ミンチ
自分の身体がぐちゃぐちゃになる。そんな怖いゲームがある。そして今私の心はそんなゲームのシナリオみたいな状態。
何をしても心が動かず、何に怯えているかも分からず、常に身体が緊張して冷や汗が出る。人が人に見えなくなる。肉の塊に見えるならならまだしも、身体一つ一つのパーツがツルツルとしたプラスチックのようにしか見えない。食欲もわかず、匂いに敏感になっているのかどんな人の体臭も気持ち悪くて吐き気がした。
どこに行っても元気が出ない。たちどまっても、ひたすら歩いても、ひたすら足に鞭打って走っても。景色や天候が変わっても。私は目が使えるはずなのに何も見えず、何も感じなかった。ただ胸の奥にドロドロとした酸が溜まっていって内部を溶かしているかのようだった。
死ねたらどれだけいいだろう。そんなこと考えてもろくな事はないとしっているのに、体をバラバラのグチュグチュにしたくて仕方ない。ミンチにする器械に腕を嬉々としてぶち込み、耐えられそうにない痛みに笑顔でよだれを垂らしながらその光景を見てみたい。
耳も上手く使えないから、上手く人の言っていることが聞き取れない。きっと大事なことを言っているんだろう。でももう私には届かない。そこまで滅入っている。誰ももう助けられないところに来ている。
もう耐えられない耐えられない。私は長らくじっくりと研いだ包丁と、長らく乱暴に使った錆びた包丁をキッチンから取り出して、その二丁の包丁に熱い視線を注いでいた。
やがて私はウイスキーを取り出し、炭酸水で割って椅子に座りながら飲む。ずっとじっとしながら、いつしか私は眠りについた。