野田福島の戦い完
「大殿様。暁様お帰りなさいませ。見様見真似で作りました」
「ほう?お主は黒川と申したな?」
「はっ」
さっきの場所に戻ると黒川さんが俺の真似でラーメンを作ってくれていた。茹て粉末を入れるだけだから間違いはないと思うが。
「暁様もどうぞ。お疲れ様でした」
俺が何をしてきたか分かってる口調だった。当初は適当に日々を過ごし帰り方を模索するつもりだったが気付けばガッツリこの時代に染まってしまったな・・・。
「相変わらず大橋が出す物は美味いな。後ろの者はまだ来ぬか・・・。鍛錬が足りんようじゃな」
どんな鍛錬させられるのだろう。いやいや俺は勘弁だけど!?
「黒川さん?ありがとう。美味いですよ」
「はっ。お褒めくださりありがとうございまする」
「良い配下を持っておる。最初は何奴かと思い、なんなら貴様には恐怖すらも感じたが蓋を開けてみれば未来人だろうが何だろうが変わらんな」
「私に恐怖ですか!?」
「そうだ。あの装甲車や戦車だったか?あれがワシに向けば容易く殺られていたであろう。今でも攻略の糸口が見つからぬ。だがワシは貴様を信用しておる。宗易が先まで来ておったろう?」
「会いましたか?」
「ここから去る途中にな。軽く話したが彼奴が貴様に茶を振る舞いたいと言っておったな」
「なんか私の考えを言ったのですがもっと私を知りたくなったと言われました」
「良い。貴様は貴様のやりたいようにしろ。そうだな・・・この際貴様の思う事を全て言え!ワシが良いと思う事は後押ししてやる!」
「明け方まで時間が掛かるかもしれませんがよろしいですか?」
「ふん。どうせ明日まで始末せんと眠れんだろう」
そこから俺と信長2人にしてもらい、黒川さんに小雪達に連絡して古橋城まで来てもらう事にした。
さっき千利休に言った事と同じ事を信長に伝えた。やはりこの人は考えている事が現代人に近い。だからか問答が早くて助かる。
「して、他国から人を雇い間者が増えるがそこはどうするのだ?」
「そこはまた別の隊を作ります。新しく来る者を尋問したり嘘を吐けない物も私は持っています」
「うむ。ではそこは問題ないと。だがその話を真に進めるには敵が多すぎる」
「そうですね。順を追って言いましょう。まずここを拠点に野田城、福島城を攻撃するかと思いますが私の知ってる世界では本願寺も攻めてきます」
「なんだと!?何故それを早くに言わんのだ!?」
「個人的に全員が全員とは言いませんが本願寺には頭を悩ませてるかと思いますので私が対処します。そのための装備も持って来ております。織田様は焦らずドンッと構えてお待ちください。本願寺が攻めて来た。故に攻撃したという大義名分が要ります」
「できるのか?」
「できます。本来ならこれから10年本願寺と戦う事になるのが私が居た世界の歴史ですのでこの一戦とまでは言えませんが、本願寺が再起できないくらいまで戦いに参加した人間を撃破しましょう」
本来ならまだ時間はあるはずだが森さんが亡くなる世界にはしたくない。信長の弟もまだ会った事はないが死ぬ運命だけど食い止めてやる。
そこからまた内政の話に戻す。
「とこのように、織田家主体となり経済を活発化させます。同時に治安も良くする必要がありますのでこの戦が終わり次第私が強制的に岐阜を発展させましょう。細かく言えば銭を新しく作りたいのと、意識改革をするため内政向きな人材が欲しいところです。この功績を奇妙丸様にと私は思っております」
「分かった。ワシもお前がする事を見て学び適材適所な人を用意する。だがまずは三好を駆逐せねばならぬ」
「お、お館様!!!!申し訳ございませんぬ!!」
「大橋!この話はまた今度じゃ!やっと来おったわ。貴様等!なにをやっておったのだ!!!もう明るくなってきておるだろうが!!!」
「暁様、今到着致しました」
「あっ!小雪お帰り!お疲れ!それにみんなもお疲れ様!大丈夫だったか?」
「大丈夫です!みんな擦り傷一つもありません!」
それから報告を聞く事になったが聞けば本当に何も危ない事もなく制圧できたと。捕縛した三好康長は無事に信長に引き渡したそうだ。まあ俺は見てないけど多分処刑だろうな。
「奥方殿?ありがとうございまする。某の部下をよく使ってくれたみたいで」
「あら?さすが河尻様の配下と思うくらいの働きでしたよ?私は指示するだけで1人が100人の働きをするかのようで楽に制圧できましたから」
「ははは!ではまた共に任務に就く事があれば・・・。大橋殿?例の茶会の時は必ず!」
「分かりました!また言いますね。あっ、最後に黒川さん?河尻様に電話を渡してあげて!使い方もね!」
数分後に使い方を聞いてお礼を言われた後、信長がこちらにやって来た。
「皆の者!ご苦労!本当に少人数で何の損害もなく二つの城を制圧する事ができた!黒夜叉隊の名に恥じぬ働きである!まずはお主達は休んでくれ!ここからは他の者にも手柄をやらんといけないからな?ははは!」
