竜槍ゲイボルグ
ところ変わって佐助が守る志賀の街道。
「おい!森隊!我より前に出るな!我は必殺の兵器を用意している!我が左手に集え!出でよ!オイ車!」
「「「「おぉぉぉぉ〜〜!!!!」」」」
そうだ!この好奇な目だ!我に向けられるはこの歓喜だ!
「佐助君?暁様が居れば呆れられるところじゃない?」
「おい!風華!お前は愛い顔してるのに小言が多い!」
「へぇ〜?そんな事言うんだ?せっかく今度二人で美味しいお団子食べようと思ったのに?」
「!?!?まっ、待て!そ、そうだな?我が間違っていたな。うん。よし!団子か!?しょうがない!この戦が終われば共にーー」
「佐助殿とやら?お戯れは敵を屠ってからにしてくだされ。我ら森隊は如何様に?」
「チッ!そこで見ておれ!我がこの戦車なる物、以後オイ車にて敵を一掃する!森隊は仕留めきれなかった者を討ち取れ!我らは朝倉だろうが武田だろうが首に興味はない!」
「それでは美味しい所は我らにいただけると?」
「お前達森隊はここを死守して生き残り伝説となれ!宇佐山の戦いにて森隊は鬼神の如き活躍だったとな?皆の者狩り時だッッッッ!!!!」
「佐助君?」
「彩葉か?どうした?」
「私にオイ車の副砲塔任せてくれる?風華はレミントンにて狙撃に徹した方がいいのじゃない?」
「そうだったな!よし!副砲塔は彩葉に任す!我の邪魔をするな!我の主砲を合図に撃てッッ!!3 2 1 主砲!発射ッッッ!!!」
ズドォォォォーーーーーーンッッッ!!!!
その音はこの街道だけではなく付近の浅井、朝倉、旧六角、延暦寺など敵が居る陣全てに鳴り響く図太い低い音だった。
「「「・・・・・・・・・・・・・」」」
「試しに撃ったわけだがこれはひでぇ〜な?敵も味方も沈黙してらぁ〜!」
「さ、佐助殿!?そのおいしゃなる物から放たれた物は・・・」
「あん?これか?これは九六式十五糎榴弾砲だ!だがさすがの我もこの威力には驚いた!街道の木々が薙ぎ倒されている!これじゃ破壊戦車になっちまう!主砲は封印だ!このままブッパしてたら暁様に怒られちまう!おい!彩葉!風華!我が敵の矢弾から守ってやる!撃って撃って撃ちまくれ!!彩葉!制圧射撃!」
「了解♪」
ドッドッドッドッドッドッドッドッ
「なっ、なんじゃあれは!?雷鳴が聞こえたと思うたら木が消えた!」
「天罰じゃぁぁぁぁぁ!!!!!」
「う、狼狽えるな!あんな物連発できん!隠れてあれを始末しろ!なんとしーー」
ズドンッ
「グハッ」
「殿!!!!!」
「はい!一人落ちた!」
「風華!見事だ!ほら!もう一人騎乗武将が居るぞ!!」
「おのれ!我が弟をーー」
ズドンッ
「はい!二人目落ちた!」
「森隊の諸君!待たせたな!まだ初戦で敵もまばらだが狩るぞ!我に続けッッ!」
「「「オォォォォーーーーー!!!」」」
「ふはははは!!!やはり戦とは剣で語るものよ!おい!我は大橋家 支配内 佐助ぞ!我こそはと思う者はこの首取って手柄とせよ!」
「一時退却ッッ!!退けッ!退けぇ〜!」
「お、おい!?こら!待て!!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
〜穴太に向かう街道〜
「さて・・・そろそろ敵が湧いて来たわね?」
「小雪様はなんだか嬉しそうですな?」
「そう?かもね・・・その昔、暁様と共にプレイヤーと戦った事を思い出すわね?特に常陸での戦の事をね・・・」
「ぷれいやー?なんだその意味は?奥方殿と大橋殿は常陸のご出身で?」
「あら?あなた中々粋な甲冑着てるわね?常陸?違うわよ?暁様は生まれは伊豫国よ?だからたまに変な方言が出るでしょう?」
「伊豫国・・・・これまた海を渡り遠いところに・・・」
ズドォォォォーーーーーーンッッッ!!!
