管理人
暗室。光るパソコン。座りごごちのよさそうなし社長椅子。そこに座る少女。
「ダメって書いてあんのにまた実話書いたやついたのかよ」明らかに少女のものではない声。
「まぁ、いいのね。そろそろお腹減ってると思うのね」少女は答える。
「まぁそうだけど」と少女の影は言った。
そう見ても普通の影ではない。ゆらゆらと不自然に揺れている。もっとも、暗くてよくわからないのだが。
「で、相談内容は」
「えっとね。なんかそろそろこの人危なそうなのね、精神面の方が。よくわかんない化け物を見たみたいなのね」
「ありきたり」
「あと、ものが勝手に移動することもあったみたいなのね。確かにありきたりだけど、ご飯にはなるのね」
「私は今満腹なのね。百物語開催中だから。けれど影ちゃんはお腹ぺこぺこだと思うのね」「その呼び方やめて」
クスクスと少女が笑った。「なんで、可愛いのにね」
「あと、その喋り方。いちいち鬱陶しい」
「ひどいのね。この癖なかなかなおんないのね。だから仕方ないって前から言ってるのね」
「あーはいはいわかった」
「こんにちは、またはこんばんは。実話を投稿してしまったのですね。御愁傷様です。ところで、あなたの投稿した話、よければもっと詳しく知りたいと思いました。そうすれば、もしかしたらあなたを襲う怪異についても何かわかるかもしれません。もし、今の生活にうんざりしているのであれば、以下に記すことを調べ、私に教えてください。 ネット版百物語 管理人 禍解鬼」
「ねえーこれで文章いいと思う?」
「いいんじゃないか。ところで、この『禍解鬼』ってなんだ?」
「私のハンドルネームなのね。あんたの名前『影鬼』からとってるのね」
「はんど…何だ?」
「ハンドルネーム」
「その、はんどるねぇむってなんだ?」
「何も知らないのね。簡単に言うと、ネットでの名前なのね」
「ネット…もうわけがわからない。ああ、昔はよかった。お前もそう思うだろう、ま…」
「それ以上は駄目なの」少女は影鬼の言葉を遮った。
「まだ、なの。まだその時では無いって、私は思うの」