15.空白の千年間。
その夜、俺は綺麗になった母さんの部屋にいた。
エウローペ語で書かれている歴史書を解読するためだ。
「母さん。いきなり核心に迫る事聞くけどさ、この歴史書って信じられ...、」
バリンッッ!!!
俺が母さんに話しかけた瞬間、部屋の窓ガラスが割れ、中にゴブリンが入ってきた。
「母さんっ、下がってろ!ここは俺が...!」
「勘弁してよ〜、お風呂入ったばっかりなのに...。」
そう呟いたと思ったら、母さんは既にゴブリンに向かって飛びかかっている。
ゴブリンに鼻フックをかまし、そのまま割れたガラス窓から外に放り投げ、母さんも飛び降りた。
...え?
一瞬のことで驚いたが、俺は母さんを援護するために窓から飛び降りようとすると、既にゴブリンの頭は灰になっていた。
「母さん!大丈夫かよっ?」
「ふぅ〜。ビックリした!この辺りは街から離れてるし、明かりつけてると入ってきちゃうのかしらね。」
「っておいおい!そんな虫みたいに...。」
確かに部屋に虫が入ってきた時の母親って妙に頼もしいもんだけど、そういうレベルじゃねぇだろ...。
物音を聞いたミズナも窓から声をかける。
「サヤカさん、大丈夫ですか〜?
って、ギャー!!もう死んじゃってるのよ⁉︎」
ミズナはゴブリンの死体に驚いたというより、母さんの早技に驚いていたようだった。
その後、何事もなかったように部屋に戻ってくる母さん。
「窓ガラスどうしましょ?
とりあえず、これでも付けようかしら。」
部屋にあった木製の板を窓に固定し、本当に何事もなかったように歴史書の会話を再開した。
...母強し。
「コウ、この歴史書が信用に値するか聞いてたわよね?
お母さんはね、正確に書かれていると思うわ。
少なくとも、お母さんがコールドスリープされる前までの歴史は正確に書かれていたわ。
実はあなたがお風呂上がりのミズナちゃんとイチャイチャしてる間に少し先に読んでたの。ふふ。」
「イ、イチャイチャしてねぇっての!明日の事とか話してただけだよ...!
まあ、その本が正しそうなら良かったよ。
正直、この部屋には胡散臭い品もあるからな。
そういや、ミズナは何やら新しい装置を作るとかで部屋にこもるってよ。
音聞こえても気にしないでくれって言ってたぜ。」
「分かったわ。
じゃあ早速だけど、読んでいきましょ。」
俺たちは二人の持てる知識を総動員して、読み進めた。
「母さん。まず書かれている対話型AI技術の躍進ってどういうことだ?」
「AIは人工知能の事ね。
この技術分野の進歩が目覚ましかったために、人類は考える事を放棄していったようね。
そしてAI推進派とその抵抗勢力に分かれて...、
世界戦争が勃発したらしいわ。」
「世界戦争が起きたのか...。でも、それ以前の世界大戦とは規模が違かったんじゃないのか?
軍事技術だって凄まじく発展してるだろ。」
「ここ読むと、人類の約半数が死滅したって書かれているわ。
そして、最終的に勝利したのはAI推進派。
戦争自体も対話型AIをフル活用して抵抗勢力の作戦を大きく上回ったようね。」
「そんな...、これじゃ戦争に勝ったのは実質AIじゃないのか!」
「そう捉えられるわね...。
そしてこの後、人類はさらに堕落していくみたいね。
特にスマホは手放すことが出来ず、些細なことでもスマホの中の対話型AIに判断を委ねていくわ。」
「...あ!これ!スマホの二大メーカーとして、父さん会社が書かれてるぞ。
父さん亡き後も存続していたんだな。」
「もう一方は、あなたが起こしたとされた事件の真犯人のトップという男が社長だった会社みたいね。」
「トップ...。アイツ、スマホメーカーの社長だったのか...!」
「そのようね。あなたの事件も何か明確な意図があって冤罪を演出したのかも知れないわね。」
「本当に昔から狡猾な奴だったんだな。
どうせ俺の事件も氷山の一角にしか過ぎないんだろうな。」
「あ!この後また戦争が起きるみたいね。
今度はお父さんの会社がスマホ規制派として世界に一石を投じたのね。
自らの会社の産業を規制するなんて、正気の沙汰じゃないけど、それほどまでに世界は堕落しきっていたようね。」
