ご機嫌斜めな信長
「まあこれ以上何かするつもりもないですからね。城の下男 下女さんに片付けお願いできますか?」
「分かった。殿はこちらにおいでになるのか!?」
「いや、織田様が来てから判断仰ぎます。夜更けだし、こんな場所なんで大した事はできませんが・・・」
俺はインベントリーから数に限りがあると言ったがここは出すべきだと思い幕の内弁当を出した。一応、個数としてはまだ150個程ありはするがみんなに振る舞ったりすればすぐなくなるため俺達5個、樋口1個、目に見える今ソワソワしながら片付けてくれている、下男3名、下女5名の合計14個を渡した。
「な、なんだこれは!?これは飯か!?」
「はい。幕の内弁当と言います。まあ、普通の弁当ですよ」
「え!?お、おいらにも貰えるのですか!?」
「えぇ。かまいませんよ。俺達が攻めたせいで片付けさせる事になり申し訳ないですからね」
下男、女は樋口の方を見たり俺を見たりと何回も確認していたが樋口が無言で頷き喜んで下がっていった。普段からあまりいい物は食べていないのだろう。
「暁様?すずは肉まんが食べたかったです・・・」
「すず?贅沢を言うな!ここは戦場だろうが!」
「そうそう。このご飯だって本来なら食べれないはずよ!」
すずちゃんや!?こんな所で肉まんがどこにあるんだ!?さすがの俺でもインベントリーに肉まんはないぞ!?いや待てよ?インベントリーは時間経過がないわけだから・・・色々作って入れておけばいいだけじゃね!?よし!姉川が終われば作り置きしてインベントリーに入れておこう。
「其方達はこのような物を食べ慣れておるのか?」
「そうですね。この者達の将になりまだ間もないですが俺の家は食べたい時は食べる!ってのがモットーですので。食が寂しければ心が荒み人は攻撃的になるのですよ。一揆がいい例ですよ」
「そんな事は誰でも分かっておるがしかしこれは・・・いや何でもない。いただこう」
さて、樋口さんはどんな反応をしてくれるのやら。
「うむ!これは美味い!そもそもこの入れ物はなんなんだ!?見た事がない!いや米は真っ白な米だがこれは焼き魚か!?鮒や鯉ではないな!?いや美味い!」
良かった。不味いとか言われればどうしようかと思ったわ。鮭って珍しいとは思うしこの時代は贅沢だと思うけど見た事すらないのかな?
「その魚は鮭と言います。珍しいとは思うけど甲斐より上の地域に行けば獲れると思いますよ。そうですね・・・有名な場所は出羽国の最上領や確かに少ないけど常陸国の佐竹領にも居たとの記憶があるかな?」
「なんだと!?これがあの噂の鮭か!?聞いた事しかなかったがこれ程とは・・・」
そんなに驚く事か!?いや普通に美味いのは美味いけど・・・。
「いやこれを用意すると言う事は常陸と出羽にも繋がりがあると見るのが妥当か」
「失礼。暁様は常陸国に良い思いがない模様。あまり口外致すな」
「うん?確か黒川殿だったな?何があると申すか?」
いやいやそれはゲームの話だから!!
