1話 始まりの音
中学3年生の夏
僕は、全国大会への道から外れてしまった
新しい学校、新しい友達、不安でお腹が、、
「ねね!ちょっといい?」
「え、僕ですか?」
とても綺麗な方だと僕の心と体が訴えかけた。
「君、名前は?」
「えっぼっ僕ですか、、?坂本颯人です」
一体何がどうなったらこんな可愛いギャルが話しかけてくるんだよ!!
と心の中で叫んだ。
「そーなんだ!わたし、五月雨光莉!よろしくね!」
「よ、よろしくお願いします」
何を言っているんだ僕は。こんなギャルに何をお願いするっていうんだ。
まさか、陰キャな僕をいじめるために話しかけてきた、?
「坂本くんさ、部活決めた?」
「え、部活ですか?まだ決まってません」
「そーなの!ならさ、吹奏楽部入ってみない??」
まさかの言葉だった。
中学の叶わなかった夢を叶えるチャンスかもしれない。
「け、見学だけ、していきたいです」
僕は顔を赤くしてそう言った。
五月雨さんは、とても嬉しそうな顔を僕に見せた。
「ほんと!!ありがと!坂本くん!!」
その時、僕の心の中で、何かが弾ける 音 がした。
「はい、今のところのフルート、ピッチがあってない。気をつけて」
そう言ったのは、担任であり、吹奏楽部顧問の田中先生だった。
「はい!」
フルートパートの人達の返事はとてもまとまっていて、驚いた。
「坂本くんなんか楽器とかやったことある??」
五月雨さんは僕に問いかけた。
「ちゅ、中学の頃、パ、パーカッションを、、」
ぎこちなさが全神経を伝って自分の脳に届く。
高校生にもなって、まともに人と喋れないなんて恥ずかしい。
「え〜一緒のパートじゃないのか〜、残念」
「せ、せ、先輩は、なんの楽器ですか、?」
「わたし?アルトサックスだよ!」
「そ、そうなんですね!」
話が続かないのが自分でも簡単に理解できた。
気まづい時間が流れ、演奏なんて全然聞こえなかった。
「部長!新入部員何人くらい入りそうですか?」
「おー!ねずっち!えっとねー大体三十人くらい?」
ねずっちと呼ばれているのは、吹奏楽部トロンボーンパートの2年生、禰 裕樹だ。
「僕もあだ名で呼ばれたいな、、」
僕の心の声は小さな声で漏れていた。
「ん、坂本くん、なんか言った??」
「な、な、なんでもないです、」
恥ずかしすぎて言えなかった。
ホームルームの時間、田中先生に呼び出しをされた。
一体何だろう、何か怒られようなことをしたか
と、冷や汗が出る。
「坂本、吹奏楽部の体験来てたよな。もちろん入るよな?」
田中先生の圧は、ものすごく重く、簡単に押し潰された。
「はい、、入ります」
でも不思議だった。五月雨さんと演奏したいと思った自分がいた。
これから大丈夫かな
不安に思う自分もいたが、頭の隅に五月雨さんが居た。
この人がいるから、きっとう大丈夫だろう。そう思えた。




