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花びらは掌に宿る  作者: 小夏つきひ
疑惑
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疑惑⑤

この間はごめんね。聞きたい事があるんだけど隆平とどこで知り合ったの?


メールを送信し、携帯電話の画面を気にしながら昼食を摂った。母からまた電話が掛かってくると思うと気が重くなる。花絵の話をする毎に嫌がる私をどうして放っておいてくれないんだろう。私はもう新しい環境で暮らしていくと決めたのに。

さっき柳瀬さんから受け取った封筒の中身をどうするか考えた。柳瀬さんは直帰すると言っていた、なら今日思いきって試してみようか。安西さんが退職するまでに変化を起こしたい。



「先に帰るわね」

山下さんがデスクの上をまっさらにして立ち上がった。「横山さん、今月安西さんの最終出勤日に花束を渡そうと思うんだけどあなたのご実家のお店で注文できるかしら?」

コピー機の前にいる横山さんは一瞬顔を曇らせた、それは私にしか見えない角度だった。振り返ると表情は穏やかなものに変わっていた。

「承知しました。お花の色と種類はお任せで宜しいですか?」

「そうね、お任せするわ。予算は5000円でお願いします」

「ご注文ありがとうございます」

横山さんは穏やかな表情のまま席に着いた。徐々に冷たく移ろう口元を見て、内心疎ましく思っているのだと想像した。

山下さんが事務所から去って行くのを見て静かにデスクの引き出しを開けた。封筒の中身を取り出すと、コピー用紙に「信用してはいけない」の文字が印字されていた。部長はいつも通り先に帰った。私は紙を持って立ち上がった。

「横山さん」

横山さんは怪訝な顔で私を見上げる。

「何?」

「これ、そこに落ちてた封筒に入ってたんですけど何か分かりますか」

紙を顔の前に突き出した。

「分からないわ。大体、私に訊く事がおかしいんじゃない?」

「本当に知らないんですか」

「しつこいわね、暇じゃないの。早く仕事終わらせなさいよ」

「もう今日の分は終わりました」

横山さんは鋭い目付きで私を見た。鼻で溜め息をつくとパソコンのキーボードを荒く打ち始めた。

「お先に失礼します」

言葉は返って来なかった。



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