきりと聞こえた。


 菊莉に襲われたときに落としたスマホから、晶の声が聞こえた。

「兄さん、聞こえる?スマホをスピーカーにして彼女に聞こえるようにして。」

 その言葉から満月は慌ててスピーカーに設定し音量を最大してから、菊莉の方にスマホを向けた。


「皿はあるよ。」


 晶のその言葉がスマホから流れてきたときに、菊莉の動きはピタッと動きを止める。

 浩平のことなど忘れたように、こちらを見た。


「皿が、ある。」

 菊莉は先ほどとは違い、言葉を話すようになった。

「そう、ほら犬を見てみな。」


 犬を見てみると口に咥えていたものは、皿のようだった。

 その皿を咥えて、井戸に飛ぶこむ犬。


「ま、待って!」


 慌てて犬をおい、井戸に落ちそうになる菊莉。

 満月と浩平は慌てて、菊莉を追いかけ井戸に落ちそうになる菊莉を抱えた。


 ずるっ。


 その瞬間、何かが菊莉から出ていった。


「おい!菊莉大丈夫か?」


 浩平が声をかけたところ、菊莉は気を失っていた。

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