3話 わたしのキモチ
「やばいやばいどーしよ!!!」
「坂本くんってめっちゃ優しいし、料理もできて一年生の中でもめっちゃ演奏上手だし!」
「わたし、坂本くんのこと好きだわ」
五月雨光莉は同じ部活の後輩に恋をしていた。
五月雨は学校内で、最もギャルだが、彼氏がいたことも、告白したことも、そういう経験も無かった。
「でもわたしは部長よ。全員に同じ態度で接さないと。」
五月雨の心の中で、部長としての葛藤があった。
翌朝、五月雨光莉は、いつもよりも少し早めに学校に来た。
「おはようございます。五月雨先輩。先日はありがとうございました」
挨拶をしに来たのは、五月雨が恋をしている相手、坂本颯人だ。
「お、おはよう!坂本くん!」
この言葉を口にするだけで、顔が赤くなった。
「それにしても先輩今日早いですね。何かありましたか?」
「い、いや!何も!」
「そうでしたか。では僕の教室は、あっちですので、失礼します。」
「ま、またねー!」
五月雨は深呼吸をした。
落ち着け。落ち着けと何度も自分に言い聞かせているとき、
「お、光莉何してんのー?」
「今日早くね?何彼氏????」
そこに来たのはギャル友の鈴木奏と若月瀬奈だった。
「ちょっと奏ー。光莉は彼氏作ったことないんだぞー」
奏は少し笑っていた。
「てか光莉顔赤いけど大丈夫?熱?」
光莉は慌てて心を平常心に戻した。
「いや!何でもないよ!」
「ならいいんだけど。」
「とりま教室行こ!まじ4月のくせして何でこんな暑いんだよ」
「それなー」
その後、授業の内容も、奏と瀬奈の話も全て右から左で、五月雨の頭の中は坂本颯人でいっぱいだった。
そして今日の部活動の時間になった。
やっと坂本くんに会える。
光莉の思いはそれだけだった。
「お疲れ様です。五月雨先輩」
「お、おつかれさま!!」
いつもの元気さに見えるようにしないと!
「先輩今日なんか変ですよ?大丈夫ですか?」
いけない。朝も会ってるんだった。
「大丈夫!」
「え、本当ですか?顔赤いですし、、熱でもあるんじゃないですか」
坂本くんはわたしのおでこを触って、熱を測った。
「ちょっ!」
恥ずかしさのあまり変な声を出してしまった。
「あ、すみません、!前髪崩しちゃいますよね」
「え、あ、うん」
なんでこんなに優しいのだろう。
「おでこ熱かったですし、先輩は家帰りましょう」
「わ、わかった、」
せっかく坂本くんと会える部活動だったのに。
家に帰ってから熱を測ったらそんなこと言えないくらいの高熱だった。
「38.5℃、、、まじかよ」
予想外だった。
全然ダルさも、頭痛も、何も体調不良など無かったのに。
「なんで坂本くんは気づいたんだろう」
部屋に1人、思ったことを呟いた。
「お邪魔します」
五月雨の耳に遠くから入った。男の声だった。
え、なになに。
今はお父さんはいない。
五月雨の父親は写真家で、滅多に家に帰ってこない。
全身に寒気がする。
恐怖で頭が真っ白になった。
部屋の扉が開けられる。
わたし、死んだかもしれない、。
「五月雨先輩、大丈夫ですか?」
「きゃーーーーーーー!!って、坂本くんじゃん!」
「急に叫ばないでくださいよ。心臓に悪いです」
「ご、ごめん。てかなんで坂本くんがわたしの家知ってるの?」
五月雨の家を部員の中で知っているのは、バリトンサックスパートの鈴木奏と、ユーフォニアムパートの若月瀬奈の2人だった。
「家の場所は鈴木先輩にお聞きしました」
「あー奏に聞いたのか」
坂本くんがどうやって家を知ったのかを知って一安心した。
いや、待て。
わたし、男の子家にあげるの初めてなんだけどー!!
しかも坂本くんだよ?!緊張してきちゃった、、
「それで五月雨先輩、体調どうですか?さっき飲み物とゼリー買ってきたんですが今飲みますか?」
「あ、飲む、、」
坂本颯人はビニール袋から、スポーツドリンクと、みかん味のゼリーを出した。
その時は無言で、静かな時間が流れた。
そこで五月雨は気づいて咄嗟に声が出た。
「あーーーーーー!!!!!」
「ど、どうしましたか五月雨先輩!」
「最悪、すっぴん見られた」
「なんだそんなことですか」
坂本颯人はホッとした顔をしていた。
「ギャルにとってメイクは命なんですー!」
「先輩は今も可愛いから大丈夫ですよ」
え、今なんて言った?
可愛いって言ってたよな、?
え、坂本くんが?わたしに?可愛い?
「い、今坂本くんなんて言った、?」
「な、何でもないです!具合悪い人は寝ててください!」
お互いの顔が真っ赤になった。
少し時間が経った。
ふと、五月雨光莉は坂本颯人に質問した。
「坂本くんさ、わたしに何もしない?」
な、何を聞いてんのわたし!
「え、なにもって、どう言うことですか?」
「え、いや、ほら。ちょっとえっちなことしたりとか」
自分で言ってて恥ずかしい。何でこんなこと聞いているんだろう。
「え、あ、しないですよ!!」
「そ、そうだよね、!じゃあさ、一つおねだりしていい?」
言え、わたし。言うんだ。
「はい。構いませんよ。」
「じゃあさ、」
「今日、うち泊まって行って」