猫と切り身と下剋上 14
クロはしばらく海を眺めた後、とぼとぼ神社へ帰ってきました。
すると、狛犬に抱き着いて愚痴をこぼす女性の姿があります。
そしてそれを迷惑そうに見つめる神様。
「あ、お帰り。ちょっと聞いてよクロー。この人もうかれこれ1時間ずっとこんな調子なのよ」
女性は缶ビール片手に、かなり出来上がっています。
「ちくしょう! 男共のばかやろー! 漁師の娘って知ったとたん急に私を避けるようにー! ああ~! くーやーしーいー! 漁師の何がいけないって言うのよー!! 馬鹿野郎!!」
どうやら合コンでのアピールが上手くいかなかったようなのです。
クロは気付きました。
この女性が野良猫たちの間でシェフと呼ばれる存在……
そう、極上の切り身を生み出す漁師のまかない担当だということに――。
「にゃーん」
クロは慰めるように酔っ払い女性の足にすり寄ります。
「ん?」
女性はクロに気付きます。
女性とクロの目と目が合います。
「………」
「………」
そして――。
「キャー!! 何この子、かーわーいーいー!!」
女性はクロを抱きかかえます。
「こんな所でどうちたんでちゅかー。あら? 首輪が無いでちゅねー。もしかして野良猫でちゅかー? そしたらー、お姉さんの所に来ちゃいまちゅか? ん?」
神様も思わず引く程の赤ちゃん言葉でクロに話しかける女性。
一応彼女の名誉の為に断っておきますが、今の彼女は酔っ払いです。
「じゃあお姉さんがキミに魔法をかけちゃうぞー! ちちんぷいぷい! お姉さんの家族になっちゃえー!! あははは!!」
女性はクロを抱えて景気よく立ち去っていくのでした。
めでたしめでたし? で良いのでしょうか……。
「まあ、これで良かったんじゃない? 悪い人じゃなさそうだし。酒ぐせはだいぶ悪かったけど……」




