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第一話 パティの運命

魔法実習のパートナーは顔を伏せ震えながら膝をつき、ひたすらに謝ってきた。そんな彼をよそに大きなネズミは小さくなった手で彼の胸ぐらを掴み、魔法の杖を首元に押し当てていた。


「一体全体どうしてくれんのよこれぇっ!!!」


他の生徒達が騒ぎに気がつき、講堂がざわざわし始める。


サンモニカ魔法大学に通う、パティ・モーズレイは栗色の巻き髪で小柄な女性。同級生からはまるでリスみたいだねと言われていたが、あろうことか今では焦茶色のふわふわ。


全身にびっしりと毛が生え、人間サイズのネズミになってしまっていた。


「ごめんごめん!!悪気はなかったんだ!!」


「悪気がなくてどうしたらこんな間違い方をするのよ!!」


この世界には目に見えない妖精がいて、人間は妖精の力を借りて魔法を使うことができる。

訓練しないと自由に扱うことができるようにはならないが、誰しもがその素質を持って産まれてくる。


サンモニカ魔法大学に通う多くの生徒達は、将来魔法を活かした職業に就くことを目標にしており、授業を通じて魔力の扱いに関する訓練に励んでいた。


今日の授業は、紙の輪っかを花輪に変える授業だった。

実は生徒達から人気のある授業で、花輪ではなくティアラに変えて告白する人も何人かいる。


実際にパティの友達は、授業前に男子生徒から今日の実習のパートナーになってくれないかと誘われていた。


パティも良い年頃なので、そのようなシチュエーションに憧れないわけではなかった。

ただ、彼女にはすでに好きな先輩がいたため、何もないことにがっかりすることもなかった。


どんな素敵な花輪を作ってもらえるのか、純粋に今日の授業が楽しみだった。


それがまさかこんな仕打ちをうけるとは……

たまたま隣の席になりパートナーとなった男子生徒は、もさっとしておりお世辞にも魔法が得意そうには見えなかった。

それにしても想像以上だ。


「この授業で相手をネズミに変えた生徒は初めてだわい」


おじいちゃん教授が長い白髭を撫でながら、パティの元へやってくる。

目を細めてじっとネズミになった彼女を見つめた。


「ネルくんや」


「はい」


パティに胸ぐらを掴まれたままの彼が恐る恐る返事をする。


「ちいとこの魔法、複雑なことになっておるでな。パティを医務室のオババのところまで連れて行ってあげなさい」


「すみません。わかりました」


失敗は誰にでもあることだから気を落とさずに。

おじいちゃん教授はそう言いながら、教壇に戻って行った。


「え?私大丈夫なんだよね??」


おじいちゃん教授の落ち着きように、逆に不安になるパティ。


「ごめんなさい。とりあえず医務室に行って調べてもらおう」


ネルと呼ばれたもさもさ男子は、小さくなったパティの手を引いて医務室へと向かった。


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