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家族という仕事  作者: 阿井 亜斗
2章

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6/10

1

 毎日が順調に過ぎていた。

 大学生活も楽しく過ぎていき、かわいらしい彼女もできた。

 そこときはぼんやりと、このままずっと一緒にいられればいいと思った。

 大学を卒業したら、結婚の約束をした。

 どうしてこのようなことになったんだろう。



「女の声が聞こえる?」

 学食で食事をしていたところに、見覚えのある男女がこちらを見つけて声をかけてきた。

 男女は講義やサークルが同じであるため、友達付き合いをしていた。


「あれ、満月(みつき)聞いたことない?今話題になっている怖い話なんだけど。」

 友達の一人である菊莉(きくり)が答えた。


「講義がおわったら速攻帰ってたからな。ここ最近大学に居ついてないから、そんな話聞いてないのかもな。」

「お前付き合い悪くなったもんな。前は遅くまで、大学にいてからバイトに行ってたのにな。」

 浩平が付き合いの悪くなった満月に、そのような感想をいった。


「そうそう。コンパにも来なくなったしな。まあ、もとからコンパはそんなに来てなかったけどね~。」

 お前がいれば盛り上がるのに、と不満を言う慎二。



「まあな。」

 あいまいな返事をした。


 前住んでいたアパートからでは黒服のバイトの場所までが遠かったため、サークルの部室を借りてバイトまで寝ていたのだ。

 お酒と人が集まるところはにぎやかでそこそこ好きなのだが、いかんせん金がすぐなくなるので行かないようにしていた。

 現在は車で大学に登校していることもあって、さらに縁遠くなっていた。

 車を預けるには都心部の駐車場は高いのだ。


「そういや、話の続きは?」

「そうだった。」


 現在のバイトについて、聞かれたたら面倒なため先ほどの話に戻した。


「いま大学の裏にある場所、工事中じゃない。」

「ああ、確かにそんな話がでてたな。確か、工事を始めてから1か月は経ったかよな。」

「なんか、あたらしく建物を建てる予定らしいよ。」

「まあ、あそこはなんでか変に土地があまっていたからな。」


 大学の敷地は広大だ。

 その中に、なぜか不自然に空いている敷地があったのだ。


「無駄に敷地が空いているのは、いざというときのために建物がロボットに変形するしてそこから発進するためだって陰謀論者が騒いでたね。」

「そういや、そんな話もあったな。」


 菊莉の話に浩平が相槌を打つ。

 ロボットか、晶が好きそうな話だな。

 現在、弟として一緒に暮らしている同居人で今は満月の弟役である(あきら)の端正な顔を思い浮かべた。

 晶は渡辺とのいざいこざがあって以来、満月が帰ってくると何かなかったかと、話をせがむようになった。


 以前は会話をするが、そこまで積極的でもなかった。

 男同士だしそんなもんだろうと気にしてなかったが、今では家族にしか見せないような表情をみせるようになったのだ。

 満月を家族として認めたのかもしれない。

 晶は人外だとは思うが、妙に人間臭いところもあった。


「その敷地を工事中に、2週間ぐらい前に井戸が見つかったんだって。」

「井戸?」

「掘り返えしたら、出てきたみたい。」

「まあ、使わなくなった井戸が埋められたりすることもあるだろうな。」

「で、その井戸が見つかってから、女の声が聞こえるようなったんだって。たまたま、夜遅くにそこに通りかかった学生がいたんだけど、どこからか女の声が聞こえてきて。気のせいかなと思ったらしいんだけど、立ち入り禁止の工事現場の近くを通ろうしてたから、女の人の声が聞こえたらしいよ。」

「へえ。」

「聞こえてきた声の内容はね。」



 そこで、菊莉は一拍間をおいた



「足りない。」



 菊莉は妙に抑揚のない声で告げた。




「へえー!そんな話があったんだ。」

 家にて、夕飯を食べながら(あきら)が満月になにか面白いことがなかったか聞いてきた。

 そういえばと、菊莉の話を思い出したため晶に話したところ興味をもったようだった。


「何が足りなかったんだろうね?」

「さあ?井戸で足りないものといったら水か?」


 満月は空腹だったため、話半分に聞きながら生姜焼きを食べていた。

 食材がすべてカットして届いているため、焼けばすぐ食べられるようになっていた。

 ふと、晶を見てみると生姜焼きを食べているところだった。



「井戸なら確かにありそう。でも。」

「でも?」

「その話をしてくれた人の名前は菊莉さんっていうんだ?」

「そうだが。」

「ふーん・・・。兄さんはこの話題には興味ないの?」



 満月は、晶の言葉に興味があるか考えた。

 ここ最近苦学生から脱却し、課題も落ち着いてきたところだった。

 そんなときにそんな話を聞かされたら、興味がないわけではない。

 だが、香に言われた事がある。


「満月は恐怖がないから気をつけた方がいい」


 仲がいい友達の言葉だ。

 従っておこう。


「お前の世話で大変だからそれどころではないな。」


 その言葉の何がうれしかったのか、晶はえへへーといった笑顔を見せた。

 以前みせていた超常現象もなりを潜めるようになり、あれ以来みていない。



「でも、気をつけた方がいいよ。」

 急に無表情になり託宣をつげる巫女のような雰囲気で晶は告げた。

 食べかけの生姜焼きがその中で浮くはずが、それが供物のように思えた。


「井戸から訪ねてくる人がいるかも。」

「井戸から?」

「そう。」


 晶は満月の問いかけにうなづいた。


「兄さんには犬をつけとくから、気をつけてね。」

「犬?」


 この家に犬など見たことがない。


「そう、犬だよ。それで兄さんも見つけたんだから。」


 晶はいい買い物をしたというように、笑顔を見せた。

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