南瓜
シャリッとした歯ざわり。噛めば噛むほど細かくなり、頑固に口の中に残る。皮も硬く、青っぽさを感じる。瓜の香りが鼻をくすぐる。
「そうか、南瓜は瓜だったな」
すっかり忘れていた。つまりこいつは生焼けだ。私は南瓜の炒め物作りに、失敗してしまった。
やはりひき肉と一緒に炒めなければ良かったのだろうか。切る時に、もう少し薄めにすればよかったのか? 無計画に料理したのが一番の敗因かもしれない。
そうだ、レンジで温めよう。これ以上ひき肉を焦げさせてはいけない。醤油で味付けをしているから、フライパンで焼くとなおさら焦げる。
私は、フライパンに入っている南瓜とひき肉を耐熱皿に移し、ラップをかける。電子レンジに入れて温めた。ピーッという音と共に、電子レンジのドアを開けて中身を取り出す。
やけどに気をつけながらラップを取ると、よだれが滴りそうな醤油の匂いと、嗅ぎ慣れた甘い、南瓜の匂いが、湯気とともにやってきた。
炒め物ではなくなったが、見た目通りのものが出来上がった。早速ご飯をよそい、お茶を用意して夕飯にする。
南瓜を口に入れる。ネトっとした甘みが、よく行く老舗の芋屋の焼き芋と似ている。なぜ瓜なのに、さつま芋や栗を連想するような食感なのだろうか。先程の生焼けとは随分印象が変わった。
醤油の味もしっかりしていてご飯が進む。これはお茶ではなくてビールだったか。だが今のところビールは在庫切れだ。
南瓜とひき肉のハーモニーは、大げさなのだが、天にも昇りそうな気持ちになった。口の中でとろとろと溶ける南瓜に、食欲の秋は最高だなぁと、身にしみた。




