鬼か?羅刹か?
本当に樋口って人を勧誘しようと思い本物の銃から麻酔銃に切り替えた。その名も【甘き眠り銃】
この銃はゲーム内のオリジナル銃だった。通常のハンドガンと同じだが頭に当たろうが体に当たろうが怪我や死んだりしなく当たった相手を確率で眠らせる銃だ。主に武器や防具の素材を取る時の狩りなどに使う銃だ。
名前がおかしいのは運営のセンスのなさだな。
「みんな!これから樋口何某を捕らえに行くからこっちの銃にしてほしい。これは撃っても相手を眠らせる銃だから」
「また新しい鉄砲ですか!?これまた小さいですな?」
「他にも色々あるから帰ると俺の集めた銃を見せますよ!いやそんな事よりこれは弾制限ではなくエネルギーで、手で隠れる所に色が付いているでしょう?」
「あっ!本当だ!」
すずちゃんはやっぱ好奇心多めだな。
「この色がなくなるまで撃てるからお願いします。ちなみに当たっても必ず眠るわけじゃなく3発に1回くらいで眠るから当たったからと安心しないように!」
「「「「御意」」」」
さて・・・追いかけようか。
「おい!来たぞ!」
「相手は鉄砲を持っている!弓で射殺せ!」
プシュンっ プシュンっ プシュンっ
残念。俺が作った戦闘服なら普通の弓くらいなら効かないのだよ!デザインはイマイチかもしれないけど。
「暁様危ない!!!」
「え!?」
「え!?あっ、あれ!?」
「何故だ!?何故弓が逸れる!?」
俺は千代女さんに飛び掛かられ転けてしまった。
「千代女さんありがとう。大丈夫だよ。みんなもだけど弓くらいなら当たらないから」
「え!?そうなのですか!?すいません・・・・」
「ありがとう。嬉しかったよ。お礼に俺の好きなティラミス食べさせてあげるから」
「てぃらみす?何か分かりませんが楽しみにしておきます」
「さて・・・俺達あんた等殺したくないの。樋口って人の所に案内してくれない?」
「何をごちゃごちゃと!もう一度・・・斉射!!!」
パシュンッ パシュンッ パシュンッ
「こんな狭い所でよく弓を放てますね?さすがだわ」
「敵を褒めてる場合ではありませんよ?」
「ごめんごめん」
「な、何故だ!?何故弓が効かぬ!?」
「そういう服を着てるから。それと確認すれば分かるけど殺してないから。眠ってもらってるだけだぞ」
「暁様!早くしましょう!」
いやいやいや、話は大事だよ!?すずちゃんは何で好戦的なの!?未来なら女子高生くらいの年齢だろ!?
「部下も急いでるし、あんたは指揮官だと思うから言いにくいと思うけど」
俺はそう言って麻酔銃を偉そうな人に向けた。
「樋口さんはどこ?」
「わ、わしはここで死ぬのか・・・」
「この時代の人はみんな凄いな。いや樋口って人の人望があるだけか?それじゃまた後で」
パシュンッ
「うん!?あれ!?ワシはどうなっておる!?撃たれたと思ったが・・・」
何でここでハズレを引くんだよ!?恥ずかしいじゃねーか!?さっきまでずっと三分の一を引いてただろ!?
「ゴホンッ。また後で」
パシュンッ
「グハッ・・・ってあれ!?」
クソ!またかよ!!?しかも『グハッ』って痛みなんかあるわけないだろ!?
「「「「暁様・・・・・・」」」」
ヤバイ!みんなが将来憐れみの目で俺を見ている・・・・。
「今のはわざとだ!樋口はどこだ!?」
俺は恥ずかしさのあまり声を荒げて問うた。
「南無阿弥陀南無阿弥陀南無阿弥陀南無阿弥陀」
今度は念仏かよ!?本当に念仏唱える人が居るのかよ!?
パシュンッ パシュンッ パシュンッ パシュンッ
よし・・・さすがに当たりを引いたようだ。自分のヒキを情けなく思うぜ・・・。
「あそこだ!おそこに居るぞ!」
「なに!?もう城まで入って来たのか!?」
ってかこれが城だったんだ?てっきりでかい家かと思ったわ。
「すずちゃん?新手はやる気に満ちてるみたいだから遠慮なく眠ってもらいなさい!それとみんなも見たと思うけど当たりを引けなかったらさっきみたいになるから気をつけるように!」
「「「はっ!」」」
「は〜い♪暁様?すずはずっと当たり?を引き続けますよ!!」
この子はバトルジャンキーだ・・・相手を眠らせるだけだが嬉々として麻酔銃を撃っている・・・笑いながら・・・俺はこの子には逆らわないようにしよう・・・。ワンチャン、俺にもギャグで麻酔銃を撃ってきそうだ。
およそ、一丁で200発くらいは撃てるはずだが城の人達がワラワラ溢れてくるくらい出て来て問答無用に俺達に襲ってくるから、まあ当たり前だけど。だからみんなのエネルギーが不安になってきた。
「こんな小さな城に何でこんなに兵が居るの!?おかしいだろ!?」
「浅井、朝倉の兵を詰めていたのでしょう。ですが徐々に勢いは減っています!」
確かに最初程ではないけど・・・でもみんな何で無策で突っ込んで来るんだ?今こそ盾を持ち向かって来られたら危いのにな。
「よもや我々が出る事になろうとは・・・」
「うむ。我々が最後の砦・・・樋口様に最後まで奉公を果たすのだ!行くぞ!」
お!?自ら最後って教えてくれたな?ラッキーだ!