「あら?あの音はオイ車の主砲の音かしら?佐助隊の方は始まったみたい。出身なんかはあまり関係ないですけどね?さて・・・森隊の・・・あなたは?」
「俺は加治田出身の井戸宇右衛門。森様の次に槍の名手と自負している」
「へぇ〜?あなたがかの有名な傾奇者の井戸宇右衛門さんね?覚えておくわ。そうね・・・折角だからあなたの槍の腕も見てみたいわね?私がこの軽戦車の37㎜短戦車砲にて敵を圧倒するから撃ち漏らした敵を屠ってくれるかしら?」
「へっへっ!さすが奥方殿は分かってくださるか。時代は鉄砲に変わってきてもまだまだ刀や槍の腕も必要かと」
「えぇ。兵器だけで制圧は無理よ。森隊には期待しているわよ?黒夜叉隊は私の合図と共に銃を撃つ!市華?あなたはこの手榴弾・・・焙烙玉を敵に投げ入れて?」
「はっ。畏まりました!」
「殺るわよ!3 2 1 始めッッ!!!!!」
ドンッッッ
バンッ ドォンッ ドォンッ
「おぉぉぉ〜〜!!!織田の女!やるではないか!その訳の分からない物にて我が軍の出鼻を挫かれたではないか!」
「あら?褒めてくださり光栄だわ?志賀の街道のオイ車より幾分も小さい主砲ながらそれに臆さないとは天晴れ。あなたの名前をお聞きしても?」
「俺は朝倉家家臣 小林吉隆だ!見慣れぬ上方の鉄砲とて恐れる俺ではないぞ!!!脇備えの軍、全軍に次ぐ!!なんとしても坂本を突破し京に向かうぞ!!突撃ッッ!!!」
「あぁいう突撃の相手は疲れるわね。望月様?敵を殺すのではなく傷を負わせる攻撃にしなさい?少しでも進軍を遅らすように。みお?あなたは副武装の7.62㎜機関銃を任せます。街道脇の林の方も注意しなさい!」
「「御意」」
バッバッバッバッバッバッバッバッバッバッ
ドォンッ ドォンッ ドォンッ
「ウッ・・・・」 「グフッ・・・」
「小林隊!銃なんかに臆するな!!気合いで敵の喉元に刃を立てよ!」
「小雪様!敵の進軍止まりません!」
「しょうがないわね?本当は肉弾戦はする予定じゃなかったんだけど・・・前に姉川で倒した真柄何某氏ではないけど皆に、かつて暁様や如月様、如月様護衛アンドロイド闇千代様達と戦った兵器なしの肉弾戦のみの、在りし日の戦いを見せてあげましょう」
「在りし日の戦い!?奥方殿!!その話を今度俺に聞かせてくれ!!!」
「もちろん。井戸様が敵の名のある首級を頂戴すれば教えてあげましょう。久しぶりに使うわね?出でよ!竜槍ゲイボルグ!」
「「「おぉぉぉ〜〜!!!」」」
「なんと神々しい槍なんだ!?」
「呑気に新しい槍を取り出すとは愚か也!もらったッッ!!!!」
ガキンッ!!
「な、なに!?死角からの攻撃を防いだだと!?」
「あら?そんなにかしら?少々人間のあなたの動きに驚きはましたが所詮は遊戯。本当の死合いの動きとはこうするのですよ?」
ビシュンッ
「あっ、あの動きは姉川で見せた暁様でも真似出来ない小雪様独特の瞬脚という技ではないか!?」
「望月様?私の分析はいいから、あなたはこの突出した小林何某さんに敵が追いつけないようにしなさい!」
「はっ、はい!すいません!」
ガキンッ!!
「クッ・・・・女!やるではないか!少々熱くなりすぎたようだ!」
「あら本当にあなたは面白いわね?私の愛槍 竜槍ゲイボルグの突きを刀で軌道を逸らすなんて並の人間ではできないわよ?ですが・・・これはどうかしら?」
「奥方殿ッッ!!!!!!奥方殿はやらせん!!!!お前は俺が相手だ!!!!奥方殿!お下がりください!この者侮っていましたが少々ずる賢いようで・・・右手の懐から何かを取り出す動きをーー」
「知ってるわよ?恐らく針のような物でしょうね?はたまた草鳥頭のような毒を仕込んだ何かかしら?」
「チッ」
「知っていて受けるおつもりでしたか!?」
「いえ?懐から手を取り出した瞬間に斬り落としてさしあげようと思っていたまで。でもあなたの動きも中々でしたわよ?礼を言います。そうですね・・・お礼にあなたに森様のような槍の頂の戦いを見せましょう。私は大丈夫。下がりなさい」
「で、ですが・・・」
「井戸様?あなたの腕をまだ見ていませんが森様程ではないでしょう?あなたにもできる技を見せてあげます」
「もう良い!女とて容赦せぬぞ!」
「最初からそうした方があなたのためではなくて?小林さん?激流を制するは静水」
「ふん!戯言無用!!槍は接近戦に弱い!俺の飛び込みは甘くはーー」
「掛かったわね!?下り飛竜!!」
ガキンッ! ズシャッ!!
「おぉぉぉぉ〜〜!!!!」
「小林様ッッッ!!!!!」「殿ッッッ!!!!」
「お前等!!勝ち鬨を上げよ!!朝倉家 小林吉隆!小雪様が討ち取ったり〜!!!!」
「「「えい!えい!オォーッ!」」」
「「「えい!えい!オォーッ!」」」
「チッ!あの猪武者が!初日にあんなに突出してどうする!だが・・・あの女は脅威だ。女と見ていればここは突破できぬ。まずは探り合い。小林を失ったのは予想外だが自業自得。どうせあんなに突出しては戻っては来れなかったであろう。連射できる鉄砲も脅威だ。無策で突撃するのは愚将のする事。おい!脇備えの小林の隊の生き残り共ッ!!お前達はワシが!山内景秋が面倒を見る!一度退けッ!!!!」
「森隊!生き残りの馬鹿共を討ち取れッ!!!」
「井戸様?それはお辞めなさい。あの山内という男。味方が殺られたというのにあの落ち着き様。何か考えているかもしれません。私は味方を失いたくありません。追い討ち無用。私達はここを通さなければ勝ち。冬になれば敵は退くでしょう」
「分かった。森隊!一時待機!敵の動きを見張っておけ!」
さて・・・一応名のある将を一人討ちましたが暁様の方はいかがですか?電話しましょうか・・・暁様に会いたい!私を褒めてもらいたいですが我慢。我慢。暁様の野望のためもっともっと頑張らないと!
「奥方殿!先の技はなんですか!?」
「はいはい。あれは………」




