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新人VTuber魔法少女『わし!』

作者: イッセ

とある一室にて

「・・・なんで、なんでこんなことになるのかなあ?」

立派なオフィスの一室。

その中でもとりわけ大きな机に座る若いの女性が、一人で頭を抱えていた。

「いや、どうしようもない事態ではあったよ?相談通り無事に解決したよ?」

彼女はとても困った事態に陥り、とある身内に助けを求めた。

結果、問題は見事解決し、彼女の会社は急成長を遂げたのである。


「・・・でも、こんなのってないよおおおおおおおお!!!」

彼女の精神的大爆死をもって・・・・・。



始まりは1年ほど前にさかのぼる。

「これは、どうしたものかのう?」

自宅にある書斎で、老人が一人、頭を抱えていた。

名を神矢源蔵といい、若いころはとある上場企業の創始者としてその類まれなる経営手腕を振るっていたのだが、息子に後を継がせた後は隠居し、妻と余生を過ごしてきた。

「時代の流れかのう、こんな事態、わしらの世代には予想できんわ。(汗)」

社会において大成功したといってもよい源蔵が、これほどまでに頭を抱えているのには、数時間前に訪ねてきた源蔵の孫娘である神矢雅子との会話に合った。


「ごめんなさい、おじいちゃん。私もうどうすればいいかわかんない。」

泣きそうな顔をしている孫娘から訳を聞くと、雅子は源蔵の立ち上げた会社のVTuber部門『2.5次元ライブ』を任されたそうだ。

当初は有用な人材をスカウトし、順調に業績を伸ばしていたのだが、所属していた男性ライバーが女性問題で炎上してしまった。

更にまずかったのは、その相手が部門トップレベルの人気VTuberだったことだ。

企業内での不祥事の上、箱売りでフォロワーを伸ばしていたこともあり、見事部門ごと燃え上がったのである。


「問題を起こした世代のメンバーは完全解体して、新メンバーで再出発を考えてるんだけど、『2.5次元ライブ』自体が厳しい目で見られてる。」

「それに、次の男性ライバーへの風当たりは絶対に強くなる。」

・・・ハッキリと言ってしまえば詰みかけである。

そもそもの話、炎上すると分かっている企業に所属してくれるライバー自体がいるかどうかも怪しい。


「とはいえ、可愛い孫娘の悩み。何とかしたいのじゃが・・・。」

とはいえ、源蔵自身70過ぎ、経営者としてのスキルや会社の御意見番としての影響力こそあるが、VTuber?なにそれ?状態である。

「まあ、最近のアニメとかオタク?文化とか勉強してみるか」

自身の立ち上げた会社のため、何より可愛い孫娘のために源蔵は動き出した。



『2.5次元ライブ新メンバー発表会』

3.いや、あんな問題起こして大炎上したんだから、もう無理だろ

5.あのくそ男が悪いとはいえ、2.5次元ライブは箱売りしてたからなあ

7.新メンバーに男いんじゃん!何考えてるんだよ神矢社長は!!

8.あそこって大きな上場企業の子会社だろ?上の判断ってやつじゃないか?

9.俺2.5に残ってる「みうぴょん」推しなんだけどさ、後輩になるとはいえ男に近寄ってほしくないわあ。

10.お?ユニコーンか?

15.いや、そうじゃなくて、絶対炎上するじゃん。みうぴょん巻き込まれるじゃん

18.そりゃそうだよなあ、そうじゃなくても男ってだけで嫌がる連中もいるしなあ

56.そろそろだな、この「リオン」ってのが男枠だろ?

58.そりゃあ、事前発表的にそうだろ?最後の奴は魔法少女イメージらしいし

60.イケメンの好青年路線か、これでも叩かれるだろうなあ


2.5次元ライブの新メンバー発表配信中。

全5人のメンバー紹介は半分まで進み、4人目のメンバー紹介まで進んでいた。

今回の新規ライバーは女性ライバー4人男性ライバーが1人。

事前発表された衣装から、次の3人目が男性だと目されていたのだが・・・

「どうも、2.5次元ライブ3期生のリオンです!子羊ちゃん達!よろしくね!」

カジュアルスーツを模しした衣装に身を包んでいるものの、聞こえてきたのはハスキーボイスではあるものの、明らかな女性の声であった。


掲示板

81.はあ?女性・・・だよな?

83.かっこいい系だけど明らかに女の人だろ?

85.?????結局、男装の女性枠ってことで5人組なのか?

86.いやそうだろう!あんな炎上があったのに、男性ライバー入れるとか、疑問だったんだよ!

95.コメントも落ち着いたなあ、いずれにせよ、これで安心して推し活できるわ


一時荒れていたコメント欄や掲示板も、結局男性枠は男装女性が演じている設定上でのものと解釈され、落ち着きを取り戻していく。

そして、最後のメンバーとして魔法少女設定のライバー紹介が始まる。

「それじゃあ!最後のメンバーをしょうかいするよ!」

今回、司会として呼ばれていた2期生の先輩VTuber『メルン』が話を進める。

メンバーの簡単なプロフィールしか知らされてなかった彼女も、リオンの登場で少し焦ったものの、コメントや掲示板と同じ結論に至ったらしく、落ち着いて最後のメンバー紹介へと移る。


「魔法の国から疲れた現代社会を癒すために派遣された正義の魔法少女!可愛い魔法で元気をお届け!魔法少女!」


「わしじゃああああああああああああ!!!!!!」


女児向けのメルヘンなBGM


ピンクと白を基調としたフリフリの魔法少女服


手に持つのは魔法のステッキ


顔はジジイ!


