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不運のおっさん殺し屋はワガママ聖女に拾われる〜最強の暗殺者は失われた人生を取り戻したい〜  作者: 犬斗
第三章 薄幸の少女

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第26話 殺し屋の秘密を知った殺し屋

 俺たちが宿へ向かって歩き始めると、マルヴェスは消していた気配を解放した。


「クソッ、この道はダメだ」


 完全に誘導されている。

 俺一人ならどうとでもなるが、エルザを連れている俺は、それに従うしかない。 

 表通りから路地に入り、いくつもの角を曲がる。


「ちっ、誘導された。奴が来るならここだろう……」


 広い通りだが人影はない。


「はっ!」


 俺はエルザの頭を掴み、無理やり頭を下げさせた。


「きゃっ! 何?」

「ぐっ!」

「え? ヴァ、ヴァン」


 突然俺の左上腕の袖が裂け、血が吹き出した。


「エルザ、伏せていろ!」


 さらにエルザの肩を掴み地面に押しつけると、俺の右腿のズボンが裂け血が吹き出す。


 俺は地面に落ちていた拳大の石を掴み、気配がする方向へ投げつけた。

 すると、空中で真っ二つに切れる石。

 間違いなくマルヴェスの技だ。


「え? 石が切れた?」

「エルザ! あの路地へ走れ」

「分かった!」


 人が一人入れるほどの狭い路地を指差すと、エルザは両手で頭を押さえながら、身をかがめて走った。

 俺はエルザと反対方向へ走る。


「マルヴェス! そこにいるだろう!」

「さすがだな! だがお前は丸腰だ!」


 細い路地に人影が見えた。

 マルヴェスだ。


 全神経を集中させ、マルヴェスに向かって走る。

 近づく度に、足、腰、肩、腕、頬が裂け、血が吹き出す。

 だが辛うじて致命傷にならない。

 マルヴェスの攻撃に合わせ、俺は最小限の被害になるよう僅かに身をよじる。


「お前! 見えてんのかよ! 化け物め!」


 路地から飛び出したマルヴェスは、俺と距離を広げるように後退した。

 だが、俺はすぐにマルヴェスへ接近する。


「お前の道具は接近戦に弱い」

「まいったね! さすが同期!」


 マルヴェスは糸使いだ。

 細かいガラスや鉄が盛り込まれた細くて頑丈な糸を操り、中間距離から相手の首を落とす。

 巨大な岩ですら切るその威力。

 そして、あまりにも細い糸と速度から、人間に見切ることは不可能だった。


 首落としのマルヴェス。

 それがマルヴェスの異名だ。


 俺は石を拾い、もう一度マルヴェスに投げつけた。


「効かねーっつの!」


 二つに切断された石。

 俺はその隙をつき、マルヴェスの懐に入り首に向かって手刀を放つ。


「くそっ! 俺の懐に入れる奴なんていねーぞ!」


 背後に下がるマルヴェス。

 俺は薬屋で買った瓶をポケットから取り出し投げつける。

 狙い通りに、マルヴェスがいつもの癖で瓶を切った。


「て、てめえ!」


 狙い通り、油が糸に付着した。


「き、汚ねーぞ!」

「殺し屋だぞ?」

「くそが! 正論吐きやがって!」


 油が付着した糸に、日光が反射する。


「これで容易に見切れるようになった。切れ味も多少は落ちただろう」

「油がついたからって、見切れんのはお前だけだぞ! この化け物が!」


 俺はマルヴェスの糸を避けながら、手刀で攻撃する。

 そしてついに壁際へ追い込んだ。


「もう背後には逃げられん」

「お前、マジでつえーな」

「この距離では糸は使えんだろう」


 マルヴェスの糸を相手に長期戦は不利だ。

 長引くとこっちが死ぬ。


「ここで殺す」


 俺は腰を落とし、右手を構えた。


「ヴァン! その人! 魔力持ちよ! 魔術で糸を操ってるの! 避けて!」

「なんだと!」


 俺は右側面に向かって飛び込んだ。

 そのまま前転で起き上がる。


 元いた場所に視線を向けると、俺の首があった場所に糸の光が見えた。

 あのままマルヴェスに攻撃したら、俺の首は飛んでいただろう。


「お、おいおい! バラすんじゃねーよ!」

「魔力持ちは持久戦に弱いわ! もう少し耐えて!」

「嘘だろ! なんなんだよ! あの女!」


 エルザに向かって叫ぶマルヴェス。

 明らかに動揺している。


 俺はマルヴェスに視線を向けた。


「お前、魔力持ちだったのか?」

「クソッ! ギルドにすら知られてない企業秘密だったのによ!」


 俺はマルヴェスに突っ込み手刀を放つ。

 首を僅かに捻り、避けるマルヴェス。


「あー、どうする。ヴァンにバレちまった」


 俺はマルヴェスから離れず、攻撃の手を緩めない。

 再度手刀を出す。


「お前相手に長期戦なんて、魔力がもたねーしなあ」

「それはこっちの台詞だ。お前の糸は厄介だ。長期戦は避けたい」


 俺の手刀を避け、糸を繰り出すマルヴェス。


「来ると分かっていれば避けられる」

「そんなのお前だけだっつーの!」


 俺は首を左に倒して糸を避け、同時に手刀を突く。

 マルヴェスも首を捻り難なく避ける。


「一気に不利になっちまったぜ」

「お前、笑ってるぞ?」

「そうか? まあそうだな。楽しいよな。育成時代の訓練思い出すよな!」


 会話しながらも、互いに致命傷となり得る攻撃を繰り出す。


「きゃっ!」


 突然、エルザの悲鳴とともに爆発音が聞こえた。


「な、なんだ?」


 驚くマルヴェス。


「まさか! 炎の魔術か!」


 俺もマルヴェスに集中していたことで隙を突かれた。


「国家情報庁か!」

「国家情報庁だって?」


 俺の言葉にマルヴェスも反応した。


「そこか!」


 気配を探ると、エルザが隠れていた路地の反対側に建つ、家屋の屋根に二人の男を発見した。

 俺は即座に対応を開始。


「クソッ! 炎の小塊(ファチューソ)が外れた! ここでエルザを仕留めるんだ!」

「俺が殺る! 炎の小塊(ファチューソ)!」


 屋根の男たちが呪文を唱えると、再度炎の塊がエルザを襲う。


「きゃっ!」

「エルザ! 避けろ!」


 エルザはまるで水中に飛び込むように、地面へ飛び込んだ。

 砂埃が舞う。


「エルザのやつ、もしかして魔術が使えないんじゃないか?」

「そうだな。エルザはあんな避け方しないぞ」

「すぐ通信……」


 言いかけた男の首が、地面に転がり落ちた。


「邪魔すんな!」

「なっ! 殺し屋か!」


 魔術師の首を落としたマルヴェス。


炎の盾(カラッソ)!」

「ちっ! 魔術の盾か!」


 もう一人の魔術師が自身の目の前に炎の盾を作り出し、マルヴェスの糸を防いだ。


「くそ! 炎の盾かよ! げっ! もも、燃えてる!」


 油を吸った糸に火がついた。


「あいつ、バカだな」


 俺はすでに屋根に移動していた。

 魔術師の背後に立ち、火の盾に油を注ぐ。


「あんたも運がなかったな」

「ぐああああ!」


 薬屋で買った油だ。

 上質の油は勢い良く燃え上がり、魔術師の衣服に燃え移る。

 炎に包まれたまま、魔術師は地面に落下。

 瞬く間に炭となった。

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