3.
佐藤に電話したところ、即大学に来てくれた。
とりとめのない説明だったのに何も聞かずよく来てくれたものだ。
菊莉の意識が戻ったらどうしようかと思っていたがそんなことはなく、佐藤が何人かの男たちを連れて到着するまで気絶をしていた。
犬は満月にじゃれついていたが、佐藤が来た途端にいつも間にか消えていた。
「ひどい目にあいましたね。」
部下たちに指示をだし、落ち着いたところで満月に話しかけてきた。
「菊莉の様子は?」
「特に外傷もないので大丈夫でしょう。一応頭を打っているかわからないので、病院につれていきますが。」
「頼む。」
「むしろ、満月さんの腕の傷のほうが気になるので医者につれていきたいのですが。」
菊莉とのもみ合いでアドレナリンが出続けていたせいか、痛みを感じてなかったが佐藤に指摘されたことにより腕の傷を思い出した。
腕の服が切られ血が付着してしまっため、今着ている服はゴミ箱行きが決定していた。
「病院に行きがてら応急処置をします。」
病院に行くことになり、車の後ろに乗せられ運転手は佐藤の部下に任せ佐藤からの治療を受けることになった。
佐藤は手際よく満月に包帯を巻いていた。
「手慣れているな。」
「まあ、『家族』がいないときの晶さんの対応が大変でしてね。」
そういえば『家族』がいないときの晶は暴れて大変だと聞いたことがある。
その時に対応するのはこの男だ。
満月は晶の暴れた姿を見たことはないが、徹底して刃物がない家を思い出すと大変なことだけは想像できた。
かといって、晶には刃物がなくても意味はないとは思うが、ある程度危険度下げたいのだろう。
ポルターガイスト現象をみているので、刃物がないのは納得するところはあった。
「あの女性は菊莉さんでしたっけ?一応ご家族にも連絡をしました。満月さんが襲われたことを伝えると男女の関係などで色々いらない探りを入れられそうなので、大学内で意識を失っているところを守衛が見つけたと伝えておきます。」
菊莉は浩平の結婚の話が出ていたのだ。
菊莉の親にもその話は出ていた可能性があるので、余計な心配をさせない方がいいだろう。
「助かった。ありがとう。」
「いえいえ。こういったことは慣れているんで。電話してくれて助かりましたよ。」
佐藤はふと、思い付いたように聞いてきた。
「聞かないんですか?」
「何が?」
「満月さん、私が何を聞きたいかわかっているでしょ?」
その問いかけに、とりあえずといったような様子で問いかけてみた。
「こういった異常事態はよくあるのか?」
あの時は『家』に関することだったので、こういった異常事態に対して手際がいいだけかと思っていたが、『家』に関わること以外での不可思議なことの後始末にも手慣れているように見えた。
いくら満月が佐藤に連絡して助けてくれといったところで、普通は救急車や警察を呼ぶものだ。
「まあ、歴代の『家族』になった人たちはこういったことに巻き込まれることが多かったようです。そのため、『家』を管理している大地主はその対応に追われるようになったため慣れているんですよ。」
「お前、もしかして大地主の親戚なのか?」
「赤の他人ほどの親戚ですよ。なので、身内というよりは雇用関係のほうが近いので、満月さんと同じ立場みたいなものです。」
なるほど。
「どう思います?」
佐藤は満月に問いかける。
「何がだ?」
「このようなことがよく起こることです。どう思います?」
どう思ってると言われても。
「どう思っているかと言われてもな。」
思っているそのままの気持ちを、佐藤にいった。
晶と『家族』である約束を守り、家での家事をすればお金がもらえる。
晶との生活の中で、異常な箇所もあったりした。
日常生活にも潜んできたとしても、日常として過ごしていくのだろうと思っている。
要するに慣れだろう。
以前見たような複雑な顔を佐藤は見せた。
「あなた恐怖心や危機感はないのですか?」
「友達にも言われたな。だから、あまりいろいろなことに首をつっこむなと。」
危ないからと香に言われた。
「なるほど。あなたのような当たりの『家族』には巡り合えないので助かりますよ。」
佐藤は笑顔を見せた。
そうこうしているうちに、病院に着いた。
病院という大きな場所ではなく、診療所のような小さな場所だ。
菊莉と同じ病院だと、菊莉の家族と鉢合わせるかもしれないからだという事だった。
医者に傷口を診てもらったところ、縫うほどではないがしばらくは大事をとって走ったりするような激しい運動はしないように、運転は問題ないと言われた。
いつの間にか、朝になっており騒ぎで酔いなどとっくにさめていた。
一睡もしてないこともあり、医者から許可をもらい寝かせてもらうことにした。
満月の使っている車は後程、病院に置いておくとの言われ満月のけがの様子を見た後に佐藤は病院を去っていった。
満月病院のベッドを貸してもらい、夕方ごろに起きてから駐車場に置いてもらった車に乗り込み『家』帰ることにした。
「おかえり~!」
玄関に入った途端、晶に出迎えられた。
「どう役に立ったでしょ?僕の犬。」
そういった途端、満月の影から犬がでてきた。
犬のことはすっかり忘れていた。
満月は突然の出現に驚いていたが、犬は目が見えなさそうにしながらふんふんと満月を嗅ぎじゃれついてきた。
「気に入られたみたいだね。相性がいいようでよかったよ。というわけで、詳しい話を聞かせて。兄さん?」
晶は満月に何があったか無邪気な顔で聞いてきた。