「黒川さん?それはまた別の話!今は違うから!なんなら行った事ないから!」
「そうでございましたか。失礼致しました」
うん。盛大な勘違いだな。最上も佐竹も見た事も会った事もないし。最上に関しては後世の記録では文化人で寺社の保護活動やこの時代には超珍しい植樹なんかしてなかったかな?少しお近づきになりたい気はする。
その後は部屋をというか、勝手に一室借りて交代で寝る事にした。俺もいよいよこの時代に慣れてきたと思う。平静のお守りのおかげってのもあるかもしれないが。
夜が明ける前に1000人くらいの兵士が長比城にやってきた。先頭は言わずもがな禍々しいオーラを発する信長だ。一目見て分かる。かなりご立腹の様子だ。
俺は千代女さんに起こされ井戸の水で顔を洗い出迎える。
「やっと深い眠りに入りそうだったのに・・・」
「しょうがありませんよ。引き継ぎだけして私達は戻りましょう」
「其方は肝が中々太い御仁だな?随分と深い眠りに入っていたみたいだが」
「まあどこでも寝れる人間ではあります」
「あの先頭に見えるのが織田殿なのだろう。あの雰囲気・・・やはりワシは処刑なのだろう・・・」
樋口さんや!?すまん!多分機嫌悪いのは俺のせいだわ。処刑にはならないだろう。多分・・・
麓から上がって来るのが見え数分もしない内に到着した。
「出迎えご苦労。横に見えるは・・・樋口直房と見える。城主 堀秀村が見えぬとはどういう事だ?」
「織田様私が説明致します」
俺はこの長比城と苅安尾城に同時作戦をして、両城とも落とし苅安尾城の方に堀秀村は居ると伝えた。
「寸分違わぬ作戦とでんわとやらで聞いたが!!!そう聞いたがワシはでんわとやらは知らぬ!!」
いやマジで怒ってるんだが!?俺は素早くインベントリーから電話を一つ出して信長に渡した。
「ふん。催促したみたいではないか!別にワシは欲しいとは一言も言うてはおらんが・・・これはこれで使える。伝令が即時にできるからな。後で使い方を教えろ!それと苅安尾城から城主を連れて参れ!サル!お前は苅安尾城の防備を整えておけ!」
「は、はい!」
俺は慌てて電話で今から羽柴がそちらに向かうから入れ替わりで堀秀村を連れて来てほしいと伝えた。
「織田様・・・こちらへ」
樋口は信長を城の中に案内し昨日俺達が飯を食べた大きい部屋に案内した。俺も慌てて追いかけるが羽柴に声を掛けられた。
「やりおったな。まずはおめでとう」
この人には申し訳ない事をしてしまったよな。本当はこの人の功績になるはずだったんだよな?
「すいません。羽柴様が調略を仕掛ける予定だったとか・・・俺が手柄を奪ったみたいで・・・。埋め合わせは必ず」
「いや、そんな事は良い。早くに動かなかったワシの落ち度じゃ」
「それでも、俺の気が済みません。なので苅安尾城の防備改修は俺も手伝います」
「分かった。これはお前の好意として受け取る。まあなんだ。共に頑張ろうぞ」
いつもはもう一人誰か居てまともに話した事はなかったけどいい人ぽいな。羽柴とは仲良くなっておこうかな。
「黒川さん達は小雪を出迎えしてほしい」
「了解致しました。暁様・・・頑張ってください!」
そう言って俺も城に入った。
「ほう。小さき城じゃが中々に良いではないか」
「はっ。お褒めに預かりありがとうございます」
へぇ〜。俺は何がいいか分からないけどこれはいい城なんだ。
「まずは・・・構いなし!堀秀村は幼くお主が家中を纏めておると聞いておる」
構いなし・・・樋口さん良かったな!処刑はないってよ!
「ありがとうございまする。殿が一人前になるまで某が采配しておりましたが大橋殿の戦略にはなす術なく降伏致しました」
「だろうな。此奴の武器はワシも攻略の糸口が見つからん。せんしゃなる物は見たか?」
「え!?なんですか!?それは?」
「おい!大橋!お前はせんしゃは使わなかったのか?」
「はい。今回は使いませんでした」
「双方から聞こう」
それから樋口は俺に言ったように空から焙烙玉が降ってきて、霧が現れ連射できる銃で霧の中的確に狙われたと。
俺は一つずつ、M2迫撃砲を出しスモークグレネードを見せ、デジタルスコープも出した。
「うむ。違いないな。後程それらも使い方を教えろ。それとお前がこんなに早く成果を出すと思わず飯も食わず出立した。腹が減った!なんぞ出せ!樋口!貴様も苅安尾城に行け。羽柴の与力じゃ!」
「は、はい!畏まりました」
んだよ!俺の配下にしてくれないのかよ!?しょうがない。俺は俺で自力で見つけよう。真田さん辺りなんか欲しいな。