「一応あなた達に聞いておきたいことがある」
「ふん!戯言無用!こんなにめちゃくちゃにして生きて帰ーー」
パシュンッ パシュンッ
「やったぁ〜!!!暁様!すずは一度もハズレを引きませんでしたよ!!てぃらみすは私のだ!!」
「チッ。しょうがない。暁様?私のてぃらみすとやらはすずにお渡しください」
なんなんだよ!?俺がカッコつけて『聞いておきたいことがある』とか言ったのに・・・。しかも敵が賭け事にされて可哀想だろ!?せめて最後まで喋らせてやれよ!?
「暁様・・・すず達はあんなものです。某もよく分かります・・・」
いや、黒川さんあんたも分かるのかよ!?
「うん。二人ともありがとうね?けど千代女さんにも食べてもらいたいからな。どうせだからみんなに出してあげるから帰ればみんなで食べような?」
「やったぁ〜!!」
この、すずちゃんは本当に天然のバトルジャンキーだ・・・麻酔銃だから殺してはないがSTGで撃たせても変わらない反応だったと思う・・・恐ろしい・・・。
「この部屋に血痕があるからこの部屋かな?はい!お邪魔しまーす。ビンゴ!」
「クッ・・・よもや城の兵を皆殺してここまで来るとは・・・貴様は鬼か!?羅刹か!?」
樋口何某は俺が撃った肩を紐で結び横になっていた。その横におじいさんが居たがブルブル震えている。この時代の医者かな?金瘡医?というやつだろうか?
「先に言うけど殺してはないですよ?眠ってもらってるだけ。それとこんなにめちゃめちゃにして言うのもどうかと思いますが樋口さんでしたっけ?あなたは俺に仕える気ある?」
「はははは!馬鹿を申すのも大概に致せ。ワシが貴様に仕える?死んでもごめんだ!」
まあ普通に考えてそうだよな。最初から人望ある人と知ってればここまではしなかったのにな。残念。説得してまでは要らないや。
「じゃあもういいです。それで堀何某さんはどこ?」
「お、お、お助けをぉぉぉ〜〜!!!」
「これ!権蔵!お前は殺されない!ただの医者だろうが!落ち着け!」
金瘡医の人が発狂したんだが!?別にここまで来て殺すつもりはないけど・・・。なんならこの時代の医者にも興味あるな。
「まあいいや。黒川さん?樋口さんの大小を預かってほしい」
「御意」
「おい!貴様何をする!?これ程まで侮辱してくるとはーー」
「はいはい。静かに動かないように。それと金瘡医さん?」
「は、は、は、はい!」
「あなたは俺に仕えたくありませんか?」
「貴様は見境がないのか!?そもそも貴様はどこの家の者だ!?」
「いやいや気付いてないわけないでしょう?織田家。大橋兵部少輔暁。とりあえず俺は織田家では新参だから家臣が少ないの。それに思えないかもしれないけど、俺は平和主義だから。基本美味い飯、酒、俺が作った物で笑う人が居れば嬉しいかな?」
「な、何を言っておるのだ!?」
「分からなければいいです。浅井、朝倉は織田様が倒すから。俺に仕えないとしてもあなたは人望があるから降伏し、織田家に仕えると言うなら治すけど?多分ここに堀何某さんは居そうにないし」
「あ、あのう・・・?」
「はいはい。金瘡医さんどうしました?」
「樋口様の鉄砲傷をどうやって治すのでしょうか?私は、京の曲直瀬様の学舎にて医学を学びましたがこの傷では・・・」
「まあ無理に仕えてもらうのも悪いしこれくらいはいいかな?千代女さん?赤チンを樋口さんの傷に塗ってあげてくれる?」
「畏まりました」
プルルルルルル
携帯が鳴ったので俺はハンズフリーにして出た。
『テスッ テスッ こちら小雪隊聞こえますか?』
「うっ、うわ!こ、こ、声がしよる!その箱から声がしよる!!」
金瘡医の人驚きすぎだろ!?樋口を見習えよ!?静かにしてるだろ!?
「いや、電話だからもしもしでよくないか?無線みたいにしなくていいのに」
『そういえばそうですね!もしもし?なんか隣で驚いている人が居ますね!』
「いやいや、もういいよ!陥落させた?」
『はい。望月様と風華が凄い活躍致しました。それにより、堀秀村捕縛致しましたが・・・』
「が?どうしたの?」
『城主あるまじきお姿にて。城の者が戦っている時にその・・・』
「なに!?苅安尾城が落ちたのか!?」
「らしいですね。あなたは驚かないのですね」
『嫌じゃ!死にとうない!死にとうない!ワシはこんなところで死にとうない!とこんな風に殺すつもりはないですが騒いで話にならなく。それとその・・・複数の女と遊興をしておりまして・・・』
うん!?堀秀村は奇襲とはいえ、女と遊んでいただと!?
しかも複数の女だと!?許せん!どうやって持続させるのか極意を聞くまで拷問だ!俺は5分ともたなかったんだぞ!?