「黒夜叉隊を代表してお礼申し上げます。まだ目標の野田、福島城を奪取できておりません。何か任務がありましたらお声掛けよろしく、お願い致します」
「うむ!よく言った!皆の者もこの者達を見習うように!大橋?少し休め」
信長から労いの言葉を貰い俺達は後方に下がりテントで各々休むように言った。その小雪と俺のテントでは信長に言った事を小雪にも言った。
「では本格的に内政にも口出しなんかをするという事ですか?」
「そうなるだろうね。小雪達が俺の名前を残すように頑張ってくれていただろう?俺も俺のやりたいようにみんなが幸せになる世界を作るように頑張ってみるよ」
「・・・・・暁様・・・・よくぞ言ってくれました!では、ゲームの時のように改革ですね!」
「そうだな。この戦が終われば本格的に史実とは異なると思うから俺達が歴史を作るんだ!小雪!!一緒に頑張ろうな!」
「はいっ!!!!」
「それと・・・多分本願寺は出張ってくると思うから俺達で森さんを助けるつもりだから。この野田福島の戦いは織田様に任そう。2日ここでみんなを休ませて森さんの陣まで下がろうと思う。そのつもりで」
「畏まりました。では私が虫型カメラで監視しておきましょう」
「悪い。頼む」
早朝だが俺達はそのまま休み夕方に目が覚めた。信長はさすが総大将と言わんばかりに徹夜で指示を出しているらしい。
俺達が寝ている間に他の部隊も到着して、本陣を天王寺に置き、天満が森、川口、渡辺、神崎、上難波、下難波、浜の手という場所に陣取りをし、天満が森に主力で摂津の地理に詳しい三好義継、松永久秀、和田惟政達を配置したらしい。信長は天王寺に移ったと聞いた。
誰に聞いたかって?やたらテンションの高い竹中半兵衛にだ。
「暁殿!!!!おめでとう!!!」
「そんな大きな声で言わなくてもいいから!!」
「いやいや!何回でも言わねばならん!!おめでとう!!」
なんでこんなにテンション高いんだ!?
「あら?竹中様?こんにちわ」
「奥方殿!こんにちわ!二つの城を制圧おめでとうございます」
聞けば信長が俺のために仲の良い半兵衛さんを呼んでくれたみたいだった。俺の斎藤龍興を斬首した事を憂いてだろう。ありがたいけど平気だ。
「わざわざ半兵衛さんすいません。最初は変な感じがしましたが平気ですよ」
「ならば良し。てっきり、佐助殿や喜助殿のように狂ってしまうかと思いましてな?ほほほ!」
「おい!我は狂ってなんかおらぬぞ!!!左手が疼いてしまうのだ!」
うん。あんな風に俺は絶対にならないから大丈夫だ。
「しばらくは膠着するでしょうな。何でも細川信良、三好為三、香西長信らがこちらに寝返りをする気配があるのと、将軍も奉行衆を連れて中嶋城に出向くみたいですな」
「う〜ん。黒夜叉隊集合!!!しばらく膠着するみたいだからしっかり休むように!天下の大軍師竹中半兵衛さんの言った事だぞ!!」
「な、なんですか!?天下の大軍師とは!?恥ずかしいではないか!!?」
「いいからいいから!半兵衛さんは天下の大軍師になる方なのです!これは決まっているのです!」
「私が・・・・天下の・・・大軍師に・・・ほほほほ」
リップサービスと面白半分で言っただけなんだけど半兵衛さん本気の顔になってるんだが!?
「とりあえず・・・少し膠着するなら落ち着こうか。小雪?飯でも食べない?みんなもどうかな?」
「「「「「「食べます!!!!」」」」」」
「(クスッ)私が準備しましょう。何にしましょうか?竹中様もお食べになってください」
「ご相伴に預かります」
「おや?松永久通殿ではありませんか?」
「どうも。竹中殿?そして大橋殿?」
「こんにちわ。どうされましたか?」
「いや二つの城を落としたと聞き父上と俺からほんの気持ちですが・・・」
「あっ!お酒ですか!?ありがとうございます!」
「あら?久通様?こんにちわ」
「奥方殿もいらっしゃいましたか。失礼をば。とにかくおめでとうございます」
「そうだな・・・どうせなら久通さんも飯食います?今から俺達は食べるところなんです。小雪?おでんが食いたいかも!?無理かな!?」
「おでんとは・・・・日本料理のうち、煮物の一種であり、鍋料理にも分類され、鰹節と昆布でとった出汁に味を付け、種と呼ばれる様々な具材を入れて長時間煮込むあのおでんですよね?」
「おっ、おう。そうだけど小雪!?どうしたんだ!?何かあったのか!?」
「ふふふふふ・・・・私におでんを作れと?」
「あっ、あぁ。できるか?」
「お任せを!少しお待ちを」
「えっと・・・ご一緒してもよろしいですか?」
「あっ、すいません!一緒に食べましょう!」
なんなんだ!?小雪はなんでいきなりおかしくなったんだ!?
十中八九、偵察でしょうね。わざわざ情報通の松永家の知らない言葉を並べてたかだか料理の事だけど知らない事を言われるのは悔しいでしょうね。
惜しむらくは当主本人が来てほしかったですが仕方ありません。調べるだけ調べるがよろしい。何一つあなたの家が大橋家に勝っている所がない事をこの私が・・・暁様の護衛アンドロイド小雪が教えてさしあげましょうか。




