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戦国時代に迷子!?  作者: デンデンムシMK-2
新たなる時代の幕開け
131/189

上杉謙信の仕置き1

 謙信が女だろうが関係ない。ここで上杉家は脱落だ。だけどなんだろう。倒してはいけない人のような気もする。


 「殿・・・その御姿は・・・」


 「本庄、我の姿を見て幻滅したか。そうだ。我は女だ。兄者が時宗丸を迎え入れた折に中条を抑えられなんだ。その時からだ。兄者に代わり我が長尾と上杉を纏めようとしたのだ」


 「・・・・・・」


 「兄者は優しすぎた。優しすぎた故に失敗をした。我は失敗できぬ。強くあらねば国人共はすぐに不穏な動きを見せる。我は勉強した。誰にも負けぬようにな。だが・・・最早終わりだ。お主等を無駄死にさせとうはない。織田殿。我は晒し首で良い。だが部下は助けて給う」


 「うむ。中々に越後も大変だったのだな。だがお主が女だろうが男だろうが関係ない。それにお主の家臣は刀を捨ててはおらぬ」


 「殿ッ!!殿が女だろうと某は最後まであなたに仕えます!殿の武勇は本物でございました!!」



 「「「「えいえいおー!えいえいおー!」」」」



 「ふん。我が宿敵の方からだ。彼奴もやられたか」


 プルルルル


 「な、な、なんじゃそれは!?」


 「でんわじゃ!暫し黙っておれ!うむ。ワシじゃ」


 『信長様!我が家臣 酒井忠次が武田本陣を急襲。北条家が退路を遮断し武田信玄を・・・討ち取りもうした』


 「うむ。ようやった。他の者は?」


 『数えきれないくらい首級が届いておりまして確認している次第でございます』


 「分かった。そちらの後始末は任せる。隠れた兵には気をつけておけ」


 『ありがとうございまする。そちらに大橋殿と小雪殿は?』


 「ワシの横に居るぞ。どうした?ふむ。ふむ。ほう?うむ。そうか。なら其奴は後で連れて参れ。ワシも見てやろう」


 なんだ!?俺の方見ながら何か言ってるぞ!?


 「クスッ!暁様!おめでとうございます!これで負けはなくなりましたね!」


 「そうだな。徳川様からの電話の内容が気になるけどな。この仕置きどうしようか」


 「討ち取ったのは大殿ですが暁様の思うように」


 「う〜ん。わざわざ首まで斬らなくても良いような気もしだした。まあ上杉謙信女性説ってのが本当だとは思わなかったわけだし。武田も大変だろうけどこの人も亡くなれば越後は本当の魔境になりそうだよな」



 「その・・・なんだ。大橋殿?」


 「え!?あっ、はぁ。なんでしょう?」


 急に丁寧な言葉で話しかけられて俺も丁寧な言葉で返してしまう。声を掛けてきたのは両腕のない血ポタポタの上杉謙信だ。


 「あの織田殿が話している物も其方が?」


 「まあ、そうですね。離れていても話ができる物です。電話といいます。小雪?武器を検め、止血だけしてあげなさい」


 「畏まりました。上杉様?止血だけですが治療させてください」


 「いや我はよい。構わないなら兵の治療をしてもらいたい。我の我が儘に付き従った者達だ。郷里で帰りを待ってる者も居るであろう」


 「大殿様?」


 「えぇい!しつこいぞ!たぬきが!切るぞ!うむ。小雪すまぬ。中々にしつこい奴でな?」


 「(クスッ)徳川様も安心したのでしょう。上杉様の止血だけでもしようと思いますが」


 「暫し待て。上杉よ。其方は斬首で構わんと言ったがそれで良いのか?」


 「なんと?」


 うん!?信長さんも生存ルートを選ぶのか!?


