第六話 森の少女ユキ
「……す、すみません。まさか中に人がいるとは思わず」
「いえ、我々は大丈夫ですから。貴女落ちてきたみたいですけど身体は大丈夫ですか??」
パティは呆気に取られた。
まさか木から華奢で……庇護欲をそそるような女性が落ちてくるとは思わなかったからだ。
それにこんな女性がまさか木に登っているだなんて想像がつかなかった。
ネルが対応してくれているが、とっさのことでパティは何もできなかった。
「パティさん。この人、足を挫いたみたいなんだ。気に生える薬草を採っていて足を滑らせたんだって」
「いつもは大丈夫なんですけど雨で幹が濡れていて……。すみません」
そういう女性の白い足首はぽっこりと腫れていて痛そうだった。
女のパティからしてもどうにかしてあげたくなる女性だった。
「ここから15分程度歩いたところに住んでいるので、少し休めば家に帰れると思います」
そう言って彼女は笑顔で返したが、休んだからと言って歩けるようになるようには見えなかった。
「あのっ!もしネズミの毛が嫌じゃなければ、私が家まで肩を貸しましょうか?」
「そんな、申し訳ないです」
「パティさん。雨も上がったみたいだし、この人は僕がおぶって行くよ」
すみません。いいんですか。などという女性は、パティからの申し出よりも、ネルからの申し出に嬉しそうにしていた。
確かにおぶってもらった方が足も痛くないだろうし、嬉しいだろうとパティは納得する。
「お礼と言ってはなんですが、お二人とも濡れているようなので、少し家で温まっていってください」
「ありがとうございます」
夜になったら森には魔物が出るという。
寮には夕方までには帰らないとならない。
パティは空を見て残りの時間を思案した。
「道すがら薬草を探しながらでもいいでしょうか。私、青いイチョウみたいな薬草を探しているんです」
この状況でもまだ薬草?なんてネルの視線が痛いが、授業も日頃あるため森にさける時間は多くない。
「その薬草。うちにもしかして在庫があったかもしれません。もしあったら差し上げますよ」
そういうと赤い唇の少女はまるで御伽話のお姫様のように微笑んだ。彼女の名前はユキと言うそうだ。
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