声もジジイ!!!


「元気の魔法をみんなにお届け!自分の元気は養命酒!魔法少女『ミナメル』じゃ!」

「「「ぎいやあああああああああああああ!!」」」

コメント、掲示板、VTuber達の悲鳴が重なる。

阿鼻叫喚ともいえる事態がネット上で起こっていた。



「ま、まあ、気合いを取り戻して質問コーナーに進んでいくよ!」

司会者として比較的早く正気を取り戻したメルンは、動揺が抑えきれないまでも役目をこなしていこうとする。

「それじゃあ、簡単な自己紹介からよろしくね?」


「うむ、2.5次元ライブ3期生ミナメルを名乗っておる、神矢源蔵76歳じゃ!よろしくの!」


「ネットリテラシー!?それ、ガチの個人情報だよね!」


VTuberは2次元のキャラクターとして配信するコンテンツである。

リアル情報は当然NGのはずだが、しょっぱなからこのジジイはぶちかましてくる。


「いや、ワシの名前なんかグループのHPにのっとるし、別にいいじゃろ?」

「えっ?あっ!神矢源蔵さんって本社の創始者じゃないですか!!」


「うむっ!!コネ採用というやつじゃな!!」


「コネてる本人が採用されてくるのは前代未聞ですが!!」


メルンのツッコミがさえわたる。

最早本社とか元会長とかの情報はメルンの頭から抜け落ちていた。


「ま、まあ、次に行きましょう。今回、唯一の男性新人ということで、視聴者からいろいろな意見が寄せられていますが意気込みとかはどうですか?」

「うむ、女性VTuberとのからみなど、色々厳しい意見が出ているのは知っとるが、ワシであれば特に問題ないじゃろう?」


「・・・・それは、親会社の元重役という点からですか?」


「イヤ、年齢的にワシもう勃たんし・・・」


「急に下ネタ突っ込んでくんな!!」


周りの反応を置いてきぼりにして、2人の掛け合いは続いていく。


「まあ、そんなに長いこと続けるつもりはないが、VTuberとしてやれるだけやってやるの精神で頑張っていくぞい!」


「ああ、前回の不祥事による親会社からのテコ入れみたいなものですか・・・。あくまで一時的な処置であり、男性ライバーが入りやすくなるための試金石のような。」



「イヤ?リアル寿命的にいつまで続けられるかわからんという話しじゃよ?」


「コメントしにくいなあ!!」


「というか、立場上心配しとったが、遠慮なく絡んでくれるのお先輩。」

「なんか、ツッコミどころが多すぎてお立場が頭から抜け落ちてましたよ」


「気に入った!今度コラボせんか?本社の役員共も呼ぶから安心ぞい!」


「地獄絵図です!!丁重にお断りします!!」


完全に回りがおいて行かれている中、2人の話は進んでいく。

自己紹介コーナーが終わり、メルンは何とか次のコーナーの説明を始めた。

「はあ(溜息)、続いては3期生の新人たちに、自分の宝物ということで色々持ってきてもらっています。」

「前のリオンちゃんはペットの猫ちゃん写真でしたが、ミナメルさんは何を持ってきてくれたのかな?」


「当たり障りのないものだとメルン嬉しいな!!」


「うむ、とりあえずワシは孫娘の写真じゃな!!可愛いじゃろ?」

「なるほど!相手がメルン達の社長なのはともかく、当たり障りはないか・・・・・なにこれ?」


「雅子が家に泊まった時におもらしした時の写真じゃよ?」

「恥ずかしくて泣いとるが可愛いじゃろう?」


ぷるるるるるる!ぷるるるるるる!!


源蔵の画面から携帯の着信音が鳴り響く。


「なんか雅子から電話が掛かっとるの?この時間大事な用事があると言っとったのに仕方ない子じゃ。」


「さっさと出て、怒られてしまえ!!」


「配信中なんじゃから、出るわけにはいかんじゃろ?何言っとんじゃ先輩?」


「正論だけど、納得いかねえ!!」


ぷるるるるるる(# ゜Д゜)!!ぷるるるるるる!!怒!!


心なしか着信音から怒りのオーラが感じる気がするが、源蔵は容赦なく携帯の電源を切る。

配信中なのでしょうがないのだが、社長の雅子は哀れとしか言えないだろう。


「で!これ以外にも可愛い写真はいっぱいあってじゃな!!」


「後が怖いから!それ以上は辞めろやジジイ!!」


結局、神矢雅子社長の恥ずかしい写真は追加で3枚ほど紹介されることとなったのだから・・・。



結果だけ見れば、2.5次元ライブ3期生のデビューは大成功に終わり。

神矢雅子の受け持つVTuber事業は、業績の回復に成功した。

それどころか、魔法少女「ミナメル」の話題で、2.5次元ライブはVTuber事務所としてもトップレベルまで事業を拡大できたのだが・・・。



「第2回放送魔法少女ミナメル『急募!最近孫娘が口をきいてくれない!対処法求む!!』」


「というわけで、第2回目の配信なわけじゃが・・・・前回の放送から孫娘が口をきいてくれないんじゃ(´;ω;`)なんでじゃろう?」


コメント「そりゃそうだろう!!」

まあ、2.5次元ライブはこうして生き残ったそうな。


仕事中に考えた妄想です。

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