 「ワシはこう見えて大概の者は一度は許すようにしているのだ。敵であろうとな」


 「奇遇だな。我も使える臣や信用に足る者は敵に唆されようが帰参すれば許している。この者もかつて我を裏切った男だ。だが、今際の時にこうやって駆けつけてくれる男だ」


 確かに歴史を見ても弟にしろ柴田勝家にしろ林秀貞、三好三人衆ですら許されているからな。案外厳しそうに見えて能力ある人は生かす人だからな。六角さんも結局生かして俺の与力にしてくれているし。


 一度敵と認識すれば容赦ない人だけどその反面味方に無理難題は言うが明らかに不可能な出来ない事は言わない人だからな。だから、俺はこの人の下で居たいと思うのだよな。


 「ワシは誠に信用しておるのは1人しかおらぬ。お主と違い家族に裏切られておるからな」


 「それは甘いからだろう。我を生かし、また裏切ると思わぬのか?」


 「ふん。他愛ない。そうなれば今一度貴様を潰すまで。今度は根斬りにすればよい」


 「殿!ここは織田様の下に付きお家を残す事を・・・」


 この本庄って人は上杉謙信が女だろうと気にしない感じだな。けど、よくもまあこんなに低い声が出せるものだな?


 「本庄!我に生き恥晒せと申すのか!?我が女だと直に噂が広まるであろう。国人共が黙っていまい。手のない我は無用の長物。口だけでは越後は纏まらぬ!」


 「大橋、治してやれ。ついでにワシの腕もな」


 いや普通に話してたから信長さんの片腕ないの忘れてたわ。いやぁ〜申し訳ない。


 「小雪!先に織田様を治療しなさい!完全回復スプレーで即座に治してあげなさい!」


 「畏まりました」


 プシューーーーー


 「ほう?ひんやりするだけなのだな?痛いかと思っておったが・・・・うっ・・・な、なんじゃ!?」


 ポンッ


 「はい!治療完了致しました。古傷なんかも治ってると思いますよ」


 「身体が軽いぞ!?なんならまだまだ戦えそうだな?誠、不思議な薬よのう」


 「なんと!?我が斬った手が生えてきておるだと!?」


 「そうだ。この通りな?最初からその算段にてお主を打ち負かしたのーー」


 「織田様!!我が殿もその薬にて両の腕の治療をお願い致しまする!!」


 「ほう?ただで治せ・・・と申すか?」


 「い、いや・・・某の首にて、御頼み申し上げる!」


 「本庄・・・・・」


 「・・・・・・・」


 俺も話したいけど話すタイミングがない・・・。


 「上杉、貴様はワシを裏切るか?今一度ワシと一騎打ちしたいと思うか?」


 「我は戦いにのみ生を感じる。それは今後も変わらぬ。戦の事を考えておる時のみが平静を装って居られるのだ」


 「織田様よろしいですか?」


 「静かだったな大橋。なんぞ?」


 いや話すタイミングがなかったんだよ!


 「では・・・上杉謙信・・・様?さん?」


 「呼び捨てで良い。お主との仕合いも今生味わった事がなかった」


 「いや俺は勘弁してほしいです。あれ程身近に死を感じたのは・・・いやなんでもないです。あなたのその内に秘めるものを治す事ができます。ついでに両の腕も」


 「は!?どんな高名な医者にも治せんと言われた心の病を治せると申すのか!?」


 「はい。簡単に」


 俺が考えているのはこの完全回復スプレー。これで治療すれば文字通り全ての病、怪我が治るのだ。自閉症?ぽくはないけどサヴァン症候群かも分からないけど治るのじゃないかな?


 「織田殿!情け無い事を申すのを許してくれ。一度でよい。何も考えぬ平静の日を過ごしたい」


 上杉謙信の心の中がどんな風かは分からないけど大変だったのだろうな。確か酒もかなり好きだったはず。というか、現を忘れたいがため酒を飲んでいるのだろうか?どっちにしろ身体に悪い事は間違いない。さて・・・信長さんがどう判断するかだ。

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