第七話 ざわざわする心
ユキのまたとない申し出にパティは喜んだ。
まさか森で会った人が薬草を持っているとは運がいい。
ユキは青いワンピースを着ていたため、おぶさるためにパティがズボンを貸してあげた。
パティはいつ人間に戻っても良いように、服を一式持ち歩いている。
赤い唇の少女ユキは薬草に詳しく、道中色んなことを教えてくれた。どうやらいい人ではあるようだ。
パティが欲していた薬草はどうやら今の時期には生えていないとのことだった。どうしてもパティが見つけられなかったわけだ。
そしてパティとネルは木の中で話し込んでいて気が付かなかったが、雨は少し前に止んでいたらしい。
雨上がりすぐにしか咲かない薬草をユキは集めていたとのことだった。
「ネルさんごめんなさい。私重たいですよね?」
「全然重たくないですよ。いつも何を食べてるんですか?」
「森で獲れた色んなものを食べることが多いです。今きのこのシチューがあるので、良かったら食べていってくださいね。この森のきのこは美味しいんですよ」
薬草が手に入る目処がたったというのにパティの気持ちがちょっぴりざらつく。
ネルの言うやれる見込みとは何のことだったのか、今すぐ聞きたいがユキがいたら聞きにくい。
「きゃっ!!」
「ユキさん、鳥だから大丈夫ですよ」
びっくりしたユキが思わずおぶさっているネルにぎゅっとしがみつく。
「ネルさんすみません。思わずついくっついちゃいました。」
そういうユキの顔は照れているようで、こんな美少女にこんな顔をされて喜ばない男はいないだろうなとパティは思った。
一方ネルの顔を見ると、乾いたボサボサ頭でその表情を窺い知ることはできなかった。
「…………。
…………ネル、ごめんちょっといいかな?」
パティはユキを下ろしてもらいネルを呼びつけた。
別にこんなことをしたいわけでは無いのだが、パティはなんだか嫌な胸騒ぎがして、ネルと話をせざるを得なかった。
「パティさん一体どうしたの?」
いざ聞かれるとなんと言っていいかパティはわからなくなった。早く2人で帰りたいだなんて、薬草を欲しがったのは自分なのに虫が良すぎる。
脳みそをフル回転させてパティはありったけの理由を絞り出した。
「……やっぱり知らない人の家に行くのは危ない気がする」
「そうかもだけど、怪我してる彼女を今更置いてはいけない」
「そうだけど……」
ネルはパティの表情を伺う。
「じゃあ家には上がらずそのまま帰ろう。」
あまり彼女を待たせるわけにもいかないからと、ネルはユキの元に戻った。
森の木々がざわめく。早く帰りたくてパティはネズミの一歩を大きくして歩いた。
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