4.
いつものように、大学に行き講義を受けたあと、あれから何回かお菓子を買っていいっていた。
反応を見てみるに、お菓子なら何でも好きなようでスナック菓子や炭酸飲料水も喜んでいた。
最後にお菓子を買ってから、数週間はたったので今日買うお菓子を考えていた。
前回は映画を見る定番でポッポコーンとコーラを買ったから、ジャンルを変えて和菓子でもいいかもな。
そんなことを考えて、車のドアを開けようとした時だった。
「お前が、今あの家に住んでいる奴か。」
背後からボソッと聞き覚えがない声が聞こえた。
背中に刃物の感触を受けながら。
「・・・何のことだ?」
我ながら、悲鳴を上げなかったことをほめたい。
もし、悲鳴を上げたいたらこいつは迷わず自分を刺しただろう。
それだけの、何か追い込まれている気配を感じた。
「とぼけなくていい。あの車は前に乗ったことがあるから見たことがある。ナンバープレートも同じだからな。」
「車違いじゃないか。ナンバープレートが似ているものなんてよくあるし。」
「黙れ。」
刃物を近づけられる。
俺は思わず黙った。
「・・・俺を家に連れていけ。」
「場所わかってんだろう。車も乗ったまま夜逃げしたと聞いたし、レンタカーを使って行けばいいだろ。忘れ物でもしたのか?」
観念して、人が通るかもしれない一縷をかけて時間稼ぎで質問した。
「・・・たどり着けないんだよ。」
「はっ?」
「何回も行ったが、たどり着けなかったんだよ。」
こいつは、何を言っている。
ほぼ毎日俺は大学に行き帰ってきている。
配達人やハウスクリーニングの人も毎日ではないが来ている。
なのに、たどり着けない?
「そうなると、あの家の噂は本当だったことになる。俺を家に連れていけ。」
更に、刃物を近づけられる。
なんの気なしに刺されてもおかしくない距離感だ。
「ここで拒否をすれば、お前を殺せばいい。そうすれば、次は佐藤を狙えばいいだけだからな。」
背後から殺意を感じる。
命大事のため、家に連れていくことにした。
運転しながら、後ろに座った男ー渡辺ー話しかける。
「今更、家に何の用事だ?お前夜逃げしたんじゃないのか?」
バックミラーを見てみると、手元刃物をもっている顔色の悪い全身黒ずくめの男が見えた。
何か不信な行動を見せれば、刺すといった決意を目から感じられた。
そんな嫌な決意をするなよ。
「そうだよ。仕事とはいえ、顔のいい気が狂っているガキの家族のふりをするのもやだったし、家にいたくないからと車にのって町に繰り出せば、借金取りがいるから繰り出すこともできない。あんな、何もない場所にずっといるのは負担だったんだよ。パチンコとかもないしな。」
こいつギャンブル狂かよ。
借金の理由もそれだろうな。
「しかも、時々あのガキはおかしくなる。お前も経験してるだろ。」
「なんのことだ?」
空惚けて聞き返した。
晶の顔が、表情がなくなったことは、初めて見た以降はなかったが、それなりに怪奇現象は起こった。
晶と自分以外しかいないはずなのに、他の場所から声が聞こえる。
ゴミ箱の中身がいつの間にかばら撒かれる。
決定打なのは、DVDや本などのものが宙に浮いており、所謂ポルターガイスト現象を見ている。
だからといってなんだ。
別に生活の邪魔になるわけではなかった。
確かに急に心あたりがないところから声が聞こえるのはビビるし、ゴミをばら撒かたら片付けるのが面倒だ。
しかし、それ以外で日常生活で困ることはなく、体調も別に悪くなることはなかった。
危機管理能力が壊れているのかもしれない。
「わかってんだろ!物音が急にしたり、いつの間にか物が動いていたり。あまつさえあのガキ・・・!」
もしかしたら、渡辺は俺よりも怖い怪奇現象に遭っているのかもしれない。
借金を抱えていることもあり、精神が安定しておらず、俺よりもダイレクトに感じてしまい怖かっただろう。
そこは同情した。
「だから、逃げ出したんだよ。何だかんだ給与は良かったから金はかなり貯まっていたし、ほぼ借金も返せた。逃げ出してからは、パチンコも負けなしで、馬券とかを買っても百発百中だった。女もできた。ツキが向いていた。」
「だが、車を売ってから前に逆戻りした。」
「最初は寝床にするために車をそのままにしていたが、金もたまってきたし、いつまでもあの家のものをもっているのが気味が悪かったから売った。そこからパチンコ、競輪、馬券を買っても負け越す。ギャンブルするために金を借りるから借金が膨れ上がる。金がなくなると女が逃げた。負けた分を取り返そうとしても、外れる。今や借金は以前よりも膨れ上がった。」
それは、ギャンブルしなければいいのでは。
欲を持たずに逃げ出した後は普通に仕事し、暮らしていけばそのまま暮らしていけたのではないのだろうか。
迷い家である、無欲なものは富をさずけるというが、渡辺は最初から欲をもっていたから違うかもしれない。
だが、車を持ち出したためその時は一時金持ちになっていたのだろう。
「そこで、家の噂を聞いた。」
「あの家から何かを持って帰ったやつは、億万長者になった。」
「俺は、車を売ってから負け続きだ。」
「車を買い戻そうとしても、もう流してしまっと言いやがった!」
「それなら家にもう一度行き、もらいに行くしかないだろ。」
バックミラー越しに観察していた、渡辺は段々と感情が昂っていったのか顔色が悪い中、目が充血し声を荒げていった。
「そうか。」
渡辺は沈黙し、また話だし激昂しを繰り返していた。
大変だな・・・。
運転しながら、そんなことを思った。
刃物を持った不審者に、恐怖を感じなかった。
家につけば決着はつくだろう。
なぜか、そんな確信めいたものを感じながら、家に帰り着いた。




