6.アイソレ
死のうとか言っているときは大抵死ぬほどの状況じゃない。死ぬほど暇ではあるのだろうけれど。クソ長い一日の最後、夜中には一度死ぬに限った。
どうしていつもこうなんだろう。こんなことそろそろ飽きてもいいはずなのに、飽きられないのは不安が無くならないのと一緒だから。足から肩から頭からゆっくり沈んでいく。遅れてきた思考が追い付こうとしてまたゆっくり溶け始める。私の思考のドロドロも、あなたの哲学的ゾンビも、分かり合えなくても想い合っていればきっと大丈夫だから。思い出のバックアップに足りない分、切り詰めた過去は丘に埋めてしまって、その瞬間、そこには甘い香りだけが残っていた。その香りは大好きなアイスのようにも思えたし、大嫌いな雨のじとじとのようにも思えた。だけど、とにかく一瞬だけだったんだ。どうでもいいと思えてしまうくらい、忘れてもいいと思えるくらい、香ったのかどうかも今では単に思い込みだったのかもね。でも思い込みとか妄想は私にとって大切で、わがままで空いた部分を埋めてくれるのはあなたでも何でもなくて私の思い。どれだけ素敵な人がいたとしても私は幸せになれない。わがままだから、私の気持ちは世界に収まり切らないくらい大きいのに、どうしてこんなに無力なんだろう。よく挨拶とか話もスルーされる。このまま私が消えたら、世界には大きなわがままの穴が残るのかな。本当の気持ちなんて打ち明けたことがないから、誰もその穴が私だって気づかない。そうだったらいいな。あなただけが気づいて泣いてくれたらいいな。
死に終えた女は急にこみ上げてくる恥ずかしさで、1人だけの部屋で小さく、吐きそうになる真似をしている。本心だからこそこんなにも恥ずかしいのだと気付いてはいるが、だからといって本心だと認めるかどうかは別の話である。酒を飲んだ後のことのように、忘れてしまえるなら忘れてしまうべきだろう。忘れてしまえるならば。