「ホントだ!第二次AI戦争って言うのか。
...なになに?勝ったのは規制派⁉︎
これを機に世界からスマホもとい対話型AIは完全に姿を消したのか。
この時代の人類の平均IQは50って書いてあるぞ。」
「便利な機械は人間を退化させてしまったのね。
...えっと、戦争終結後すぐにコールドスリープ技術が発見される⁉︎
既に数百年前から秘密裏に行われていた模様...って書いてあるわ。」
「この時についに世界にバレたのか。
えっと、国際裁判長はこの技術を直ちに禁止。
主導者の男を極刑に処すも、執行当日に失踪、それと同時に国際裁判長も失踪⁉︎
なんだなんだ、怪しい匂いしかしないぞ。」
「裁判長の失踪後は世界大統領が兼任するみたい。
その人の方針は、環境負担の大きい科学技術の放棄。
ただ、科学は人類の財産だと主張する一部の穏健派は危険を承知で宙へ旅立ったと書かれているわ。」
「宙へ旅立つって、相当な技術力がなければ不可能だぞ。
あと、もしかして...、放棄された科学技術の中にテレポーターも含まれてるんじゃないか?」
「ええ、書いてあるわ。テレポーターが開発されてから一段と世界の気温は上昇したみたいね。
その後はページが破かれているわ...。
破れたというより、誰かが意図的に破った感じね。」
「本自体を破棄すればいいのに、何でわざわざそんな事を...。
てか、俺が一番気になっていた、何故ミズナたちがジャポルネ語を話すのかが書いてなかったな。
破かれたページに書いてあったのか...?」
「えっと...、あっ、これ見て。その事については後書きで書いてあるわ。
んー、なになに?この人はどうやら百年近く歴史学者をやってきて、この本を書き終えた頃に魔族が現れたらしいわ。
魔族は全人類にジャポルネ語を話すように強要し、従えない者は食い殺される...⁉︎
それでこの著者は老齢で、言語の習得は難しいと判断して諦めたようね。」
「魔族がジャポルネ語を強要?何のためにそんな事を...。
...あっ!母さん、宮殿で言ってたよな、魔王は二体目の被験者だって!
そして、それはジャポルネ人だって!」
「なるほど。魔王は自分の国の言葉を世界の共用語にしたかったって仮説ね。
動機は少し弱いけど、悪くない考察ね。
まっ、今晩はこのくらいにして寝ましょうか?
コウ〜。お母さんと寝る?♡」
「一人で寝るってのバカッ!」
自分の部屋に戻ると、ミズナが誰かと電話している声が聞こえてくる。
まあ、特に気にする事でもないし今日はもう寝よ...。
・・・・・・・・・・・・・・・
翌日、俺はいい匂いで目が覚める。
リビングに行くと料理をする母さん、テーブルでお腹を鳴らしているミズナがいた。
「おっはよ〜コウ!
サヤカさんの朝ご飯できちゃうのよ!」
「あらあら、お寝坊さんね。そろそろ完成よ!」
「って、母さん魔力で料理してんのかよ!
器用というか何というか...。」
「火加減が自由自在で便利よ〜!
始めちょろちょろ、中ぱっぱ、赤子泣いても蓋取るな!って感じよ。」
「何を言ってんだよ、母さん...。」
その時、ノックと共に玄関が開いてヒルクとユータンが来た。
「お前ら、今朝は来るの早いんだな。どうしたんだよ?」
「どうしたって、俺はサヤカ様に朝食のお誘いを頂いたんだぞ!」
「せっかくジャポルネの朝ご飯を作るからヒルク君とユータンちゃんにも振る舞おうと思って!
ほぉら!お待たせ!」
出てきたのは、卵焼き、焼き魚、味噌汁に炊き立てご飯だ!
「おおー!なんか懐かしいぜっ!」
「ミズナちゃん達はお口に合うか分からないけど、私たちの国では朝は決まってコレなのよ〜!」
「「いただきますっ!」」
俺は食べながらみんなに昨日読んだ歴史書について話した。
「そんな歴史があったのね...。
アタシたちには、ほとんど隠蔽されているのよ。」
コンコンッ!
話をしていると、またノックが鳴る。
「はーい!今開けるのよっ!」
ミズナが玄関を開けると、そこにいたのは国王だった。
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